第19話:巨大台風の弱体化作戦5

文字数 1,190文字

 昔々風車を巨人だと思い込み、戦いを挑んだスペイン人がいた。彼は人々を救いたかった。7つのアイディアを考えた人達もある意味でドラゴンを退治しようとしたドン・キホーテの様だが、ドン・キホーテの幻想とは違いメキシコ湾の海水温度を下げられればカトリーナのような巨大台風を退治できることは確実。台風が発達するには20℃の海水温が必要。カトリーナの時は30℃に達していた。この海域の水温は地球温暖化のために、かつてないほど高い。ゴア元副大統領もこの海洋温暖化によって過去10年間台風が巨大化したという調査を支持している。

 しかし台風の研究者であるランドシーやグレーは海洋温暖化は自然変動だと言っている。だがメキシコ湾の海水温をなんとかして下げることができれば、台風の発達を抑えられるということには異論2005年以来アメリカを襲った4つの台風ほどに巨大化することは防げるかもしれない。アメリカ東海岸に向かう台風は全てアフリカ沖で発生する。サハラ砂漠の南の縁に広がるサヘルで発生するハブーブという強烈な砂嵐が最後に台風になってアメリカを襲う。マサチューセッツ工科大学のウイリアムズはここで研究している。

 ウイリアムズ
「アフリカの人たちにとってハブーブは日常風景。彼らにとって雨季には2から3日に1回吹く当たり前のもの。カトリーナはアフリカの西海岸で発生した。アフリカでの偏東風はアフリカ大陸の東から西へ向かって大陸を横断して大西洋に吹き出す。さらに大西洋上を進み続ける」。海水温と風、そして地球の自転運動が組み合わさりハブーブは回転を始め、やがて熱帯低気圧になり、その後大西洋を進むうちに速度が増して台風に発達。最後にアメリカ大陸にぶつかる。その移動距離は1万キロメーターにも及ぶ。

 ウイリアムズ
「この熱帯低気圧の発達の経過をよく観察していれば、それが東海岸に被害をもたらす台風になるかどうかが解る。つまり東大西洋を観測すれば警報を発したり備えを固めることができる。でも今の科学では、どのハブーブが台風にまで発達するのか、この段階でははっきり特定できない。私達はその謎を解き明かそうとしている」。研究を始めて5年、ウイリアムズはアフリカの低気圧が台風になる要因について重要な見解を発表する。秘密は雷にあった。

ウイリアムズ
「2004年に熱帯低気圧にまで発達した暴風のほとんどが雷雲を伴っていたことを突き止めた。」ロバート・ディッカーソンも雷がカギだという。彼はニューオリンズを愛する空軍用化学レーザーの専門家。台風にまで発達する熱帯低気圧が雷を伴うことを知った彼は、もし雷雲の中の電気をレーザーで発散させれば、台風の発達を抑えられるのではないかと考えた。ATLL高度戦術レーザーを前輪の後ろに搭載したC130輸送機で台風の目に飛び込む。そしてアイウォールに向かって強力なレーザーを1秒間発射する。
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