パラレルワールド

エピソード文字数 294文字

 その朝、我が家の玄関のドアクローザーから油がぼたぼたと滴りおちた。
 十五年の時を経たドアクローザーは埃まみれで汚い飴色(あめいろ)と化していた。
 そろそろ寿命かな――わたしはため息を漏らした。
 近所のホームセンターで新しいドアクローザーを買うことにした。
 スタンダード型は、玄関の扉を押して開ける――玄関で靴を脱がない人々。
 パラレル型は玄関の扉を引いて開ける――玄関で靴を脱ぐ人々。
 国際基準で考えれば、我が家はパラレル型に属する。
 そう、わたしは日本人なのだ。
 ふだんはまったく気づかなかったが、我々はいつもパラレルワールドの扉を開閉しているのだ。
 げに恐ろしや。
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