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文字数 1,993文字
新しい紙コップにアップルティーを入れ、向かい合わせの机に座る海道さんに振る舞う。
自作というとカッコいいけど、既存のゲームの継ぎ接ぎばかりでオリジナルな要素はいまのところ薄い。そのかわり、かなり僕好みのシステムにはなってるんだけど。
「さっ きTRPGは会話のゲームって言ったけど、それだけだといろいろ不都合がでてくる。それを解消するためにあらかじめルールを決めておくんだ。たとえば穴を 跳躍で飛び越えたときに成功するか、それとも失敗するか。プレイヤーがそれができると思っても、その成否をマスターの言葉だけ一方的に決めると不満が発生 しやすい。そこである程度キャラクターの能力を数値化して、それを基準に行動の正否を決めるんだ。足の速いキャラクターは幅跳びも得意……みたいな」
六面以外にも十面だの二十面だのいろいろな面数のダイスがある。一〇〇面のゴルフボールみたいなダイスもあるし、数字ではなくマークの振られたものもある。とは言っても、今回使うのは六面ダイスだけなんだけど。
誰にでも気軽に友人と場所があるとは思わないで欲しい。これは僕が特別ボッチ度が高いというわけではない。その証拠に世の中にはひとり遊び用のゲームがた くさん流行っているじゃないか。今時はオンラインゲームでおなじサーバーでプレイしつつも、他人とは関わりたくないなんて言う人間すらいるんだぞ。
快諾し口の端をわずかにあげてみせる。
なんだか別の意味で惚れそうな男っぷりだ。
僕はファイルに挟んでおいた紙を取り出すと、シャーペンを片手に簡単にアンケートをとりはじめる。
本当は自由に選んでもらいたいけれど、魔法使いが前衛もともなわずひとり旅は危険だし、NPCを多くすると僕の負担が増える。盗賊はあまり初心者向けではないし、僧侶も信仰が絡むので演じるには難しいところだ。
その言葉になにか意思を感じた。でも騎士はちょっと困る。
僕の要求に海道さんは納得してくれる。
よかった、俺のキャラは●●の血筋だから強くて当然とか言われたらどうしようかと思った。
僕の提案に海道さんは妥協してくれる。
馬が高価なものと理解してるのか。ゲームはしないと言ってるけど、異世界ファンタジーの理解度は高いみたいだ。
本人に書いてもらったほうが愛着がわくのだろうけど、今回はあまり時間をかけさせたくない。数値のデータもまとまってないし、面倒な手間は初心者相手では極力減らさないと。
質問が終わり、記入欄が埋まったのを確認すると、それを海道さんに手渡す。
僕がキャラクターシートの一番上の欄にある空白を指さすと、海道さんは迷わずそこに『シロード』と書き込んだ。