【西方怪談4】 ✿ 1つ目小僧

文字数 1,044文字

家臣・黒木が里を発った、翌日。
父上が江戸へ発たれた…
忍塾に来た末吉は、しょぼんとして友へつぶやいた。
へぇ、江戸へ!? どうしてや?
分からん。お勤めやろうと思う
先生は、なんか知っとる?
いえ、存じませぬ。お忙しいようですね。末吉殿のお父上は立派な方です
蔵をつくることについては、大工と話がつき、準備が整うまでは秘密のようだ。

(お殿様のについて、里の皆さんは知らないようだ…)

お殿様はなにを隠しているのだろう。


なぜ里の者の多くが「宝」について知らないのだろう。

(誰の口から、宝の話が里の外へ広まり、不穏な輩が来るかもしれぬ。そうしたら、里人の命が危険にさらされる)

(私が本当の名を隠したのと同じことだ。一度、情報が広まると、隠しようがない)

難しい顔しちょるね、先生

分かった!

妖怪退治のことを考えとったんや!

いつ行くと? 俺たちも加勢するよ!!

いえ、夜更けに歩き回るのは危のうございます

じゃあ、行かんとね!? 


悪戯カリコボウズが、先生の家、ぐらぐら揺らしたっちゃろ?

あれはきっと、カリコボウズなりの挨拶だったのでは、と
先生は優しいのう。

ドタドタドタ!!


その時、太郎という村の子どもが、座敷に飛び込んできた。

み、みみ、見た!!

お、おれ…あやかしを見た!

あやかしぃ?
1つ目の小僧が、森ん中から俺を見よった!!
太郎の言葉に、子どもたちは水を打ったように静かになった。
実は、俺も見た…
縁側に突然現れたその男に、子ども達は阿鼻叫喚だ。
お、お化けかと思うたが、金太のにいちゃん!!
だれがお化けだ。

金太は、元山賊。


お殿様の恩情あって、里で暮らすことを許された者だ。

いい酒もろうたから、先生にもわけちゃろうと思ってな
とかいって、先生と昼間っから酒飲むつもりやったっちゃな~

先生は昼から酒は飲まんよ。

それに今から授業や

ちぇっ、こまけぇなぁ! 

ところで、1つ目の妖怪を見たのは本当か?

見た! 1つ目小僧を見たんや!

俺を手招きしちょった!!

俺が見たのも1つ目だった!!

ほいほい」と歌って手招きしてな。

一目散に逃げたけど。

ほいほい? もしや、それって…
そりゃ、かりこぼうずや!

カリコボウズって1つ目やったっけ?

別の妖怪かもしれん。

子どもたちは、たちまち青ざめる。

本当に妖怪でしょうか。

人という可能性は……

俺が見間違えるはずは無い。


先生、確かめに行こう!

えっ……

参考資料


夜話 かりこぼう:米良風土記1中武雅周 著/鉱脈社2017年5月

 この昔話は、西米良村の民話「じっくり谷の目一つごろ」を基にしています。


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登場人物紹介

日高萌栄 (ひだか・もえ


中学2年生、13才の少女。

カピバラをこよなく愛する。

重黒木 鋼じゅうくろぎ・はがね


中学2年生、13才の少年。機械いじりが得意。

椎葉 発(しいば はつ)


中学2年生、13才。

萌栄の友達。花火師の孫。

黒木 殿下(くろき でんか)


萌栄のライバル

那須 雨音(なす あまね)


殿下の友達。

黒木 媛(くろき ひめ)


殿下の妹

日高 結芽(ひだか ゆめ)


萌栄のお母さん

日高 地平(ひだか ちへい)


萌栄のお父さん

日高 雲水(ひだか うんすい)


萌栄の祖父

重黒木 功(じゅうくろぎ こう)


鋼のお父さん

重黒木 理玖 (じゅうくろぎ りく)


鋼のお母さん

椎葉 康次(しいば やすじ)


発の祖父。花火師

黒木 智子(くろき ともこ)


殿下、媛のお母さん。

黒木 未夏 (くろき みか)


クラスメイト

中武 陽(なかたけ はる)


クラスメイト

那須 貴也(なす たかや)


クラスメイト

那須 由子(なす ゆうこ)


クラスメイト

お殿様。


西方の里を治める、お殿様。

南朝の忠臣、その子孫。

忠平(ただひら)


お殿様が助けた忍者。

加藤清正に仕えていたが、毒殺の濡れ衣をかけられ、逃げてきた。

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