7 ゴータマ・ブッダ&ニガンタ・ナータプッタ
文字数 1,741文字
まず、『リグ・ヴェーダ』(前1200~1000)から『ウパニシャッド』(~前500)へ至る過程において、①人間よりも神々が優位に立っているがゆえの神々への讃歌(神々への祈り)から、
②むしろ神々に何かしてもらうという意味では、人間が神々の力を利用しているともいえ、そういう観点からすると人間のほうがむしろ神々より優位に立ってると見えなくもない祭式至上主義、
③そして、祭式至上主義へのアンチテーゼともいえる哲学的思索や瞑想に重きをおく主知主義へ、
バラモンたちを取り巻くムードが変異していく
祭式主義と主知主義との違いは、たとえば、輪廻から解脱するのは「祭式」によってか、あるいは「知」によってか、という対立を見れば判然とする。
ちなみに「知」とは、ブラフマン=アートマンを知ることだが、これについては後で述べる
さて、商工業が発達し、都市が勃興するようになってくると、クシャトリヤやヴァイシャの力が増大し、相対的にバラモンの権威が落ちてきた。
と同時に、バラモン階級の外部から宗教的探求をする人たち、沙門(シュラマナ)が登場する。
彼らの多くが、ある意味当然かもしれないが、バラモンの聖典である『ヴェーダ』の権威を認めなかった
ちなみにジャイナ教とは、「ジナの教え」という意味で、「ジナ」とは「勝利者」、具体的には開祖であるニガンタ・ナータプッタその人を指す。
ジャイナ教徒は、現在のインドでは、人口の1%にも満たないね。
ジャイナ教の思想については、また別に章をたてて論じることとしよう
まず、ゴータマ・ブッダの出自はバラモン階級じゃなかった。
釈迦族という王家の長子だった。で、ちゃんと結婚し、子どもも生んでいる。
ところが、一言でいうと生きて在ることの無常に思い至り、地位も家族も捨て、出家遊行の生活に入った
ところで、バラモンには人生行路を4段階に分ける<四住期>という考え方があるんだよ。
①師について学ぶ学生期、
②結婚して家庭生活を営む家住期、
③家督を子に譲り、引退し、森林に入って修行(瞑想)に明け暮れるという林棲期、
④修行を完成させてのち、遍歴の旅にでるという遊行期、
の4つ
ゴータマ・ブッダの面白いところはね、反権威的なところがあってさ、それは岩波文庫版で読める『ブッダのことば スッタニパータ』(中村元訳、1984)なんかを一読すればよくわかるけど、「人は生まれによってバラモンになるんじゃない!(何をしたか、が肝心だ)」と言ってるところだよ
それともう一つ。
ゴータマ・ブッダは『ウパニシャッド』の思想を無視してる。非常にオリジナル。
しかも、だ。
バラモンたちが握る<真実>は、師から弟子、あるいは長男など身内に限り、秘密裏に伝承されていくものだが、ゴータマ・ブッダはね、広く一般にその思想を説いた。
その点においても、非常に反権威的だといえる
[参考文献]
・『ブッダのことば スッタニパータ』中村元訳、岩波文庫、1984