第3話

文字数 8,075文字

― ストラテジスト―

ドカッツ!「うぎゃあ」
乱暴にもバーコード支店長を奥の部屋へ、どつき倒す黒服の男ジャック・・・
支店長は床に転がる、しかし部屋は厚手の絨毯が敷きつめられていたので、それほど痛くはないだろう。
「こいつもだ」
「きゃあ・・」つづいて撫子も放り込まれるが、偶然なのか受け身が上手いのか、ソファーのほうに倒れこんだ。

この部屋は他と違って、オフィス風ではなく豪華な絨毯と来賓用のソファーがある。
貴賓室のようにも見えるが、執務机もあった、二つを兼ねているらしい。
撫子「痛いじゃないの、わたしが傷ついたら、ただじゃすまないわよ」
ジャンク「なんだよそりゃ?小娘の一人や二人バラバラになったところで、どうすまないんだ?世界の紛争地じゃあ、その100倍の女子どもたちが爆撃で吹き飛んでるんだぜ、お前らなんてメシ食ってクソするだけの二酸化炭素発生源なだけだろ」
撫子「なんという下品な強盗かしら、自分がやられたからって皆そうだと思ってる、ひとりよがりなだけじゃない」
ジャンク「ああそうだよ、オレは戦争で腕がバラバラになってサイボーグ化した殺人機さ、鬼じゃなく機械のほうだがな」
撫子「心もひねくれているようね」
ジャンク「そうさ、もともとまっとうな人間じゃあねーからな、ゲラゲラ・・」
大男のジャンクには悪口も通じないらしい。

「さ・て・と、ここは支店長室らしいな」
痩せてるほうの黒服男、ジャックが部屋を見回し確認するように言った。
「では支店長さんには、早速働いてもらおうか・・・ジャンク!」
「ほいきた」大きいほうの黒服男は、支店長と呼ばれた男を足で蹴とばしながらジャックの立つ豪華な執務デスクの横までやってきた。
「イタい、イタい、やめてぇ・・」
「やあ、桂田(かつらだ)部長どの、あんた今は本店の支店長をやっているのかい?」
上から虫を見るような眼でジャックは言った、どうやら知っている人物らしい
「本店なのに支店長、なんて呼び方はおかしいわ?」撫子はまぜかえす。
「おまえはだまってろ」大男のジャンクは、撫子の顔の前に機械の腕を出し遮った。
「な、なぜワシの名前を?」驚く桂田支店長
「顔は知らなかったが噂はいろいろとね・・・この部屋の端末には決済と許可の機能が付いているはずだ、これからオレの言う口座に200億円を振り込め、お前の権限ならできるはずだ。拒否すればおまえの指と目玉をくりぬいて指紋、光彩パターンを解除する」
「ひええっっ!」」
「ち、ちょっと強盗さん、それはやりすぎだわ」
撫子はあわてて止めようとするが、ジャックは平然としている、まるで何度もやったことがあるような、仕事の一部だとでもいうように。
「あんた一昨年、中東支社で交渉役をやっていたろう、いろいろとさ?」
そう言われギクリッ、と驚く桂田支店長、顔が青ざめてくる・・・だが
「し、知らん、何かの間違いだ」
平静を装ってるつもりで支店長は否定する。
ジャックは薄ら笑いをうかべながら畳みかけた
「いやあ、やってただろう、例えばゲリラとか武器密輸業者とか相手にさ」
「し、し知らん・・・」ブルブルと震えてくる支店長
「非政府団体とか麻薬シンジゲートとか呼ばれる団体のみなさんたちとも・・・」
「知らん、知らん」首を振り強く否定する支店長、だがうっすらと額に冷や汗がにじんでいる。一方、撫子は
「あらまあ、銀行さんて、そんなお仕事もなさっているのねえ」
ぜんぜん緊張感がない撫子、一人だけのんきなものである。
「ククク・・そうさ銀行ってやつは金のためなら法律ギリギリの非正規な案件だって手をつけるのさ、特に海外ではな、日本じゃ規制が厳しいからな」
「まあ、そうなんですの?」
「特にこいつは悪(ワル)でな、ギリギリなんてもんじゃない完全な違法なんだが・・
各地の武装組織と組んで地元民の土地や企業や地方行政府なんかも脅して有利な条件で交渉、両方に金を融資してたのさ、ピンハネなんか普通さ。
マッチポンプで気がつけば財産も牛も担保に取られ、つぶれた村もかなりあるんだぜ」
「牛ねえ・・」
「人身売買もどきもやっててな、書類を残さないからもどきなんだが、借金のカタに若い娘や子ども、稼ぎ頭の男、家族もバラバラに離散させられ売られていったとさ・・」
「まあひどい・・・」
「海外じゃ珍しくもない、聞いたことくらいあるだろ『○○国』とか『○○原理主義組織』とか、そういったやつらとつるみ、一般人を脅して利益をむさぼっていたのがこいつなんだよ」
言いながらジャックは目を()き、支店長のネクタイをつかんで締め上げた
「オラァ、てめえのせいでどれだけの人間が行方不明になったと思ってんだよ、お前の身体もバラシて離散させてやろうか?」
「ひいぃ・・た、助けてください、ワシには妻も子も・・あれは本部の指示でしかたなくやっていたんです」
「おめえら銀行はそうやって海外で暴利をむさぼってたんだろうが、てめえもその一人だろうが!」ますます怒るジャック
「オレはな、銀行屋ってやつが大嫌なんだよ、人の金を動かしただけで何十億も稼ぐ・・・」
「それはすごいことじゃないの?」と撫子
「いいや、金を動かす仕事なら株や為替のディーラーだって同じだ、だが銀行というのは本来の姿は金貸しだ、こいつらは一般の素人に言葉巧みに融資をもちかけ金を貸す、イヤだといっても金を貸す、担保は土地や財産だ。
気づけばいつのまにか借金もちだ、自分のものも他人のものになる、金に不自由していなかったはずなのになぜか借金まみれ、そして分捕られる。つまり銀行の仕事とは、騙し、脅し、略奪だ、これほど悪らつな仕事があるか?銀行強盗なんぞかわいく見えるだろ」
「俺らもワルだがこいつらはもっとワルだ、だいたい200億なんてはした金さ、この銀行は毎日1兆円動かしているのだからな・・・」
「はああ・・何だか(ケタ)が違ってて想像できないわね」ため息をつく撫子
「『ベニスの商人』や日本の時代劇でも悪代官とつるむのは金貸しが多いだろ、洋の東西にかかわらず、昔から金貸しってのは嫌われ者なんだよ」
「よく知ってるわねえ・・なんだかいろいろ詳しいのね、ただのコソ泥じゃあないみたい」(知ってるけど)
「まあな、前の職業がストラテジストなもんでね・・」
「す、すとらてじすと?ストラディ・バリウスなら知ってるわ、高級バイオリンのことよね、どこらへんが高級かは知らないけれど」と撫子はズレたことを言う。
「お前さんの知識はけっこう偏ってるな、まあ狭い範囲という意味ではたいして変わらないと思うぞ」
「ストラテジストというのは金融の世界で投資に関する戦略を考える専門家のことさ、オレはそっちじゃ割と有名だったんだがね、しかし、いろいろと闇の部分を知ると嫌気がさしてね、こういった奴らに復讐をしたいと思ってたら、自分も闇になっちまったわけだ」
そう言って痩せた男は、フフフ・・と笑った。
「はあ、そうなの?」つぶやきながら撫子は思い出していた。
(確か犯罪講義で、昔はオレオレ詐欺のお金を引き出す「出し子」というのを聞いたことがあるわ、でも送金する「送り子」というのははじめてね、まあ詐欺じゃなくて強制振り込みだけど・・)
撫子としてはいちおう(秘密の職務上)この状態を看過(かんか)することはできない
「えーと、じゃっくさん落ち着いてください、支店長さんもやむおえなかったようですし、ここは日本ですし、ご家族もいることですし・・」
「そうだな俺の知ってる限りで支店長には女房が3人子供は9~10人くらいか・・」
「はっ、なんですって?」驚く撫子
「こいつは中東勤務が長かったようでな、場所がらイスラム教では4人まで結婚ができるのさ、まあ財力があればの話だが、日本でば『リア充ハーレム状態』っていうんだろ?」
「・・・・・・」沈黙の撫子
「複数の女房と家族のためには稼がないとなあ、悪どいことしてでもなあ」
「それは本当なのかしら?支店長さん」
表情がこわばる撫子
「おやっ?ハーレムは日本にだってあるだろ、芸能人やゲス○極みとか、どっかの議員とか正妻の他に2,3人女がいるのは普通なんだろ、まさにヒャッハー状態だなあ」
ニヤニヤと笑うジャック

「支店長さん、日本じゃ重婚は禁止じゃなかったかしら?」
週刊○春の記者のような目で支店長を睨む撫子
「・・・・・」押し黙る支店長
「あはっはっ・・この国の文化だろ、たしかマンガとかアニメだっけ?ネットで世界中に変態国家と思われてるようだぞ(笑)」
ジャックはヘラヘラしながらまぜかえす、それは撫子の何かの逆鱗にふれたらしい、冷たく薄ら笑いを浮かべながら支店長をねめつける。そして・・・
「銀行強盗さん気が変ったわ、男なんて皆そう、悪は滅びるべきよね、リア充も滅びるべきよね」
「そうかわかってくれるのか」
「あ、あんたいったい何を言ってるんだ」わけがわからない支店長
だが撫子と強盗は二人いっしょに叫んだ
「金の亡者に天罰を、人を食い物する奴には鉄槌を、リア充は爆発しろ!」

-外フロア-
「お嬢が言ってどーすんですかああぁ・・・」
ムホーマツは再起動した(同時刻)

-銀行前-
ウーウー、ファンファンファン・・・キキーッ、ガチャ
姦しいサイレンとともに現場に到着した一台のパトカーから一人の精悍(せいかん)な男が降り立った
男「ここが現場か!」
強盗が立てこもる銀行は今やパトカー、警察ロボット、警察官、機動隊・・等々ですでに取り囲まれていた。そこへ降り立ったのは警視庁刑事課の若いデカ鈴木刑事である、ちなみにデカだが身長はふつうであるし太ってもいない、顔はイケメンとは言えないがまあ悪くもない2,5枚目である。一言でいえば平均の男の刑事である(ほっとけ)
出迎えた巡査長に敬礼しながら言う鈴木刑事
「吉田警部が遅れるので、それまでは本官が現場の指揮をとれ、という本庁(警視庁)の命令です」と書類を見せる鈴木刑事
「つーわけで臨時で指揮をとるけど、いまどき銀行強盗だなんて一体どこのアナクロ犯罪者なんだよ?」
「犯人は二人組の男性、閉店15分前に銀行に入り、客と行員を人質にとって立てこもり中だとおもわれますが、まだ動きはありません」と巡査長
「銀行内の状況は?」
「監視カメラをすべて壊されたので不明です、ただ壊す直前に犯人は映っていたので黒服の男性二人組ということはわかりました、武装もしています、言葉に若干日本語らしくないアクセントがありましたので、海外人も含めて検索中です」
「りょーかい・・」
「しかし電子取引がメインの昨今、現金なんて銀行にだってそんなあるわけないのに・・
犯人は何が狙いなんだ?」

-銀行内-
「おまえはなかなかノリがいいな、どうだ我々と同志になるか?」ジャックは言った。しかし撫子は落ち着いてきた
「うーん、支店長さんはどうなってもいいけど、わたしは強盗の仲間になる気はないわ」
となにげに支店長にとっては酷いことを言う撫子
「そうか残念だな、いい同志になれると思ったんだが」
「ジャック兄、いつのまにかポリに囲まれたみたいだぜ」
窓から外をのぞいていたジャンクが言う
「おお、もうそんなに時間がたったのか、それとも日本の警察が早いのか」
予想通りな感じでジャックは答える。
「それじゃあ、次はお前さんに仕事をしてもらおうか」と撫子を見る
「えっ、何する気よ?」
「人質だよ、交渉だよ、銀行強盗にはつきものだろう」
それを聞いた撫子は慌てる
「ちょ、ちょっと待って、それは映画なんかで警官たちの前に引っぱり出し『こいつがどうなってもええんか、ええのんか?撃っちゃうでー』とやるあのこと?」
「・・それは・・日本じゃ人質交渉がそういう手順なのか?」
ジャックは多少とまどい気味で言った(たしかに変態国家みたいだな)
「わたし事情があって顔バレはまずいの、外はもうテレビカメラや野次馬やら携帯もった
スネークやらがいっぱいいるのでしょう、困るわ」
「えーと・・・」
(日本語の意味がよくわからない、だがそれ以前になぜこの女はまったく怖がらないんだ?)
ダダダダダ・・・・キューンン・・
試しにジャックはミリマシンガンを壁に向けて撃った、
「ヒエッ、ひえええぇぇお助けえ」叫びながら身を縮め震える支店長、壁にかけてあった
モニターにが穴があき、書棚は壊れ、近くに飾ってある花瓶が割れ水が飛び散る・・
しかし消炎のなか撫子は瞬きもせず、ジャックを見ていた。
「試し撃ち?弾のムダじゃないの、どのみち9ミリ弾じゃ警察車両は撃ち抜けないわよ」
(どうなってんだこの女は?日本は水と安全はタダ、といわれ平和ボケの島だとのうわさ
は間違いか?)
ジャックは薄気味悪くなってきた、だから思わず撫子の希望をのんでしまった。
「とりあえず、だ、顔バレがイヤなら・・えーと」
そういってジャックは来賓用の席の白いテーブルクロスを引きはがすと、懐からナイフを取り出しクロスを切り刻んだ、そして大きめの布を切り出すと撫子の頭にかぶせ・・
「ちょっとお何すんのよ、モガモガ・・」
ジタバタする撫子の首に白いクロスを緩くしばりながら、
「うるせえな、目隠しを作ってやってるんじゃねーか、その方が人質らしいだろうが!」
ジャンク、そっちの大物も持っていけ。言われてジャンクはゴルフバックのようなものから大物を取り出した・・・。
カーテンを少し開けると窓外にはパトカーと警官が群がっているのが見えた。

-銀行前-
「それじゃあ、まずは犯人たちに投降でも呼びかけるか」
鈴木刑事たちはマイクの準備をはじめる、すると5分もたたずに・・
「鈴木刑事、犯人とおもわれる男たちが現れました!」
「なにっ!」突然の報告に驚く鈴木刑事、

窓際に二人の黒服の男が見えていた、片方は大きく片方は痩せていた、痩せてる方は小型の拡声器を手にしている、そして大男の方が構えていたのが・・・
「け、携帯式対戦車擲弾砲!RPG・・ですね」
「オイオイ、尋常じゃないだろ」
警察側は仰天した、何で日本にこんなモノを?ここは戦場か?これでは警察車両も歯が立たない
痩せたその黒服男は窓を少し開けると拡声器でしゃべった。
「あーあーっ、マイクてすマイクてす・・・
警察の皆さん、お勤めご苦労さまです、本日われわれは銀行強盗をさせてもらっております、すぐに済みますので黙って指をくわえ見ているようお願いいたします、くれぐれもSWAT(特殊部隊)等の突入などは考えませんように、こちらには人質がおりますのでね」
そう言いながらグイッ、と女学生を窓際の自分たちの前に引き寄せた、これで狙撃はできない。頭には白い布をかぶせられていたが服装で女学生とはわかった、しかもこめかみにマシンガンを当てられている。

「さて警察の皆さん、いたいけな女学生の犠牲は見たくないでしょう、ついでに身代金としてキャッシュで100万ドル用意してくださるよう要求します、円ではありません米国ドルですよ、くれぐれも間違えないように・・でわでわ」
そう言って黒服の男たちは窓際から消えた、女学生もいっしょに・・・
警官たちも驚いていた
「うーんこいつはまいったな、予想はしていたがやはり人質で脅してきたか」
「口調はていねいですが内容は挑発的ですね」
「拳銃程度だと思っていたのですがRPG所持していましたね、軍隊経験者では?これは長くなりそうです・・」
犯人たちは人質をとり籠城(ろうじょう)を決めこむらしい。


-銀行内、支店長室-
「ちょっとお、ついでって何よ!それにわたしはそんな安い女じゃないわ、もっと吊り上げなさいよ!」
戻って頭の布を取ったとたんに騒いでいるのは撫子である
「身代金の値上げとは変わった女だな」
「めんどくせえな、もうさっさとヤッちまおうぜジャック」
ジャンクは辛抱強くなさそうだ。
「まあ待て、今は時間を稼げさえすればいいんだ、ああ言っとけば用意する時間がかかるだろう」
「なるほど、さすがジャック兄」
「これで警察は持久戦になると踏むだろう、だが本当は身代金などいらないのだ、さて、さっさと終わらせるぞ。支店長!」
ジャックはそう叫ぶと、ジャンクに襟首をつかまれ引きずられてきたバーコード支店長の頭を執務机の上にガツンと打ち付けた、
「ぎゃあああ~~」悲鳴をあげ、支店長の額が割れ血が滴る・・
「おまえの罪は万死に値する、売られていった人々と同じ苦しみを味わえ、それくらいは序の口だ」
「苦しませるために生かすのか?ジャック兄はSだな」
薄ら笑いを浮かべながら、それを見ているジャンク。
いっぽう撫子は顔をそむけ、目をつぶっている・・
「どうしたんだお嬢さん、銃は平気でもこういうのはダメなのか?さっきまでの勢いはどうした?」
ニヤニヤ笑いながら撫子に血だらけの支店長の顔を見せようとするジャック
「す、スプラッタが得意じゃないだけよ、それに額の出血はそれほどひどいケガじゃないわ、プロレスでもよくあるし・・・」
「妙な知識はあるんだなあ、変な女だな」
少々あきれながらジャックはそのまま支店長の顔を端末前にある認識台にむりやり当てた。
認識台はATMキャッシュディスペンサーにあるような手のひらを認識する突起と眼の光彩パターンを認識するのぞき窓のような突起が付いている、右手はジャンクが無理やり当てている、傍についているLEDランプがグリーンになった、支店長と認識したらしい、そのまま端末PCは起動した。ふふふと笑うジャック
「やっぱりパスワードは設定していなかったか、おまえは物覚えが悪いんだなあ」
「パスワードがあると思わせるフェイクだったのか、ゲラゲラ、昔のやり方だぞそんなの」とジャンクも笑っている

「さてと、ログインできればこいつにもう用はない、ジャンク!」
「うははーでは処刑の時間だなあ、まずお前を・・・」
「た、たす、たす・・・」支店長はすでに言葉にならない言葉で口を動かすだけだ
「ちょっと待ってよ、ここではやめてあげて」
「んっ、何でだ?こいつは悪人で、おまえも爆発しろとか言ってなかったか」
ジャックは言いながらテキパキと支店長のPCに持ってきたUSBメモリーを差し込む、するとDOS画面のような文字の羅列が流れ、自動的にプログラムが走り出した。
「そうだけど、ここは日本よ安全神話の国なのよ、ここでテロと殺人を犯せば逃げられなくなるわ」
「ア、アハハハハ、に、逃げられないって誰が?こいつは傑作だ、アハアハ・・」
なにが面白いのかジャックの笑いは30秒も続いた、
「つくづくお前は変な女だな、怖がらないし、銃に詳しいかと思えば、我々に迎合し、かと思えば殺人は止めるし、今度は逃げられる方法まで教えるそぶりだ・・何なんだお前は?」
「ただの女学生よ」
「そんな女学生がいるかよ!」
ジャックはそう言いながら撫子の顔にマシンガンの銃口をむける・・
それでも女学生は恐れた顔をしなかった、目もそらさなかった。

PPPPPP….そのとき端末PCが唸った、プログラムが終わったらしい、
睨んでいたジャックは銃口を上げると、ふふっと笑った、
(なるほど、安全装置のスイッチを見ていたのか・・・確かに一瞬間があるな、しかしだからといってどうするんだ?)
ジャックは何だか不思議な気になっていた、この女は何か違う、軍人や兵士でもないしゲリラとも違う、善人でもないし、かといって悪人でもない、今までの経験からは計れない感覚がした、だから何をやるか見てみたい気もした・・・

ジャックは机から立ち上がると相棒へ言った
「タックスヘイブンへの送信は完了した、ジャンク、撤収準備だ!」
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登場人物紹介


大和撫子(おおわなでしこ)
17歳 出身地-京都

この物語の主人公。この春、瑞穂学園の編入試験にパスし京都から東京に出てきた美少女

親せきの大おじの家に下宿させてもらっている。実家は旧家で格式ばった厳しい家だったらしく、その反動から東京ではハメをはずしっぱなしである。性格は明るく活動的(言い変えればジャジャ馬)思いこんだら即実行するタイプ




ムホーマツ(WE45_HO-MM2)

人力車牽引ロボット〔45年製〕万能タイプ、ハンダオートマトン株式会社マルチタイプモデル2という意味

撫子が所有する個人用人力車の車夫である人型ロボット。ロボットが引くので“ロボ力車”とも呼ばれる。地上でしか使えないが、移動には便利なので重宝する。最高速度は時速30km(それ以上出ないようプログラムされているはずだが、撫子はリミッターをはずしている)アルコール燃料で電動部は燃料電池&太陽光で補う、俥の部分と分離できるので万能タイプといわれる



JJブラザーズ

ジャックとジャンクと呼ばれる二人組みの犯罪者コンビ国際指名手配(わるいやつ)リストDクラス、常にコンビで行動、黒服、黒帽子サングラスを着用、通称ブラックメン、主に金融犯罪を得意とする。ジャックの方は軍隊経験者



鈴木刑事

フツーの警視庁のフツーの刑事、中肉中背、視力体力→平均、身体能力→標準、顔→フツー(自称ややイケメン)苗字も一番多い「スズキ」、可もなく不可もなく・・(もうやめてくれー!本人)



吉田警部

警視庁でノンキャリで叩き上げできた警部、現場主義&実力主義者だけど、身だしなみには厳しいタイプ。身体も大きい、こわいけど部下の信頼は厚い、でも警察上層部からは煙たがられている、まあどんな組織でもそういうものです



矢部総理大臣

歴代長期政権の一つである日本の首相(誰かに似てるかもしれないけど気のせいです)問題はあったけど、雇用と株価を上げたのは紛れもない事実。アイコンがあってよかった!そもそも問題のない首相なんて今までいたっけ?だからこれで“いいんです”(川平ふう)



大泉議員

衆議院議員、将来有望な若手のホープ、のちに環境大臣となる、俳優の兄弟がいる(誰かに似てるかもしれないけど別人ですよ)干されたり落ち目の時期はあったけど、政治家なら皆な通る道、数十年後は世界大統領になれるかもしれないし、なれないかもしれない。


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