第56話  大いなる誤解 

エピソード文字数 3,517文字


 

 お互いの正体を明かした二人は、コーヒー一杯で子一時間粘っていた。

 スマホを見ると三時。そろそろ俺が帰ると言うとようやくお開きになった。



 やばいな。あまりにも偶然というか……

 偶然にも程があるだろ!

じゃあ今度。主人公の一枚絵をお送りしますねぇ
あひっ! よろしくお願いしますっ!
 俺が白竹語を話す事態になっていた。

 と言うのも彼女は、俺の小説に出てくる主人公を書いてくれるというのだ。


 あの神絵師さんの絵で……俺の主人公を書いてくれるなんて、マジでありえない!


 という感じで、俺はもう……いつ死んでも悔い無しと言った、そんな悟りを開いたテンションへと目覚めると、全然平常心を取り戻す事ができなかった。

でも……正直びっくりでした。だってあのお話って……どちらかと言うと女性向けですよね?

男の人が書いてるなんて全然思いませんでした

あぁ。それ。以前にも感想でも言われました。

俺はむしろ男性向けだと思ってるんですけど……なんでだろ?

だって主人公とヒーローがめっちゃ一途なんだもん。

そんで台詞だって、すんごいストレートだし。読んでてこっちが恥ずかしくなるんだから

俺も恥ずかしいです。書きながらそう思ってます
あはっ。それって見てみたいです。えへへ

 う~ん。何で女性向けと思われるのだろうか。

 これは非常に謎である。


 ちなみに男性が喜ぶエロシーンもあったりするが、殆どがシリアスなエロシーンなのがいけないのだろうか?


 ってか白竹さんは全部読んでるのだろうか?

 エロシーンにある台詞まで、読んでるんですよね?


 や、やべぇ! 




 俺。今めちゃくそ恥ずかしいです! 

 アレを読んだ人が目の前にいるのが、こんなに恥ずかしいとは思わなかった。

ですよね。私もさっき同じ病にかかってしまって



 ※


 それから白竹さんと仲良くお喋りしながら地元への電車に乗り込む。


 分かってはいたが、彼女と一緒に歩くととんでもなく目立っている気がする。特に男だと二度見するほど驚いてやがる。


 やっぱピンクの髪と美少女が併せ持つ魅力は凄まじいと感じるのだった。



 さて、地元に戻ってくると、そろそろ周囲に警戒せねばならない。


 というのも。俺は今白竹さんと一緒に並んで歩いているという事は、知り合いに見つかった時、彼女にあらぬ噂が立つのは申し訳ないからな。


 それを彼女に説明すると……

全然平気ですよぉ。だってくりょ澤くんはお友達でし
ま、まぁそうですけど……
それよりも。くりょ澤くんの方が私といるの。ダメですか?

いえいえ。とんでもありませんよ

ただ、こんな場面を高校の人に見られたら、白竹さんに迷惑が掛かってしまうかと思って

迷惑だなんて思いませんよ。大丈夫です。


あれですよ。私達は既に秘密を共有する義兄妹なのでし

 義兄妹って……

 

 どう突っ込めばいいのか分からんが、ありがたい言葉をいただいた気がする。


 でもな~~~こんな場面を西部とかに見つかったら、超面倒くさい事態になりそうだ。

 それだけが心配なんですよ。

 そう思っていると、駅の改札を抜けたところで「白竹さん~」と声が聞こえてくる。

 思わずビクっとしてしまうが、女の声だったので、ほっと溜息を吐いていた。

あれ? りゅ、りゅーおーさん!
こんにちはっ! どこかお出かけですか?

 竜王さん登場である。ってかまだ制服なんですね。

 その後ろにいるでかい男は播磨王二朗くんだな。俺を見るなり軽く会釈してくる。

ちょっと買い物して帰る所ですよぉ
そうだったんだ。ねぇねぇ。あの人は白竹さんの彼氏?
ち、違いますよぉ! 彼はその……お友達なのですっ!
そうなの? 二人でお買い物するような仲のお友達ね
あ。あにょ、あも。しょ、しょうでわな、くて……
おっと。竜王さんの質問攻めに俺も加勢せねば。
あ、いや。電車の中で偶然一緒になっただけっすよ
うんうんうんうん! そなんです!
そうだったんですね。遠目に見ててなんとなくそう思ったから
竜王さん。それは大いなる誤解ですよ。
あへ。ほ、本当に違うのですっ。
 笑顔の竜王さん。この人はいつもこんな感じなのだろうか。

 そこから白竹さんの横に付き、話しながら歩き出した。


 となると、俺は自動的に播磨くんと一緒に並んで歩くわけで……

 こちらも反撃させてもらおうか。

王二朗くんはもしかしてデート?
ああっ……そんなんじゃないです

 まさか敬語で返されるとは思わなかったぜ。

 とてもじゃないが、播磨くんと同じ年とは思えないんだよな。


 というか……何でそんなにやる気が無いのだろうか。


 マジでヘコんでる彼には彼なりの苦労があるのか、とてもじゃないが竜王さんと一緒にいてて楽しそうとは思えない。




 仲良く喋る美少女二人の後を追うように、そのまま王二朗くんと並んで歩いていると、呪われたコンビニ前で立ち止まった。

ちょっとコンビニ寄るから
 竜王さんは白竹さんの手を引っ張り、そのまま店内へ入っていった。
 王二朗くんは再び溜息を吐くが、その後に「ラッキー」とか言いやがる。
何がラッキーなの?
普通に疑問に思ったので質問してみると「ちょっと待って」と言いながら鞄からスマホを取り出していた。



 そして……



君の電話番号教えてくれない?

 真顔で訴えかけてくる王二朗くん。


 それがまた怖くって……思わず後ずさってしまうほどだった。

 君は本当に高校生か? 


 ヤクザのおっさんみたいな極道顔。一緒にいるだけで周囲の人間が避けて通ってる気がする。

え? どうしてですか?

 流石に意味が分からない俺は、戸惑いながらもスマホを取り出したが、その間にも王二朗くんはこんな事を言いやがる。

あまり説明する暇がないんだが……っと!

 くるっと百八十度回転した王二朗くん。良く見ればコンビニの中から竜王さんがこっちに向いている。


 んんっ? 何だ? 何か隠さなきゃいけないこと?


 俺も一緒に回転すると、そのタイミングで王二朗くんは喋りだした。

何だかえらく竜王さんを警戒してる?
正解。あいつはな……本気で悪魔だから。それを一応君に伝えておきたくて
ええっ?

 竜王さんを悪魔呼ばわりしてますよ。

 第一印象なら君の方がよっぽど悪魔っ面……なんて言えはしないが。

でも何で俺に?
彼女とは知り合いだろう? それなら後で彼女にも伝えて欲しい

絶対あいつに気を許さないで欲しい。

特に……一人で誘い出されても行かないように。彼女に忠告しておいてくれ

 なんだと?


 あまりにも突拍子もない事を言われれば、自然と王二朗くんの顔を見上げる。

 すると王二朗くんは至極冷静な極道面になっていた。


 まるでこれから杯を酌み交わそうとするような、そんな風にも見える


 つまり。マジって事なのか?

あいつは女しか興味が無い。可愛い子なら誰でも誘う馬鹿なんだ。

マジで拉致っぽい事もするから……もしアイツの事で何かあれば連絡して欲しい

それで連絡先って事か。

あいつの鞄の中。スタンガン入ってっから。

マジか……そりゃやばい子だね

 それが本当ならかなりヤバイぞ。

 白竹さんにそういう厄介な人間が寄ってきてしまったのなら、俺は俺なりに守らなければ。



 俺は王二朗くんに電話番号を教えると、早速ワンコールしてくれる。

さんくすこ。すぐ信じてくれて助かる
いえいえ。そういう話なら友達として放っておけないしね
じゃあ王二朗くん。こっちの質問にも答えて欲しい。 
だけど、そんな竜王さんと……君はなぜ仲良くやってるの?
まぁその腐れ縁っていうのもあるけど……「
ゴリ~!

 おっと。いい場面でコンビニから出てきたか。

 

 振り返ると、竜王さんに引っ張られる白竹さんがこちらまで来ると、俺達をスルーし、再び歩き出す。

あ、ここが美優ちゃんのおうち?
そ、しょでし! 今日は喫茶店お休みなのです
今度食べに行くね。ゴリも一緒に
あひっ! よろしくですっ!
ちょっと王二朗! 白竹さんってここの喫茶店で働いてるんだって! しかもメイド姿で

 急に王二朗くんに振ってきた竜王さん。

 すっげー笑顔だなこりゃ。


 美人に笑顔は最強だと思うが、さっきの話を聞いた後なので、やたらとその笑顔に警戒してしまうのであった。

うほっ。そりゃ俺も興味あるな

 ええっ? 王二朗くん?


 ま、まぁ白竹さんのメイド姿はすげーけどさ、あっさりと肯定するあたり、彼も男の子なのだなと思った。


 危険度からいえば、君の顔もかなり凄いと思うぞ

 ※


 竜王さん達と別れると、喫茶店前まで来た俺もここでさよならする予定だったが、白竹さんに待ってと声を掛けた。


ちょっと白竹さんにもお話がありまして。
ふにゅ? なんでしょか
顔を傾けて、じっと見つめられる。その瞳の奥にはハテナマークが浮かび上がっていた。
さっきの竜王さんについてなんですけど……
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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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