第20話 戻ろう

文字数 1,635文字

君たちの探索の旅は、前とは比べ物にならないほど効率が上がった。二人で手こずっていた敵も、ナルフが一人で倒してしまった。

君はナルフに鉄の鎧を着せたいと思っていたが、魔法攻撃が主な彼には、魔法の成功率を下げる鉄は良くないと言うことになり、君が昔使っていたマントをレオに直してもらって、それをあげることにした。

「ママ殿、パパ殿、感謝する。」
ナルフはそう言いうと、(ひざまず)いて謝意(しゃい)を示した。
「なあ、ナルフ、僕の事パパって呼ぶの辞めてくれないかな、むず痒いんだ。普通にレオで良いよ、お前のほうが強いし」
レオはナルフを立たせるとそう言った。
「承知した、パパ殿、改めレオ殿」
レオは頭を掻いた。レオ殿、なんて呼ばれた事が今まで無い彼は、居たたまれない気持ちに襲われる。が、まあ、パパ殿よりはマシだ。
「私の事も呼び捨てで良いよ」
君はそう言うが、ナルフは首を振った。
「…ママ殿はこのままでお願いしたい」
君は別に良いけど、と首を傾げる。ナルフは顔を伏せていたが、少し赤くなった耳が彼の漆黒の髪の隙間から覗く。

「ではレオ殿、ママ殿、進もう」
彼はそう言うと、背中の大きな翼を一度バサリと羽ばたかせると、それを折りたたみ、歩き出した。
「じゃ、僕はあっちの方見てくるよ」
レオはそう言うとぱっと跳び上がり、居なくなってしまった。
君は慌ててナルフの後に続く。

すると、君たち目がけて、翼のある(ウィングド)ガーゴイルが襲ってきた。
ナルフがぱっと君の前に立つ。そして振り返った。
「ママ殿、如何(いかが)いたそうか」
「私がやる、ナルフは下がってて」
君はそう言うと、シュッと聖剣を抜く。そして、ガーゴイルの翼をバサリと切ると、床で痛みからうずくまるそれに止めを指した。
「流石ママ殿であるな」
ナルフはそう言って君を尊敬の目で見つめた。

「おーーい、こっちに階段あったよー」
レオの声が遠くから聞こえてきた。じゃあ行こうか、と君が言うと、ナルフは君をお姫様抱っこで華麗に抱き上げ、その翼を広げて飛び立った。


ナルフはレオの前に、階段の横にスタリと着地した。
レオは君たちを見ると、顔を真っ赤にして叫んだ。
「は、早く降ろせよ!」
ナルフは、了解した、と言って、君を足からゆっくりと下ろした。
「あっ、ありがとう…?」
君は少し動転しながら言う。いちいち移動で抱きかかえられるのか…?
「僕が目を離すとこれだ!」
レオは頬を膨らませてそう言った。
「レオ殿は何に怒っているのだ?」
「ふーんだ、怒ってないしー」
レオはそう言うと君の手を握った。
「いこ、エイミー」
彼はそう言うとプンプンと鼻を鳴らしながら君の手を引いてさっさと階段を降りた。
一人残されたナルフは首を傾げた。が、直ぐにまた翼を開いて君たちの後を追った。

「ちょっとレオ、速いよ!」
君はレオの手を引っ張り返した。レオは振り返ると、慌てて手を離した。
「あ、ごめん…」
「抱っこに怒ってる?レオだって前に私のこと抱っこしたよね、もっかい抱っこしたいの?」
君がそう言うと、レオはポカポカと君を叩いた。
「そ、そういう事を男に軽々しく言わない!」
君はそれを聞いて頭を傾げた。
「ジェームズは昔は私の事いつも抱っこしてたけど…レオは恥ずかしいの?」
「そうか、アイツのせいか…」
レオは頭を抱えた。


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19層の探索を人通り終えると、君はレオとナルフを呼び止めた。
如何致(いかがいた)した」
ナルフはそう言って立ち止まると、振り返った。
「仲間も増えたし、私はそろそろ戻ったほうが良いと思う」
レオは君の言葉を聞いて、頷いた。
「待て、何を話しておられるのだ」
ナルフは話についていけず、首を傾げた。

君とレオは、ナルフについて、ノーンのこと、彼女が助けを求めていること、そして、サーター卿と戦わなくてはいけないことを手短に話した。

「ふむ…理解した。確かに、前と比べてママ殿もレオ殿も強くなっておられる。我も微力ながら手伝わせていただこう」

君は頷く。
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登場人物紹介

エイミー、主人公、ヴァルキリーの少女。

レオ、エルフ。エイミーの仲間。顔が良い

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