理想とするカップル像がそこにはあった

文字数 655文字

「柴田さん大丈夫ですか?」

後輩が私に声をかけてきた。

「ちょっと考え事をしてしまった。」

私は言った。

気がつけばボーッと商品棚の靴を見つめていたからだった。

この間のデートの数日後、私は彼女をまたデートに誘った。

しかし、断られた。

断られるとは思わなかった為、かなりショックを受けた。

何か悪いことをしてしまったのか。

それとも彼女の目に私は魅力的に映らなかったのか。

それはわからなかった。

しかし良い思い出はできた。

あの1日は幸せだった。

ただそれは私の方だけだったのかもしれない。

今後に活かそう…。

私は商品棚の靴をいつもより念入りに整えた。

夕方休憩は気分転換に百貨店の外に出かけた。

スターバックスに入り、カフェモカを頼んだ。

心も体も冷えた時はこれに限ると思っている。

スターバックスにはたくさんのカップルがいた。

おしゃべりがはずむカップルもいれば、携帯電話をそれぞれ真剣にいじっているカップルもいる。

私の目に止まったのは、おしゃべりがはずんでいるわけでもなければ、携帯電話もいじってはいない。

コーヒーをゆっくり飲み、ケーキにフォークを入れ、窓の外をゆっくりと眺めているカップルであった。

時たま聞こえる会話は、ひとことふたこと。

でもお互いリラックスしている。

二人の波長が同じである。

私の理想とするカップル像はこれだと思った。

二人の間に流れる優しい時間。


残りの休憩時間は10分。

カフェモカの泡の下には熱いコーヒーが待っており、私の舌はザラついた。

店に戻ると後輩がまた私に言った。

「柴田さん大丈夫ですか?

今度はにやけてますよ」

と。
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