第5話

文字数 540文字

「うっわああああああああああッ! !」

タクミの叫び声でケントが目を覚ました。そして、男を見て、より大きな声で、

「ぎゃあああああああああああッ! !」

と、叫んだ。

2人は手を取り合って、古墳から逃げ出そうとした。しかし、なぜか足が動かない。タクミは、恐怖心と戦いながらも、冷静に、男を観察した。

身長160センチぐらいで、がっしりした顔と体つきをしている。年齢は35歳ぐらいか。絵本で見た、ヤマトタケルノミコトのような、だぶだぶの、白いパジャマみたいな服。髪も、ヤマトタケルノミコトのように、顔の両サイドで結わえた形をしていて、首には、色とりどりのガラス玉のネックレスをしている。そして、金の飾りのついた、外国の木グツのような形の靴。

…もしや、この人は…

「あ、あなたは、もしかして、ひ、被葬者の、か、方ですか…?」
「いかにも、そうだ」

 ゆ、幽霊! ! 2人は崩れ落ちそうになるのを、必死でこらえた。崩れ落ちようにも、足が動かないのだ。

「お前たちに、頼みがある」
「頼みって、何ですか…?」

ケントは、半泣きだ。

「石棺を、開けないでほしい。このまま、静かに眠らせてほしい。発掘責任者に、そう伝えてくれないか」

タクミとケントは顔を見合わせた。
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