メリーさんとの邂逅・四
文字数 1,516文字
さぁいっくん、早く家の鍵を開けてちょうだいな。
はいはいっと……
最近は見た目がグチャグチャな怪異が多かったから、つい。
あぁ。
踏切から憑いてきたテケテケもどきと、金切り声を上げて他の怪異を引き寄せる厄介な悪霊とか。
……これ全部、ここ一ヶ月の間にあったことだよね。
改めて思い出すと、短期間に遭遇しすぎだな。
何でだろうな。
気付いたら憑いてるんだよ。
気付いたら、じゃあないだろう？
いっくんは毎回毎回、怪しい場所に突っ込んで行くじゃないか。
昔から言ってるけど、あれ何とかならないの？
えぇー……その怪しい場所ってのが、いまいち分かんねぇんだよなぁ。
僕だって、何もしてないのに怪異を引き寄せることがあるから、全部いっくんが悪いわけじゃないのは分かるんだけどね。
ある程度は仕方がないとしても、好奇心に従って危険かもしれない場所に行くのは止めようよ。
……うん。
多分、部屋に置き忘れた。
貴重品は肌身離さず持ち歩いたほうがいいよ。
いっくん、すぐ忘れちゃうんだから。
じゃあ、どうしようか。
電話は切れちゃったけど、メリーさんはまだ家の中にいるみたいだし。
……放っておいても良いけど、いっくんが一人になったときに何かあったら困るよね。
あ、俺のことは気にしないで！
このままメリーさん放置される方が嫌だし。
あっくんお得意のピッキングでササッと開けちゃってよ！
別に得意じゃないよ。
必要に駆られて覚えただけだから、あんまり使いたくないんだけどなぁ。
あれ、あっくん針金なんて持ち歩いてたの？
準備万端だね！
こういう時に備えて、ね。
いっくんみたいな危なっかしい幼馴染みと一緒にいるとさ、持ってて無駄になるものなんてそうそうないんだよ。
───はい、開いたよ。
どういたしまして。
くーちゃん。
メリーさんの居場所、探れる？
うん。
いっくんの部屋に居るみたいだよ。
うん。
逃げようとしてるけど、わたしが家全体に結界を張っちゃったから………一応、突破を試みてるみたいだけど、苦戦してるみたい。
……くーちゃん、いつの間に結界張ってたの？
気付かなかった。
ここに着いてすぐだよ。
怪異との追いかけっこは面倒だからね、先に閉じ込めちゃった。
メリーさん、いっくんに執着してるみたいだから、時間をおいてまた会いに来ると思うよ。
今回どういうつもりで来たかは知らないけど。
今逃がしたら、いっくんの生存確率はぐっと下がるんじゃないかな。
いいよ。
あっくんがやった方が確実で早いから、むしろお願いしたいかな。
どうした？
何か気になることでもあったか？
あ、いや、何でもないよ。
