前世譚7 ❀ 修道女と修道士の文通

文字数 947文字

親愛なる魔法使いへ


 鳩と蛙の話、とても勉強になりました。


 鳥や風や花の名が、同じ響きでおまじないにもなるのですね。

 私の好きな白薔薇にも、おとぎ話や、すてきなおまじないがあるのかしら

(白薔薇。彼女らしい花ですね)

好きな花のこと、親しい友人のこと、塔の上から見た朝日のこと。


彼女の目に映る世界の美しいものは、リカルドの心に癒やしをもたらした。

私たちの未来が、幸多きものでありますよう祈ります。


アリエッタより

君の魂はなんて尊いのだろう。


あなたの心の美しさを、僕は尊敬します

月明かりの差し込む窓辺で、リカルドは目を閉じた。


彼もまた、彼女の幸せを祈っていた。

アリエッタへ。


 白薔薇の花言葉は「純潔、尊敬、約束」です。


 けれど僕は約束を守れず、君を失望させました。

リカルドはなにも悪くありません。

あなたが1番つらい思いをしたのですから

今度こそ、僕は約束を果たしたい。


実は、修道院の仲間から、外へ出られる秘密の通路を教えてもらったのです。

院長が、領主や資産家と秘密の会談をするために使用している場所だという。


だが、そこを彼が通れる機会は限られているそうだ。

君とともに未来を生きたい。


けれどもし、君が修道に御心を捧げているのならば、僕も倣います。

いいえ、リカルド!


私も、あなたと……

アリエッタの両親、そしてリカルドの家族のことが頭をよぎった。


アリエッタはすぐに、リカルドへ手紙をしたためた。

再会を果たし、共に生きるなら。


あなたの親や、故郷の知り合いと鉢合わせすることのない遠方へ行くのが良いでしょう。


その前に、祈りの道へ入ることを許した両親と、話しをさせてください。

秋の終わり、返信がアリエッタのもとへ届けられた。

もちろんです。


できれば、故郷でない場所で落ち合い、僕からも直接お話しさせてください。

そうしなければあなたを妻にもらうことはできません。

リカルド……ありがとう。


私や、私の両親のことを重んじてくれているのね

ただ、一つ不安が。


……間に合えば、いいのですが。

間に合えば、いい?

あまり良くない夢を見ました。


年が明けたら、できるだけを避けてお過ごしください。


僕はすぐに修道院を出ます。

リカルドの勘はよく当たる。

一体、なにを予感されたのかしら

年明け前、最後の手紙には「修道院を脱走した」とつづられていた。
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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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