第10話 第2の任務
文字数 3,453文字
最初の任務の翌日、マティアスとハンニバルは2人で基地周辺を散策していた。
日中は周辺の景色や買い物を楽しみ、夜はハンニバルの部屋で彼に手料理を振る舞ってもらい、楽しい1日を過ごしていた。
しかし、2人はただ遊んでいただけでは無い。マティアスは先日戦った敵の戦い方を参考にし、基地内で新しい武器を購入していたのだ。
そして第2の任務の日がやって来た。2人はいつも通り互いの部屋付近で合流し、司令室へ向かう。
「おはよう、諸君。マティアスはそろそろ軍事基地の生活に慣れてきたかね?」
「おはようございます、ウィリアム司令官。休日もハンニバルが付き合ってくれたのでもう慣れました」
「おはよう、ウィリアム司令官! 今のマティアスは俺も認める立派な相棒だぜ!」
先日の戦いでマティアスが大きく活躍したからか、ハンニバルはマティアスを褒めながら挨拶した。
「そうか、それは頼もしい限りだ。では今回の任務について説明しよう。戦場で交戦中だった我が軍の1部隊が壊滅したとの連絡があった。生き残って帰って来た兵士の証言によると、敵の中には身体を機械化・改造された兵士、そして未知の生物がいたそうだ。生物兵器・人間兵器の開発は世界各国で行われていたから不思議では無いがな。諸君は軍事基地から出て北にある戦場へ向かい、敵の部隊を一掃して欲しい」
ウィリアム司令官は今回の任務について説明した。軍の部隊1つが壊滅するほどの敵がいるということは、前回よりも厳しい戦いになることは容易に想像出来る。
しかし、マティアスとハンニバルも今までの戦いを経て確実に強くなっているはずだ。2人に怖いものなんて無かった。
「どんな人間兵器や生物兵器が掛かってこようが、最高傑作の人間兵器である俺に敵う奴なんていねぇだろ! な、マティアス?」
「でもお前、この間は火炎放射で焼かれて危なかったじゃないか。いくらお前が強いからって無理はするなよ」
「あの時はオイル塗られてたからちょっと熱かったが、あの程度で死ぬほど俺はヤワじゃねぇって!」
確かにハンニバルならあのまま燃え続けていても、しぶとく生き残っていたかも知れない。
それでもマティアスは、ハンニバルが再び身の危険にさらされた場合は全力で助けようと心構えていた。
「今回の敵の数は前回の任務の時よりも多くなるだろう。諸君なら出来ると思うが、万が一危険だと感じたらすぐに撤退してくれ。では健闘を祈る」
2人は敬礼し、ウィリアム司令官は2人の身を案じながら、司令室を退室する2人を見送った。
2人はいつも通り軍事基地の外に出て軍用車に乗車する。今回もハンニバルが運転係だ。
ハンニバルは目的地が書かれた地図を見た後、軍用車を急発進させる。
相変わらず荒い運転だが、マティアスもいい加減慣れてきたのか、落ち着いた表情で辺りを見渡していた。
出発してしばらくすると、広々としたフィールドが見えてきた。
戦場付近に車を止めるのは危険なので、ハンニバルは少し離れた場所で車を止め、2人は外に出る。
この戦場はかつては街だったように見えるが、周囲の建物は崩壊し、敵兵達によって支配されていた。
しかも、こちら側の部隊が壊滅したのを良いことに、敵兵達はこの戦場の一部に自分たちの拠点を作ろうとしているようだ。
「俺達の部隊がいなくなったからって好き勝手やりやがって! あいつらの居場所なんざ1ミリたりとも残さねーぜ!」
「待て、ハンニバル! 早速敵に見つかったぞ!」
2人が戦場に足を踏み入れた瞬間、周辺の高台に設置されている複数の無人砲台がこちらに向かって砲弾を発射してきた。
マティアスは砲弾を避けつつ手榴弾を砲台に向かって投げて爆破する。
一方ハンニバルは砲弾を無傷で受け止め、そのままバズーカの砲撃で砲台を破壊した。
機械系の敵には銃弾が効きにくいので、マティアスは手榴弾を用意しておいて正解だったと感じていた。
「ハンニバル、お前は相変わらず攻撃を避けないんだな」
「大抵の攻撃では俺の体に傷一つつかねぇから安心しな! お前も手榴弾なんて使うのは初めてなのに、なかなかやるじゃねぇか!」
マティアスの武器の扱いの上達に感心するハンニバル。
敵が砲台の攻撃と爆発音に気づいたのか、20数人ほどの敵兵達が2人の元にやって来た。
前回戦った敵兵達とは違い、その中には身体の半分以上を機械化されたサイボーグの兵士も混ざっている。
「アメリカ軍の奴ら、あの部隊を壊滅させてやったというのにまだ懲りないのか? しかもたった2人で俺達の縄張りに入ってきやがって、わざわざ殺されに来たようなもんだな!」
敵兵達は2人を見て馬鹿にしたように笑う。
「ここはいつからてめぇらの縄張りになったんだ? あの放火犯どもと同じ目に合いたくなければ、とっととてめぇらの国に帰るんだな!」
ハンニバルの言葉を聞いた敵兵達は驚いていた。
ここの兵士達の仲間、つまり先日戦ったビリー率いる放火団をたった2人の軍人によって壊滅させられたことを知らされたからだ。
「まさか、こいつらがビリーの隊を壊滅させたのか!?」
「だが、俺達はあっちの隊と違って肉体強化をされている。兵力も兵数もこちらの方が圧倒的に上だ。こいつらがビリーの部隊に勝てても、俺達の隊には勝てん!」
敵兵達は一斉に武器を構え、こちらに向かって襲い掛かってきた。
その瞬間、マティアスがここぞとばかりに手榴弾を取り出し、ハンニバルに話しかける。
「今から新しい武器を試す。ハンニバル、少しの間だけ目を瞑っててくれ」
ハンニバルがうなずき目を瞑ると、マティアスはスタングレネードを投げつける。
スタングレネードは起爆と同時に爆発音と閃光を放ち、敵兵達の目を眩ませた。
「今だ! 殲滅するぞ!」
敵兵達が怯んだ瞬間、マティアスは機関銃による銃撃で、ハンニバルはバズーカを振り回して敵を薙ぎ倒していく。
これでその場にいる半分以上の敵は倒せたが、スタングレネードが効かなかったサイボーグの敵兵達がマティアス目掛けてナイフで斬りつけてきた。
マティアスは脇腹を刺されて血を流すも、刺してきた敵の腕を片手で掴み、もう片方の手で敵の頭部を掴み、そのまま首をへし折る。
一方、ハンニバルは元々近接戦闘が得意な為、サイボーグの敵兵達がナイフで攻撃してきたのは好都合だった。
ハンニバルはマティアスに近づく敵兵達の頭部を素早く殴り飛ばしていった。
敵を一掃したのを確認すると、顔面の半分以上が機械化された敵兵の頭部があちこちに転がっているのが分かる。
ハンニバルは脇腹から血を流しているマティアスの元に駆け寄り、傷の手当てをする。
「大丈夫か? 休めるチャンスがあるときに回復するのが大事だぜ」
「ありがとう。しかし、改造人間というのは敵に回すとなかなか厄介だな」
ハンニバルはマティアスの傷の手当てを終えると、サイボーグ兵の死体に目を向けた後、哀れみを感じさせる表情で語り始めた。
「肉体の機械化は生身の肉体では出来なかったものが得られるが、同時に生身ではあり得なかった問題も抱えることになるんだ。機械には動力エネルギーの確保、定期的なメンテナンスが必要だ。そして何より問題なのは、機械化された人間は人間でいられなくなることだ。俺も改造人間だから言えたことじゃないが、お前はあいつらみたいになるなよ」
「あぁ、言われなくとも私は私だ。人間でいることに耐えられなかった奴らに成り下がるつもりは全くない」
2人は会話を終えると、遠くにある壁付近に戦車に似た乗り物があるのを見つけた。
乗り物がある場所に近づいて行くと、敵のエンジニアが乗り物のメンテナンスをしているのが分かる。
2人は身を潜め、乗り物のメンテナンスが終わったのを見計らい、マティアスが敵のエンジニアの頭部を狙撃した。
この乗り物さえあれば戦いも大幅に楽になるかもしれない。2人はワクワクしながら乗り物を物色する。
この乗り物の前方には火炎放射器とガトリング砲が設置してあるが、操縦席は一人分しか空いていない。
「マティアス、お前がその乗り物の操縦をしてくれ。俺はそのまま戦うから問題無いぜ」
「あぁ、別に構わんが、これはどうやって操作するんだ?」
「分かんねぇよ。適当にやってりゃなんとかなるだろ」
あまりにも投げやりな返事をするハンニバルだったが、マティアスは初めての戦闘機操縦に好奇心が湧いていた。
直接戦闘だけでなく、戦闘機を操縦することも軍人としての第一歩だ。
日中は周辺の景色や買い物を楽しみ、夜はハンニバルの部屋で彼に手料理を振る舞ってもらい、楽しい1日を過ごしていた。
しかし、2人はただ遊んでいただけでは無い。マティアスは先日戦った敵の戦い方を参考にし、基地内で新しい武器を購入していたのだ。
そして第2の任務の日がやって来た。2人はいつも通り互いの部屋付近で合流し、司令室へ向かう。
「おはよう、諸君。マティアスはそろそろ軍事基地の生活に慣れてきたかね?」
「おはようございます、ウィリアム司令官。休日もハンニバルが付き合ってくれたのでもう慣れました」
「おはよう、ウィリアム司令官! 今のマティアスは俺も認める立派な相棒だぜ!」
先日の戦いでマティアスが大きく活躍したからか、ハンニバルはマティアスを褒めながら挨拶した。
「そうか、それは頼もしい限りだ。では今回の任務について説明しよう。戦場で交戦中だった我が軍の1部隊が壊滅したとの連絡があった。生き残って帰って来た兵士の証言によると、敵の中には身体を機械化・改造された兵士、そして未知の生物がいたそうだ。生物兵器・人間兵器の開発は世界各国で行われていたから不思議では無いがな。諸君は軍事基地から出て北にある戦場へ向かい、敵の部隊を一掃して欲しい」
ウィリアム司令官は今回の任務について説明した。軍の部隊1つが壊滅するほどの敵がいるということは、前回よりも厳しい戦いになることは容易に想像出来る。
しかし、マティアスとハンニバルも今までの戦いを経て確実に強くなっているはずだ。2人に怖いものなんて無かった。
「どんな人間兵器や生物兵器が掛かってこようが、最高傑作の人間兵器である俺に敵う奴なんていねぇだろ! な、マティアス?」
「でもお前、この間は火炎放射で焼かれて危なかったじゃないか。いくらお前が強いからって無理はするなよ」
「あの時はオイル塗られてたからちょっと熱かったが、あの程度で死ぬほど俺はヤワじゃねぇって!」
確かにハンニバルならあのまま燃え続けていても、しぶとく生き残っていたかも知れない。
それでもマティアスは、ハンニバルが再び身の危険にさらされた場合は全力で助けようと心構えていた。
「今回の敵の数は前回の任務の時よりも多くなるだろう。諸君なら出来ると思うが、万が一危険だと感じたらすぐに撤退してくれ。では健闘を祈る」
2人は敬礼し、ウィリアム司令官は2人の身を案じながら、司令室を退室する2人を見送った。
2人はいつも通り軍事基地の外に出て軍用車に乗車する。今回もハンニバルが運転係だ。
ハンニバルは目的地が書かれた地図を見た後、軍用車を急発進させる。
相変わらず荒い運転だが、マティアスもいい加減慣れてきたのか、落ち着いた表情で辺りを見渡していた。
出発してしばらくすると、広々としたフィールドが見えてきた。
戦場付近に車を止めるのは危険なので、ハンニバルは少し離れた場所で車を止め、2人は外に出る。
この戦場はかつては街だったように見えるが、周囲の建物は崩壊し、敵兵達によって支配されていた。
しかも、こちら側の部隊が壊滅したのを良いことに、敵兵達はこの戦場の一部に自分たちの拠点を作ろうとしているようだ。
「俺達の部隊がいなくなったからって好き勝手やりやがって! あいつらの居場所なんざ1ミリたりとも残さねーぜ!」
「待て、ハンニバル! 早速敵に見つかったぞ!」
2人が戦場に足を踏み入れた瞬間、周辺の高台に設置されている複数の無人砲台がこちらに向かって砲弾を発射してきた。
マティアスは砲弾を避けつつ手榴弾を砲台に向かって投げて爆破する。
一方ハンニバルは砲弾を無傷で受け止め、そのままバズーカの砲撃で砲台を破壊した。
機械系の敵には銃弾が効きにくいので、マティアスは手榴弾を用意しておいて正解だったと感じていた。
「ハンニバル、お前は相変わらず攻撃を避けないんだな」
「大抵の攻撃では俺の体に傷一つつかねぇから安心しな! お前も手榴弾なんて使うのは初めてなのに、なかなかやるじゃねぇか!」
マティアスの武器の扱いの上達に感心するハンニバル。
敵が砲台の攻撃と爆発音に気づいたのか、20数人ほどの敵兵達が2人の元にやって来た。
前回戦った敵兵達とは違い、その中には身体の半分以上を機械化されたサイボーグの兵士も混ざっている。
「アメリカ軍の奴ら、あの部隊を壊滅させてやったというのにまだ懲りないのか? しかもたった2人で俺達の縄張りに入ってきやがって、わざわざ殺されに来たようなもんだな!」
敵兵達は2人を見て馬鹿にしたように笑う。
「ここはいつからてめぇらの縄張りになったんだ? あの放火犯どもと同じ目に合いたくなければ、とっととてめぇらの国に帰るんだな!」
ハンニバルの言葉を聞いた敵兵達は驚いていた。
ここの兵士達の仲間、つまり先日戦ったビリー率いる放火団をたった2人の軍人によって壊滅させられたことを知らされたからだ。
「まさか、こいつらがビリーの隊を壊滅させたのか!?」
「だが、俺達はあっちの隊と違って肉体強化をされている。兵力も兵数もこちらの方が圧倒的に上だ。こいつらがビリーの部隊に勝てても、俺達の隊には勝てん!」
敵兵達は一斉に武器を構え、こちらに向かって襲い掛かってきた。
その瞬間、マティアスがここぞとばかりに手榴弾を取り出し、ハンニバルに話しかける。
「今から新しい武器を試す。ハンニバル、少しの間だけ目を瞑っててくれ」
ハンニバルがうなずき目を瞑ると、マティアスはスタングレネードを投げつける。
スタングレネードは起爆と同時に爆発音と閃光を放ち、敵兵達の目を眩ませた。
「今だ! 殲滅するぞ!」
敵兵達が怯んだ瞬間、マティアスは機関銃による銃撃で、ハンニバルはバズーカを振り回して敵を薙ぎ倒していく。
これでその場にいる半分以上の敵は倒せたが、スタングレネードが効かなかったサイボーグの敵兵達がマティアス目掛けてナイフで斬りつけてきた。
マティアスは脇腹を刺されて血を流すも、刺してきた敵の腕を片手で掴み、もう片方の手で敵の頭部を掴み、そのまま首をへし折る。
一方、ハンニバルは元々近接戦闘が得意な為、サイボーグの敵兵達がナイフで攻撃してきたのは好都合だった。
ハンニバルはマティアスに近づく敵兵達の頭部を素早く殴り飛ばしていった。
敵を一掃したのを確認すると、顔面の半分以上が機械化された敵兵の頭部があちこちに転がっているのが分かる。
ハンニバルは脇腹から血を流しているマティアスの元に駆け寄り、傷の手当てをする。
「大丈夫か? 休めるチャンスがあるときに回復するのが大事だぜ」
「ありがとう。しかし、改造人間というのは敵に回すとなかなか厄介だな」
ハンニバルはマティアスの傷の手当てを終えると、サイボーグ兵の死体に目を向けた後、哀れみを感じさせる表情で語り始めた。
「肉体の機械化は生身の肉体では出来なかったものが得られるが、同時に生身ではあり得なかった問題も抱えることになるんだ。機械には動力エネルギーの確保、定期的なメンテナンスが必要だ。そして何より問題なのは、機械化された人間は人間でいられなくなることだ。俺も改造人間だから言えたことじゃないが、お前はあいつらみたいになるなよ」
「あぁ、言われなくとも私は私だ。人間でいることに耐えられなかった奴らに成り下がるつもりは全くない」
2人は会話を終えると、遠くにある壁付近に戦車に似た乗り物があるのを見つけた。
乗り物がある場所に近づいて行くと、敵のエンジニアが乗り物のメンテナンスをしているのが分かる。
2人は身を潜め、乗り物のメンテナンスが終わったのを見計らい、マティアスが敵のエンジニアの頭部を狙撃した。
この乗り物さえあれば戦いも大幅に楽になるかもしれない。2人はワクワクしながら乗り物を物色する。
この乗り物の前方には火炎放射器とガトリング砲が設置してあるが、操縦席は一人分しか空いていない。
「マティアス、お前がその乗り物の操縦をしてくれ。俺はそのまま戦うから問題無いぜ」
「あぁ、別に構わんが、これはどうやって操作するんだ?」
「分かんねぇよ。適当にやってりゃなんとかなるだろ」
あまりにも投げやりな返事をするハンニバルだったが、マティアスは初めての戦闘機操縦に好奇心が湧いていた。
直接戦闘だけでなく、戦闘機を操縦することも軍人としての第一歩だ。