第62話 『 ふぇちくん。 』

文字数 645文字

       ☆

 笛地(ふえち)、という名字なのだが、たいがい、
『ふぇち井』または『フェチ君』と呼ばれている。
 まぁ、読んでその通り、
『フェチ』(フェティッシュ)の略である。
 それと言うのも。
 とにかくいわゆるマイペース? で。
 何かキッカケがあると、もぉ一瞬で。
 スイッチ入ってしまい、語る、語る…
 微に入り細に入り、その話題の対象の。
 知る限りの蘊蓄(うんちく)雑学・関連情報の類を、
 延々と…
(※ 誰かが停めれば、一応止まる。)

 まぁ、いわゆる、コミュ障?
「…ちょっと、ショーガイ入ってる?系?」
 と、クラスメイトやご近所さんは、評するが。
 それでも案外まったく嫌われておらず。
 むしろ、いつも、あちこちのグループに楽し気に。
 連れ歩かれて?いるのは…
「ふぇち井~! これどうよ?」と、
 聞かれれば、一瞬で。
 べっらべらと、関連情報を語り始めるので。
 ある意味、下手なスマホの検索機能などより、便利だ。ということと…

「フェチ君、XX君って、どうよ?」
 と、気になる異性の情報など、尋ねてみれば。
 本人が、(なんでそんなことまで知ってるッ?!)
 と、赤面して逃げ出すほどの…
 個人的きわまりない情報まで、よく熟知、している上に。

 基本的に、彼の語り口は…『 愛 』なのだ。
 欠点ももちろん並列するが。
 どんだけそいつが好きなんだ? という、情報の、収集っぷりで…


 近くにいる人間も。
 そんなフェチ観に釣られて。
 いろいろと。
 人間観察とか、百科事典読破とか…

 したくなって、しまうからである。


       ☆
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