第1話(2)

エピソード文字数 2,305文字

「あ、どうもです。お待たせ致しました」

 やっぱり不安を払拭できず、わたくしめは100回深呼吸をしてリビングルームにリリリリリリターン。それはもう緊張ししししししまくりで魔王様の前に立った。

「大変失礼致しました。ホント、お待たせして申し訳ありません」

 待たせたのは事実なので、まずは腰を90度に曲げて謝罪をする。
 魔王、怒るかな? 怒るよね?

「んーん。このくらい平気(へーき)だよー」

 魔王様、にこっ。
 うそやだ。この人、メッチャ友好的。

「にゅむ、固まってどしたのー? あそっか、名乗ってないからお名前を呼べないんだねーっ」

 魔王は胸の前でポムッと手の平を打ち、ペコッ。可愛らしく頭を下げた。

「はじめまして、あたしは黒真(くろま)レミア16歳ですー。こことは違う日本で、魔王(まおー)をやってるよー」

 魔の王が気さくに、しかも先に挨拶をしてる。
 わぉ。容姿と声音はキツメだが、性格は滅茶滅茶フレンドリーだ。
 ゴメンね、リリウ。喋ってみると印象が全然違ってて、お前の発言は的を射てたよ。

「にゅむん、これで自己紹介(じこしょーかい)はお仕舞いかなーっ。あなたはだーれ?」
「お、俺は色紙優星。同じく16で、高校生をやってます」
「そーなんだっ。ゆーせー君って、お呼びするねーっ」

 魔王様は俺の両手を掴み、無邪気にブンブン振る。
 すっげー。僕、魔王に君付けされたよ。

「ぁ、ぇと。黒真、様」
「にゅむむっ。あたしのコトは、下のお名前を呼び捨てでいーよ。あと敬語(けーご)さんはなしで、お友達と接するよーにしてほしーなーっ」
「わ、分かりま――分かったよ、レミア」

 すっげーその2。僕、魔王を呼び捨てにしてるよ。

「そーそー、それでいーのっ。これから仲良くしよーね、ゆーせー君っ」
「うん。こちらこそ――ってなにやっとるんだ」

 握手しようとしてどうする。俺は契約を破棄するんだろ。

「にゅむむ? どーしたのー?」
「…………レミア。俺達は、契約をしてるよね?」
「そだねーっ。リリウちゃんがゆーせー君の顔写真さんと依頼のお言葉を送ってきて、あたしはオッケーしたんだよっ」

 それは初耳。アイツ、あの間にそんなモノまで送信してたのか。
 と、それはさて置きだ。ある部分にちょいと興味を引かれたので、尋ねてみよう。そうしよう。

「質問、させてもらうね。キミは写真のどこを見て、俺に使われてもいいと思ったの?」

 十中八九この子に地球侵略系の意思はなく、その契約は手下になると同義のもの。もしや自分には、魔王すらも跪かせる程の迫力があったのか?

「えっとね。あたしはお写真を見た瞬間にね、この人はいー人のお目目をしてるーって感じたの。だから、お写真の人になら使われてもいーかなって思ったんだよー」
「へ、それだけ? そんな理由で、魔王が人間と契約しちゃったの?」
「ううん、理由(りゆー)はもー1つあるよ。実はあたしって、誰かのために働きたかったんだー」

 衝撃の事実発覚。魔王様は、ご奉仕希望だった。

「あたしの世界では強い力は、その持ち主さんが――『英雄(えいゆう)』って呼ばれる人が死んじゃうと、ランダムで別の生物(せーぶつ)さんに移る仕組みになっててねー。去年魔王(まおー)さんの能力(のーりょく)が手に入るまではふつーの人間で、貴族さんのお家でメイドさんのアルバイトをしてたの」
「バイト、ねぇ。メイドに憧れてたの?」
「にゅむむん。あたしのお家は貧乏(びんぼー)で、そーしないと生きてけなかったからだよっ」

 レミアは首を左右に振り、ニコニコ笑顔を浮かべる。
 これは、お兄さんビックリだ。なかなかハードな過去を、ポジティブに告げられたぞ。

「あたしは6人家族だけどパパがリストラされちゃって、収入(しゅーにゅー)はパパとママのアルバイト代のみー。そんなだから長女(ちょーじょ)さんのあたしは、10歳からメイドさんをやってたんだーっ」
「へ、へぇ……」

 魔王、苦労してる。俺は生まれて初めて、自分は恵まれていると感じてるよ。

「10歳~15歳までそんなお仕事をして、小っさなアパートで暮らしてたからなんだろーね。豪華な食べ物とかお城は落ち着かなくって、1番偉いってゆーのもヘンテコな感じがするんだよー」
「ふむふむ。ふむふむふむ」
「だから色んな人の身の回りのお世話をしたりお仕事を手伝ったりして、今迄みたいにふつーに誰かを支えたいの。でもでも『英雄』の中にはお仕事が殆どない職業(しょくぎょー)があって、魔王さんもそーでみんなのお役に立てないんだー。それにお世話とかはみんなが遠慮(えんりょー)しちゃってやれないから、なんにもできなくてとっても悲しかったの」

 やりたいことをできないってのは、辛いモンな。心中お察しします。

「けどけど初代魔王(しょだいまおー)さんは意気投合(いきとーごー)した魔王使いさんと契約(けーやく)してて、伝統(でんとー)で魔王使いさんになら色々やってもいーの。んでんでその魔王使いさんの契約のお話があって、魔王のお仕事は滅多になくて誰にもご迷惑(めーわく)はかからなくって、しかもその人は素敵な感じがある人ー。断る理由(りゆー)がなかったんだよっ」
「ははぁ。なるほどねぇ」
「ゆーせー君、これで動機(どーき)のご説明(せつめー)はおしまいですっ。機会を与えてくれて、ありがとーね」

 レミアは、破顔一笑。とっても幸せそうに、破顔一笑する。
 うっわー……。破棄しにくいな、コレ……。
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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