ケツ座十字星

文字数 2,803文字

ちょっ、顔面パンチとか! こんな美人に『へもげ』なんてセリフ吐かせるとか!
さすがの私もそれは引くぞ、べる君……
悪事をたくらむヤツに男も女も美人もブサイクもあるかっ、悪い事をしたらゲンコツ制裁!
言ってることは正しいが自分の腕力を考えろ!
バフはかけてねぇ
かけてなくても!
……
お、お姉ちゃんが泣き止んだ
そういえば、動けるな
泣き止んだと言うか軽い放心状態……。そりゃ女装した男に出会い頭に殴られたら僕だってあぁなると思いますけど
スッ
なぁエリス、悪いことは言わねぇ、そんな世界征服やめとけ
ぐすっ、なによぉ、ウィッチ君に何が分かるっていうのよぉ
仮に魅了の技で世界征服をしたとして、王座から見下ろした時に間違いなく虚しくなる。本当にお前を好きで従ってくれるヤツがどこにも居ないのが分かっちまうから
ひっく、うぇ……
魅了なんてつまらん技に頼るなよ、お前ならいくらでも他にやり方はあるはずだ
なんか、いい雰囲気じゃないですか?
うむ、べる君に意外な才能発見だな
フン、甘すぎよ。私の時なんか……
あ、リリさん。起きたんですか?
何か記憶が飛んでる……なんで尻だけ石化してるの?
アンタのせいだよ
で、でもこれで丸く収まってくれれば――

――聖なる光よ、悪しき穢れを浄化すべく全てを貫け 『プリズミック・レイ!』


ドゴッッ!!

うわっ!?
よし進入経路確保、1・3・4班は倒れている負傷者を片っ端から回収、救護。2班はそのまま入り口の警護を固めておけ、5班は私と共に来い!
あっ、あの時の……
マルカさん!?
ふふふ、よく会うな諸君。今回の誘拐事件の犯人はそこの女か? よし、捕らえろ
はっ!
ちょっと、後から来てこんなハイエナみたいな真似よく出来るわね
はて? 何のことだ? 私は突入準備を整えてから来ただけだが?
うちのギルマスに言いつけて――
おっと、こちらには国から発行された正式な捜査令状がある。どちらかと言えばこの空き屋敷に不当に侵入しているのは君たちギルドの冒険者の方と言えるな
……っ
あ、あのですね、エリスさんは今回の事件とは無関係です
そうですよ先輩、よくよく聞いたら彼女の魅力に取り付かれた村の男たちが勝手に集まってきただけで――
いいのよ
お姉ちゃん!?
いい機会だし、一回ニンゲンの牢に入って頭を冷やしてくるわ
素直だな、情状酌量の余地もありそうだ。歓迎するぞ
ダメです、ソラリス教なんかに捕まったら生きて帰って来れないかもしれませんよ!
いいの、ちょっとだけ考える時間も欲しいし
連れて行け
エリスさん……

かっこわるいわね、あたし。でももういいの……


ありがとう

***
うわー、もうすっかり夜になっちゃいましたね。日付も変わってるし今夜はフローリアに一泊かな
へくちっ
いや、宿に行く前に魔法風邪薬買ってこなきゃ
皆さん、今日は本当にありがとうございました
アハハ、結局ヴェルナーさんに良いところ全部持ってかれちゃったけどね
……それでも、ぼくにとってのヒーローはヒュウさんです
え、あ、えっと……
にやにや(・∀・)ニヤニヤ
くっ、口で言うな! これみよがしにあのっ、そのっ
お得意のツッコミまで鈍っちゃって、いやぁ微笑ましーわ~
だからそういうんじゃなくって!!
皆さん。ぼく、今回のことを受け止めて決意しました。今までは自信がなくて逃げていたけど、お父さんの後を継ごうと思います
後を継ぐって、魔王に?

はい。手段はともかくとしてお姉ちゃんの理想……想いはぼくも同じですから。


魔族と人とハーゼ、3種族の架け橋になれるような『優しい魔王』になってみせます!

優しい魔王か……うん、フィン君ならきっとなれるよ
で、あの、もしぼくが魔王になった暁には、ヒュウさんに側に居て欲しいなぁなんて……思っちゃったりして……その
あ。ねぇふと思ったんだけど、フィン君が魔王になったらお父さんみたいに一夫多妻制にするの?
え゛
フィン君みたいに綺麗な顔してたら、きっと可愛い女の子が次々名乗りをあげるんだろうな~いいなぁ羨ましいなぁ、僕にも紹介して欲しい……あれ、どうしたの?
~~ッ、ヒュウさんのばかぁっ!!
ドゴォッ!!
ぶべら!?
え? あ、あぁぁっ! ごめんなさいごめんなさい!
フラグの折れる~音がした~



 

何やら前方は楽しそうだな
ガキ共は元気だな、俺はもう腹が減って倒れそうだぜ……
時にべる君、ふと思い出したのだが聞いてくれるか
んぁ?
私がまだ教会に所属していた時の話だ、とある鉱山に依頼で通りかかった際あるウワサを聞いてな。なんでもその鉱山には『破壊の救世主』なる物が降臨したことがあるそうだ




 その鉱山には元々ハーゼが隠れ住んでいたのだが、強欲なヒトの手が入りハーゼたちは馬車馬のごとく劣悪な条件で働かされていた。

 ところがある日、天から降りて来た『破壊の救世主』が大暴れしてあっという間に人間たちを殲滅してしまった

 ハーゼたちは解放を喜ぶ以前にその圧倒的な力量に恐れ慄いた。

 暴れまわる『救世主』があまりにも壮絶な血まみれの姿で振り向いた時、彼らは皆一様に震え縮こまったそうだ


 やがて『破壊の救世主』は何も言わずにその場を発ち去っていった。



村の子供に聞いた話では彼は『魔女のような格好をした大柄な男』だったらしい。どこかで聞いたような人物像ではないかね?
……
エリス君にはそういった思いをさせたくなかったのだろう? べる君は優しいな

……激情に身を任せるもんじゃねぇな、あいつらもいずれは自力で立ち上がっただろうに


……俺はあの時の目が忘れられない

だが彼らは感謝していたぞ。君を模したモニュメントまで設置されていた
げっ! 二度といかねぇ!
ふふふ、ところで故郷は見つかったのかね?
! お、おま、なんでそれを……っ
私の事は名探偵ポッティと呼びたまえ。君が生まれた故郷の村を探し求めているのも、手がかりがあれば我々にナイショで一人で出かけていることも調査済みさ。今回、一人別行動を取って居たのも故郷を探していたのだろう?
……アイツらには言うなよ
おや、なぜだい?
カッコ悪ィだろうがよ、男がいつまでもウジウジ自分の故郷を探してるだなんて
私はそうは思わないがな。人は誰しも心の拠り所を探している。それをふるさとや自分のルーツに求めるのはごく自然な事だと思うぞ
もっと仲間を頼りたまえ、我らがリーダーは非常にドライではあるが身内に対しては底抜けのお人よしだ。きっと協力してくれるだろう



 

ポティマスさぁぁん! ヒュウさんの治癒お願いしますっ、ぼくの、ぼくのせいでぇっ
どうでもいいけど尻の石化広がってきてない?
ああああああ! ぼくのせいでヒュウさんのお尻が割れる!?
いや尻は元から割れてるから
4つに割れてるわよ
横に割れてるの!?
ほう、宵闇に輝く『ケツ座十字星』と名付けよう
ドサクサに紛れてなに言ってんだアンタ! 光球を置くなっ、僕の尻は台座かっ



 

打ち明ける、ねぇ
――最後まで何で僕ばっかりぃぃいいい!!
ふっ、ま……いずれ、な
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