ぱっつん少女だな - 2-2

文字数 1,478文字

その強化装甲がなんで俺の体の中に有ると彼女が思ったのかというと、俺がコミックスを買いに立ち寄った書店で偶然彼女も本日発売の『ディバイダ・ガール』の新刊を買いに来ていて、何もない所で(つまづ)いてよろけた拍子に俺にぶつかったんだそうだ。ドジっ()属性って事か?
ぶつかって超至近距離だった為か探知機が反応し、解析結果で間違いなく失踪した強化装甲だと断定。人通りのない場所まで尾行した後に人間と融合していた場合のマニュアルに沿ってあのギャラクティカなんちゃらキック俺の後頭部にお見舞いしてくれたという事らしい。
あれ? でもちょっと変だな。確かに本屋で女の子にぶつかられた記憶はある。めっさ柔らかい物体が二つ、ポヨヨヨヨーーンて感じで俺の背中に押し付けられた感触は今でもハッキリと覚えている。死ぬまで忘れることはない
瞬時におのれの遭遇した状況を理解し、思わず鼻の穴が開き、はううううっとのけぞってしまったのは自分だけの秘密だ。チョーラッキイーーって心の中で叫んだ記憶もしっかりとある。
でもこんな金パッツン胸ぱっつん美少女じゃなかったぞ。
あ、いや胸ぱっつんな所は同等だったかもしれない。
しかし雰囲気とかとか全然違ってたような気がする。んーとたしかもっとこう地味な感じで髪は黒くて三つ編みで、牛乳瓶の底のようなメガネをかけたセーラー服姿女子だったような気がするんだけどなあ……。

彼女の荒唐無稽なSF風宇宙物語的な説明は一応一通り聞き終わった。


これは何だろう。俺が今までに読んだマンガ小説、観たアニメ特撮にもこんなような似た感じの話は有ったと言えば有った。ドンピシャなのは思いつかないが。

まあ、世界中に溢れかえっている物語を全部読んだり観たりするのは不可能だから俺の知らない話が有っても不思議ではない。
だが俺の嗜好的にはかなり興味が惹かれる設定であるのも嘘偽りのない事実であると認めざるを得ないだろう。
ひょっとしてこの少女はマンガ、若しくは小説なんかの創作活動を行っている可能性も否定できない。今ならばSF宇宙物より異世界転生物を書いた方がウケそうだからそっちのほうが良いのではないかと忠告してあげるのが親切というものかもしれない。
しかし信念を持って自分の好きなジャンルを書き続けるという行為を決して否定したりはしない。むしろ積極的に応援をしていきたいという心境だ。
さて、ここで一つの疑問が発生する。彼女の説明が彼女の創作物であったと仮定すると俺に接近してきた真の目的とはいったい何だったのか、という疑問だ。
本屋で偶然俺と遭遇したというのは本当だろうか。以前から監視されていたという可能性も無きにしも非ずだが、理由は皆目見当がつかない
『ディバイダ・ガール』の新刊を買ったというのは本当のような気がする。大ファンなんですってキラキラした笑顔で言ってたし。うん、かわいい
本屋で胸部を押し付けてきたメガネっ()と目の前のコスプレ少女が同一人物かもしれない説。まあ、コスプレ少女なんだからコスプレすればコスプレ少女になれるのはおかしくはないな。たまげるほどの変化ではあるが。
ただ、俺が本屋からこの路地まで歩いて来た短時間の内に着替えられるものなのだろうか? バッグ等に入れて持ち歩いているか、セーラー服の下にすでに着ていた。若しくは自宅がこの近辺に有り、速攻で着替えて来た。とかか。
ちなみに彼女の着ていた黒の冬用のセーラー服はここいら近辺の学校の制服じゃなかったな。どこか他所から遊びに来ていたか、セーラー服自体がコスプレ用だった可能性もあり得る。
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登場人物紹介

ミリアリア・タエコ・ルラララ

銀河連邦警察、地球駐在所勤務、警察官見習い。15歳。

日本人の母と宇宙人の父の間に生まれ、幼い頃に父の転勤で地球から外惑星に旅立つ。

ササラ・サラザリ・マーリン

大魔法使いアングリーズ・マーリンの最後の孫にして最後の弟子。

自称千年に一人の大天才魔法使い。異世界人。11歳。

罰野 場継(ばつの ばつ)』

自称オタクじゃない、一見平凡そうに見えるが、その実本当に平凡な一介の高校一年生。(なのか?)15歳。

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