アンブレラの女(10/9)

文字数 258文字

傘をアンブレラと呼ぶ女がいて
服には無頓着なのに
アンブレラとレインコートには
とことんこだわり
雨の日を楽しみにしていた

雨が似合う女で
出会いも
別れも
雨の日だった

雨の日に
大切なアンブレラとレインコートを残したまま
突然
姿を消した

雨が降れば
戻ってくるだろうと思い
そのままにしているのだが
待ちくたびれた

アンブレラとレインコートと一緒に
消えてくれれば
早くに忘れられるのに
傷口がいつまでも開いたままだ

雨の日になると
思い出すから
時折降るのは良いけれど
こうも毎日だとつらい

捨ててしまえば
すべて
なかったことになるのだろうが
結局、捨てられない
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