(二)-17

文字数 385文字

 その戦いは学年が上がるにつれてグラウンドだけでなく、教室でも行われた。本当に腹が立つ男で、細かいことでなんだかんだ言ってきた覚えがある。何を言われたかは今となってはよく覚えていないので、きっと本当にどうでもいい些細なことだったのだろう。
 その有田の顔写真を見ていると、なんとなく、あの永尾武雄に似ている気がしてきた。いやはや、そんなわけはない。写真の男子生徒は、頭が丸刈りだ。野球部は顧問の先生が厳しく、丸刈りにしなくてはならなかった。野球部だった有田はその例にならい、丸刈りだった。今とは印象が大きく違っている。しかし似ている気がした。
 アルバムを見ながらそんなことを考えていると、部屋の扉を開けて母親が顔を覗かせてきた。
「早紀、父さんがせっかくだから、今日は外食にしようってさ。あんたも行くでしょう」
 私は「もちろん行く」と答え、アルバムを本棚にしまった。

(続く)
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