砂漠の夜

文字数 505文字

 アリーアとセトは、砂漠の国に着いた。
 昼間猛烈な暑さだが、夜ともなれば身が震えるほどに冷え込む。地表から逃げていく熱を遮るものがなく、地面の熱がどんどんと奪われて温度が下がっていく。それが砂漠の昼と夜の姿だった。
 アリーアとセトは宿を取り、暖かくして夜を迎えた。
 昼間にアリーアは、町の人から話を聞いた。
 この砂漠の国を支配するのは、邪神アポピスの配下、蛇王ザッハーク。毎日生贄を捧げさせ、生贄の非業の声と、家族の絶望をアポピスに捧げることで、アポピスを支えているのだと。
 人々は毎日生贄を求められ、明日は我が身という絶望の日々を送る。それすらもアポピスの糧となるのだ。この国からの脱出も許されないために、アリーアたちも容易に先へは進めない。
 ベッドで横になりながら、アリーアは考えた。いずれアポピスと戦うことは避けられない宿命だ。その時に、まだザッハークが生きていたら、アポピスは際限なく強化され続ける。何よりこの国の人々を救うために。
 アリーアは決意した。蛇王討伐を。セトに告げると、セトは何も言わずに、強い瞳でアリーアを見つめていた。アリーアを守る。それだけが自分の役目だ。セトの目はそう語っていた。

 
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