第45話 フレデリックの国王命令
文字数 1,154文字
翌日、フレデリックの執務室に行ったら、いきなり厳命された。
昨夜の甘い雰囲気はどこへやらという感じである。お互い職務中だから、仕方ないのかも知れないけれど。
「本日より、オービニエ外務大臣の執務室及び本人又は補佐官等への接近を禁ずる。これは私からセシリア・ピクトリアン・グルダナへの命令である」
国王陛下の厳命である。セシリアは、臣下の礼を執るしかなかった。
私は護衛をしてくれているアルベールと、フルマンティ宰相の執務室に書類を取りに行っていた。
「外交の方は、上手くいっているようですね。オービニエ殿がピリピリしております」
「上手くいっているかどうかは、わかりませんが」
外交はともかく、外交大臣を出し抜けているのかは、まだ分からない。裏ルートでも持っていたら、私にはもうどうすることも出来ないわ。
「さすがは、陛下が見込まれた女性だと思いますよ。セシリア様は」
意味が良く分からない。だいたい、宰相は味方なの?
「その顔は、いけません。このような政治の場では思っていることを顔に出さないようにしないと」
私が怪訝そうな顔をすると、宰相はそんな事を言ってきた。
「気を付けます」
「そうしてください。オービニエ殿は、かなりイライラしてますからね。セシリア様がそんな風だとつけ込まれてしまいます」
外交の所為だけじゃ無いと思うけど。実際、かおり草の解毒も進んでいて、クリストフも王宮内に姿を現さない。
教会も診療所にも、解毒の薬草を焚いたり、患者さんには薬湯として飲ませているし、警備も強化した。その結果、城下町の方も随分改善しているようだった。
外務大臣が懐に入れていたお金も思うように入って来ないのだろう。
ただ、かおり草の件について、フレデリックは宰相も疑っていた。
「わたくしに直接外交要請があったからイライラしているのでしようけど、あれは仕方がありません。ピクトリアンが相手だったのですもの。わたくしがここに居なければ、交渉相手は陛下だったのでしょうし」
「その陛下から、オービニエ殿に近付くなと厳命を下されているのでしょう? 余程の事だと思いますよ」
敵か味方かわからない宰相にまで、注意を受けてしまった。
私は書類を受け取り宰相の執務室を後にする。
しばらく廊下を歩いていると、不意にアルベールから腕を引かれる。
アルベールは自分と私の立ち位置を入れ替えた。
何かと思って、見るとオービニエ外務大臣が前方からやって来ている。
私たちに気付き、廊下の端によけ、臣下の礼を執って私たちが通り過ぎるのを待っているようだった。
何も言わず通り過ぎようとして、気付いた。
オービニエ外務大臣から、かおり草のにおいが濃厚に漂ってきていることに……。
昨夜の甘い雰囲気はどこへやらという感じである。お互い職務中だから、仕方ないのかも知れないけれど。
「本日より、オービニエ外務大臣の執務室及び本人又は補佐官等への接近を禁ずる。これは私からセシリア・ピクトリアン・グルダナへの命令である」
国王陛下の厳命である。セシリアは、臣下の礼を執るしかなかった。
私は護衛をしてくれているアルベールと、フルマンティ宰相の執務室に書類を取りに行っていた。
「外交の方は、上手くいっているようですね。オービニエ殿がピリピリしております」
「上手くいっているかどうかは、わかりませんが」
外交はともかく、外交大臣を出し抜けているのかは、まだ分からない。裏ルートでも持っていたら、私にはもうどうすることも出来ないわ。
「さすがは、陛下が見込まれた女性だと思いますよ。セシリア様は」
意味が良く分からない。だいたい、宰相は味方なの?
「その顔は、いけません。このような政治の場では思っていることを顔に出さないようにしないと」
私が怪訝そうな顔をすると、宰相はそんな事を言ってきた。
「気を付けます」
「そうしてください。オービニエ殿は、かなりイライラしてますからね。セシリア様がそんな風だとつけ込まれてしまいます」
外交の所為だけじゃ無いと思うけど。実際、かおり草の解毒も進んでいて、クリストフも王宮内に姿を現さない。
教会も診療所にも、解毒の薬草を焚いたり、患者さんには薬湯として飲ませているし、警備も強化した。その結果、城下町の方も随分改善しているようだった。
外務大臣が懐に入れていたお金も思うように入って来ないのだろう。
ただ、かおり草の件について、フレデリックは宰相も疑っていた。
「わたくしに直接外交要請があったからイライラしているのでしようけど、あれは仕方がありません。ピクトリアンが相手だったのですもの。わたくしがここに居なければ、交渉相手は陛下だったのでしょうし」
「その陛下から、オービニエ殿に近付くなと厳命を下されているのでしょう? 余程の事だと思いますよ」
敵か味方かわからない宰相にまで、注意を受けてしまった。
私は書類を受け取り宰相の執務室を後にする。
しばらく廊下を歩いていると、不意にアルベールから腕を引かれる。
アルベールは自分と私の立ち位置を入れ替えた。
何かと思って、見るとオービニエ外務大臣が前方からやって来ている。
私たちに気付き、廊下の端によけ、臣下の礼を執って私たちが通り過ぎるのを待っているようだった。
何も言わず通り過ぎようとして、気付いた。
オービニエ外務大臣から、かおり草のにおいが濃厚に漂ってきていることに……。