第15話 ママチャリ300kmの旅 その9

文字数 1,317文字

 街につき、ハンバーガーショップで朝食と昼食をまとめて済ませた私は、すぐ隣にあるネットカフェにむかった。ちょうどそのあたりからさらに強く雪が降り始めて積もりだす。

 休む判断をしたことは正解だった。

 私はそのネットカフェで12時間コースを選ぶ。
 料金は三千円もいかないし、それにシャワールームもあるのが本当にありがたかい。

 さっそくご店員様にシャワールームを借りる予約を済ませると、すぐに借りられた。
 シャワールームへ直行。
 靴を脱ぐと、100km踏ん張った臭いが、靴下から臭う。めっちゃクサイ。
 それらをシャワールームに持ち込み、シャワーを浴びた。


 はあ、生き返る。

 この一言に尽きる。


 シャワーヘッドから放たれる暖かなお湯は、ときおり、4秒に1度の間隔で一瞬だけ水に戻るが、それでも私は洗われる心地よさに、力なく息を吐きだす。それから常備されているボディシャンプーで、体と一緒に汚れた靴下も洗っていった。

 さっぱりした私は、自分の個室に入りやるべきことをする。
 まずは、スマホの充電。
 これをしておかなければ、道に迷ってしまうこと請け合い。
 次に、距離とルートの再確認とリュック内の整理をして、それらをすませたあとは寝た。

 インターネットや漫画を嗜んでいる場合ではない。
 体の疲労を消し去らなければならないのだから。
 私は座敷の四角い空間で、対角線上に体を伸ばして眠った。

 
 目が覚める。時刻は午後の6時くらいだったか。
 思いのほか寝ていなかった。

 体の疲れはある程度とれた。退出時間まで時間は残っている。
 とはいえ、この居心地の良いところに長居すれば旅のやる気が損なわれる心配もあった。私は夜にも出発するつもりで、外を確認しに、外が見えるガラス張りのところに足を運ぶ。

 それはもう、猛烈に吹雪いていた。

 一面が白でおおわれ、10cm以上は積もっている様子。場所によっては脚の脛くらいの高さまで積もっていた。

 無理だな。これは。
 私は夜の出発をあきらめる。

 明日の朝まで待つしかない。だが横になろうにも眠気はもうないのだ。 
 
 となれば、満喫しようではないか。
 ネットカフェを。
 
 私は棚から漫画をかっさらい、個室のテーブルの上にメロンソーダを用意する。読んだ漫画の名前くらいは書いておこう。私は、次の日まで『嘘喰い』を1巻から当時の最新巻まで、一気読みした。
 
 それからの時間は漫画が面白かったことと、12時間コースを超過したときは店員さんが個室までやってきて一度会計を済ませにくること、くらいしか書くことはない。逆を言えば、それほどゆったりした時間でもあった。

 次の日の朝。

 私はまだ『嘘喰い』の最新巻を読み終えておらず、退出時間まで時間はあったので、それを読んでから出発することにする。なに、旅には寄り道が必要なのさ。
 

 楽しいひとときであった。 
 私はテーブルに積まれた漫画と飲み物の残りを片付け、準備をする。
 
 結局、24時間もネットカフェにはお世話になった。本当にありがとう。

 会計を済ませ、店を出る。
 雪は依然として積もっていたが、いい天気だった。
 私は、自転車のサドルに積もった雪を払う。

 
 さあ、出発だ。

 つづく。
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