【episode6-新たな季節】
文字数 306文字
夏の間、涙を流し続けた
待てど暮らせど彼の背中を見る機会は訪れず、やがて新しい恋が始まった。
新たな恋は沙楽の心を柔らかく穏やかにする。
魁人と過ごした甘く激しい恋愛とは違い、高校生らしく優しい恋だった。
沙楽の顔に笑顔が戻ってきた矢先のことである。
「沙楽!」
文化祭に突然魁人が現れた。
新しくお付き合いをはじめた彼と廊下で話していた沙楽の肩を強引に抱き寄せ携帯電話で写真を撮ると、繋いだ手を引き寄せる。
そのまま、お化け屋敷の迷路に忍び込むと、懐かしい感触が沙楽の唇を塞いだ。
繋いだ手が熱を帯びた瞬間、魁人は沙楽の手を振り解き、大好きだった背中を見せながら去って行った。