第8話 榛名春奈、倉庫内作業中①

文字数 1,829文字

そんな榛名春奈の声を聞きながら、当真は辺りをサッと見回す。

(………)

彼女以外の存在が誰もいないことを確認すると、ガララ…と引き戸になっている倉庫の扉を閉めた。

「誰か手伝いに来てくれないかなー」

閉める際に結構大きな音がしたが、相手には聞こえていない…何故なら、当真の持つスキルの力により、彼女まで音が届いていないのだ。

(………)

二人きりになると、当真は静かに榛名春奈の背後へと近付いていく。

室内には、自分と春奈先生の二人しかいない。そのシチュエーションに自然と当真の呼吸が荒くなる。

(んっ、はぁっ…ゴクリ…!)

まだその手で触ってもいないのに、榛名春奈から発散される体温香(フェロモン)の放射を受けて、当真はクラクラと目眩を起こしていた。

□□□□

「ふう、やれやれ。後は点検するだけか。ここは大物が多いけど、そのぶん数が少ないのが救いだな」

備品数の少ない、第2体育館を担当していた沙織。ここは、大半が重量のある備品で占められていた。

本来なら、男性教員が複数で担当する仕事だ。それを女の細腕で行うのは中々に大変だが、レベルアップの恩恵により、沙織一人でも何とかなった。

「春奈の方は…まだ終わらないだろうな」

春奈の担当する第二体育倉庫は、沙織のいる所とは逆で、細かい備品が多く作業に時間が掛かる。

「しょうがない。こっちを片付けたら、手伝ってやるか」

数多くの備品に囲まれて、ぶー垂れている春奈を想像しながら、沙織は点検作業に掛かろうとした。しかし、ふと不安が胸をよぎる。

「アイツ、運動神経良いクセに、要領が悪くて抜けているからなぁ。大丈夫かな? 備品に足を引っ掛けてコケてなきゃ、いいけど…」

□□□□

何をやっても良い…目の前の女性に触っても良いのだ。そして当真は現実感を失う…

「すうぅ…はぁ~ぁ~…」

深呼吸を一つ入れ、乱れた呼吸を整えると、彼は掛け声と共に両腕をのばし、背後から榛名春奈へと飛び掛かった。

「はああぁ~、きもちいーー!」

むにゅ、むにゅう~! という柔肌(にく)の感触。それと同時に伝わって来る、春奈の肉体の完成度の高さ。

「うわー、さいこうっ!」

初めて触れる大人の女性のカラダ…当真は接触面全てから、女性特有の押せば沈み込むような肌の柔らかさと、燃えるような熱い体温を感じ取っていた。

「んんっ!? んおーー!!!」

同時に、フェロモンの弾ける良い匂いが、当真の頭の中一杯に広がってゆく。

「うっ!? くおっ~~!!!」

初めて感じる異性の体温と感触…そして、その甘い香りに少年は、クラクラしてしまう。

「えっ、えとっ…!?」

そして、いきなり後ろから抱き付かれた榛名春奈。彼女は困惑しながら、相手の正体を確かめようとしていた。

「誰? 沙織?」

「ちょ…!? ちょっと!?」

何の冗談か、という表情で春奈は後ろを振り返ろうとする。

「もうっ…一体、なんなの?」

この時、まだ彼女は同僚である沙織の仕業(イタズラ)だと思っていたのだ。

「ほんといい加減に…えっ!?」

□□□□

『セクロス対象者、榛名春奈との接触を確認…対榛名春奈専用、全必殺技(アダルトスキル)解除(アンロック)及び童貞誘導体(チェリーサポート)AIハルナ1型起動…』

だが、勝利(セクロス)に至る為には、この攻防を制し、榛名春奈を丸裸にして押し倒さなければならない…幸い当真は彼女に対して、有利な位置(バック)を取っている。勝機は十分にあった。

戦意(じょうねつ)の減少、喪失を確認…』

本来、この年頃の生徒としては、味わえない興奮と快楽を体験して、意識を失いかけていた当真…

『これより水森当真に対して、EX職業(ジョブ) AV男優による精神・肉体への補正が働きます』

だが、システムから注ぎ込まれた力によって、彼は目の焦点を、ギョロリと合わせる。
そして、大きく息を吐き出し復活した当真。彼はこうして、危機的恍惚状態(バッドステータス)を脱することに成功する。

「あぶない、あぶない、終わっちゃう(フライングする)とこだった…ふぅ、よしっ!」

そう言って当真は、倍返しにしてやる! とばかりに、ギラギラとその瞳を光らせ、榛名春奈の背中を見据えた。

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登場人物紹介

【水森 当真《みずもり とうま》】


本編の主人公 (12)。特に目立った長所もなく、ただ単に溢れんばかりの若さを持っているだけのスケベ小僧。クラスでも埋没気味《モブ》な生徒の一人。

【榛名 春奈《はるな はるな》】


メインヒロイン(22)。今年の春に、私立水上学園中等部に赴任した新任の女性教員。そして、周囲から爆乳と称される程の大きな乳房の持ち主。


活発で人付き合いも良く、身体を動かす事が大好きである。その一方、漫画・小説・アニメ・ゲーム等の在宅趣味も嗜む。娯楽消費者として、インもアウトもバランス良くこなす性格をしている。


また、幼少より道場に通い詰めて、武芸を学んでいた。その影響で、非常時には物事をシビアに捉えるクセがあり、常人より一歩も二歩も見切りが早い。


突如現れた、モンスター達を相手に立ち回り、彼女は強力な職業《ジョブ》とスキルを取得する。その力を使い、生き残った生徒達を守ろうと奮戦する。

【絵堂沙織《えどうさおり》】


4月生まれの23才。私立水上学園中等部に勤める新任の女性教員。榛名春奈とは同期。185センチという見上げる程の高身長を誇る女性。


異世界転移前は、長身巨乳のお姉さんとして男子生徒から人気を博していた。それゆえに、彼女は当真の対戦相手として候補に上がっている…が、それはまだ先の話。


鎧袖一触を好み、テクニカルな春奈とは真逆の戦闘スタイルを得意としている。その恵まれた体格でもって、鬼に金棒という大型武器を操り、敵を一撃で粉砕する生粋のパワーファイター。

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