第2話 使用人の範疇とは?

文字数 823文字

 思いつきと勢いで始まった割にレンタルサーヴァントは好調だった。

 中でも、驚いたのは若い男性客の多さ。学生は料理やオシャレを教えて欲しいと、社会人は正装やマナーを求めてくる。

社長、披露宴の友人代理って使用人の範疇ですか?
専門業者に頼むより安いのかな?

 そんな首を傾げたく要望もあったが、秋は頑張った。


 ――が、ある日の要望はさすがに無視できなかった。

引きこもり支援とか無理でしょ?

僕はカウンセラーの資格は持ってないんですけど?

……考えてみろ。

自分の仕える屋敷のお嬢様が引きこもりになったとして、使用人たる執事は放置するか?

そりゃ、しないでしょうが
なら、これは使用人の領分だ

わかりました。

ちなみに相手の年齢は? 最低でも年下。20代じゃないと無理ですよ

それくらい、俺にもわかっている。

年季の入った引きこもりが、年下の言うことを聞くわけないってな

 というわけで、社長が受けたのはまだ十代だった。
若いとはいえ歴は長いぞ。中学1年から……7年近いな
理由は?
学校に馴染めなかったらしい。あと虐めもあったようだ
本人の性格等に問題は?
あえてあげるなら、内気で大人しすぎるだな
わかりました。それならなんとかなりそうです
おまえのそういうところが俺は大好きだぞ

 無理難題でも即答しない。考えた上で返答する。

 そして、応じる際はそれなりの自信を持って――

僕は社長のそういうところが嫌いですよ

 調子に乗って安受けあい。

 そのくせ自分自身は諦めが早く、他者に丸投げ。

 もしくは、なんとかなるだろうと楽観視。


無駄に有能なおまえが悪い

玄人には、てんで敵いませんよ。

所詮、僕の能力は素人騙しなんで

素人に通じるなら充分だ。

玄人は時に自分の拘りを押し付けるからな

はいはい。

じゃぁ、これだけは訊いて用意してくださいね

わかった……っておぃ! こんなの訊いたらセクハラじゃないか?
保護者に用意して貰うのでも構いませんよ
それなら、なんとかなるか
 そうして、執事による引きこもり支援が始まる。
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登場人物紹介

レンタルサーヴァントの執事第1号、秋《あき》。

姉がいるゆえに少女漫画で育ち――

同年代の少年が少年漫画の主人公やライバルに憧れる中、少女漫画の有能イケメン当て馬キャラに憧れを抱いた結果、色々と有能で残念である。

元女子高に初の男子生徒として入学して、3年間不動の委員長を務めた実績もあり。



レンタルサーヴァントの発起人で社長。

思いつきのまま動くものの、今までそれなりの結果がついて来たゆえに止められなくなった男。

巻き込まれるほうは大変だが、本人は至って健康で幸せである。

かつて温泉街で働いていた際、界隈を仕切るボスに土下座を強要されても頑なにしなかったほど、理不尽に対して強い憤りを感じる性格。


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