第47話麻友の制裁⑥

文字数 1,246文字

元政権幹部である「枝村と安西の破廉恥動画」は、政界に大激震をもたらした。
枝村と安西が所属する政党代表は、当初「総選挙直前に我が党を貶めることが目的の偽動画、偽情報」として否定したが、SNS、マスコミ、国会での批判は、全く収まらない。
それに加えて「偽動画、偽情報」と否定した直後に、党代表の破廉恥動画も、「匿名」により、ネットに公表されてしまった。
男性議員を批判するはずの女性議員数名の「ホストクラブ通い動画」も追加されたことから、政党支持率は下落の一途。
総選挙で支援を表明していた労働団体は、全て「自主投票」に切り替わった。
共闘路線を表明していた左翼政党も、共闘を拒否した。(自前の候補を立てた)

枝村と安西、党代表、ホストクラブ通いの女性議員数名が議員辞職を余儀なくされただけでは済まなかった。
国会、マスコミでは、連日「議員にあるまじき破廉恥行為批判」であり、まともな政策議論、批判は行われなくなった。

しかし、与党の追及は、しだいに「ぬるい、中途半端なもの」に変化した。
「青少年の健全育成における今後の改善策を考えましょう」(つまり、過去の失態を問わない)が大半なのである。


「アイドルを抱ける店」の事務室で、清水亜里沙が笑った。
「与党議員の動画も多くてね、それを官邸にチラつかせたの」
「そうしたら途端に、大人しくなった」
「10億来たよ、まあ、いい商売だこと」

君澤浩二は、低い声。
「官邸には表に出せない金がある、機密費だな」
「でも、これで与野党の構図は、同じように継続する」
「官邸にも貸しを作ったってことだ」

芳樹は、かねてから抱いていた疑問を極道二人にぶつけた。
「今まで組の名前を聞いていなかった」
「由紀のオヤジさんの組とだけで」
「官邸にもメールできて、簡単に、こんなアブナイ店を買収できる」

清水亜里沙は、いきなり芳樹の局部を強く握った。
「漏らすんじゃないよ」
(清水亜里沙は、意地悪な笑みを浮かべている)
(芳樹は、懸命にこらえた)
「風間組だよ、関東最大」
「与野党ともに、うちには逆らえない」

芳樹の顏が紅潮した。
「面白い、そうか」
「だから、浩二さんと亜里沙姉さんが凄いのか」

君澤浩二は、芳樹の表情に注目した。
「風間組と聞いて、ビビらない」
「芳樹は面白いな、それと人を寄せる力がある」
「由紀お嬢様も、芳樹を気に入っている」
「ただの我がままだけではない、育てて幹部候補だ」

清水亜里沙は、しだいに蕩けた顏になった。
「こっちは、カチンコチン」
「いいなあ、若い子は」

秋葉原の街をブラついていた由紀、夏子、麻友が戻って来た。
由紀は目ざとかった。
「亜里沙姉さん、私もしたい」

芳樹は、その隙に亜里沙の手から逃れた。
話題も変えた。
「例のアイドルコンサートの件は?」
麻友
「何枚か集めた、日比谷とか新宿、横浜、まずは近い場所だよ」
夏子
「イベント会社にも仕掛けが必要と思うの、エロ動画流すんでしょ?」

君澤浩二が頷いた。
「極道と興行会社は、昔から同じ穴のムジナ、任せて欲しい」

清水亜里沙は、スマホで誰かと連絡を取っている。
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