死にたがりやの君へ

文字数 634文字

僕には彼女がいる。大学3年になってようやくできた彼女だ。
「かえろ」
と言う君の笑顔は眩しくて、ふんわりと笑うその顔が大好きだった。
彼女は誰にでも優しかった。こんな僕にも。キラキラとした人達にも。もちろん子供にも。

でも君は死にたがりやだった。
自殺するような真似はしなかったけど、いつもヒヤヒヤさせられっぱなしだった。
明日死ぬかもしれない未来と、生きるかもしれない未来が相まって。僕は気が気じゃなかったよ。
そんな僕の気も知らないで、君はいつも笑っていた。どんなときでもずっと、

ある朝君はいなかった。いつもサボることの無い君がいない。予感がした。
「プルルルルル」
思考をつんざく電話の着信。発信者は彼女。
いつもなら喜ぶところだけど、なんだか嫌だった。

無機質な壁に囲まれた部屋に、君はいた。
白い紙の下には、きれいな顔。なんとも言えない香りのするその部屋は、居心地が悪くて、でも離れられなかった。

小学生を助けるなんて、君はヒーローだ。君の優しさが君を殺した。なんて言えない。
彼女を否定したくない。彼女のやったことを否定したくない。
でもまだ受け入れられない。認められない。

なんで君は僕より先に逝っちゃったの?
君のその顔を見る予定はなかった。君より長生きする予定もなかった。

死にたがりやの君へ
またいつか出会ったら、今度は絶対死なせない。僕より先に死ぬなんてさせない。
これが僕の我儘だと言うのなら、これが間違ってると言うのなら。
会いに来てよ。否定してよ。

また笑顔を見せてよ。
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