3 思い出の行く先

文字数 447文字

そうでしたか……。ありがとうございます。残念だけど仕方ない。由希乃ちゃん、今日は帰る? それともどこか行きたい場所あるかい?
急にいわれてもぉ……
 由希乃はパーカーのすそをいじくり回していて、要領を得ない。
あの、お連れさん、どうされたんですか?
う~ん……実は、この喫茶店、彼女の思い出の場所だったんです。今は川向こうに引っ越してしまったので、気合いを入れて遠出してきたのですが……
あらあら。それは残念だったわね。う~ん、どこかデートに向いてる場所ってないかしら……
 店先で話し込んでいると、花屋から別の店員さんが出て来た。
おい、どうしたんだい?
ああ、あなた。実はこちらの方――
 後から出て来たのは、女性の旦那さんのようだ。
 由希乃たちの事情を説明すると旦那さんは、
お隣のご主人が亡くなったのは残念だが、今この店は、別の場所で息子さんが継いでらっしゃるよ。調度品も什器も昔のままだから、雰囲気だけなら味わえるんじゃないかな。

行ってみるかい?

 ぐずぐずしていた由希乃の顔が、一気にぱっと明るくなった。
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登場人物紹介

橘 由希乃(女子高生) 
商店街の本屋でバイトしている。内気だがすぐテンパり、暴走しやすい性格。
そのため、人見知りなのか強引なのか分からないと評される。

本屋の向かいでバイトしている多島くんと付き合っている。勉強よりも交換日記を書くのに忙しい。

多島 勝也
本屋の向かいにある弁当屋でバイトしている若者。現在、資格試験の勉強中。
自分に自信がなく、つい素っ気ない態度を取って誤解されがち。

本屋でバイトしているJK、由希乃と付き合っており、彼女との年の差をとてもとても気にしている。その差十歳だが、見た目より若いと言われる。

花屋の奥さん

とある町で出会う。ご主人と二人で花屋を経営している。

花屋のご主人

夫婦で花屋を経営する男性。わりと尻に敷かれるタイプ。

喫茶店のマスター

由希乃と多島くんの行く先で待ち受けている。

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