腐れ縁
文字数 1,937文字
こらこら、そんな物騒な話じゃあないよ。その2人は双子だったんだがな、若い頃に喧嘩したとかで、もうお互い何が原因かも覚えてないってのに反目する一方でな。口を開けば言い争いになるもんで、同じ家で暮らしながらも一言も口をきかないってなあんばいだったんだとさ
はは、なんだかんだ言ってお兄ちゃんだな、お前は。だがな、この兄弟は違った。安否を確かめる目的であっても声を掛けたくなかったんだ。確認も通報もせず、状況が分からなくて不安だってなことをただずっと日記に綴ってたんだと
お前らより年季が入ってるからな。そりゃあいくらなんでも倒れてんのが明確なら救急車呼ぶぐらいはしたんだろうが、そのためにはまず相手の部屋を覗きに行って安否を確かめないとどうしようもない。スレデンガーの猫みたいなもんだな
だからな、兄弟それぞれが自分の日記に書いてたんだよ。相手の部屋から物音が聞こえなくなったものの、何ともなかった場合に気まずい思いをするのが嫌で確かめには行きたくないだとか。このまま放置して、もし死んでたら遺棄罪ってやつになるんじゃないかだとか。そういうのが不安で仕方ないってなことをな
いいや。どうも2人とも死因は心臓麻痺だったらしくて遺体自体に不審なところはなかったんだがな、問題はいつ死んだのかってとこだ。日記は発見される前日まで書かれてたそうなんだが、おかしなことに、両者とも死亡時期は日記の最後の日付より1ヶ月以上も前のはずだって診断されたんだよ。そんでな、それがちょうどお互いに物音がしなくなったって書いてた頃だったんだとさ