アイのまえにはエッチがある件

文字数 1,740文字

 まあそうしたわけで大学も一気呵成に入って自然消滅のように退学したわけだが。
 あのー……とんと色恋には縁がなかったな、うん。なんつうか、大学、しかも四大ではみんなお遊び遊ばれていらっしゃるようにね、お見受けしたんだけどね、意外にも部活なり学業、バイトに精を出してて、ソッチ方面の精は出ているさまを見たことがなかったな、まあ見てたら……もう! 子どもは寝てな!

 ――ハイ! 
 そういうことで無観客・無収益・無修正のわたくしの公開オナニー、本日のテーマが決まりましたわよ!

「熱傷受傷者の恋と性」!!!

 要するにえちえちについて、です。
 さて広範囲熱傷、もしくは局所でも深い熱傷、を、若くして負った方の恋のお悩みについてですが、残念なことにご相談を受けられるほどにはね、経験豊富でもなんでもないです、ワタクシ。なので今宵、ひたすらワタクシの感じたこと思うことを書き連ねるだけの稿です。親切にもアナウンスすると、すでに公開オナニーは始まっているんだぜ……。

 火傷が恋の手枷足枷となっているのは紛れもなく事実であろうので、まずそちらを中心に。

 平たくいって、

「だれもあんたの火傷なんか見ちゃいない」
「好きなひとがたまたま火傷、きらいなひとがたまたま火傷」

 この二項に尽きます。けだし、火傷は大きなコンプレックス。でも、コンプレックスをいっぱい、背負いきれないほどいっぱい抱えて、そのコンプレックスがあなたを萎縮させていたらこの際火傷は関係ありません。
 つまり恋愛成就には、あなたが「明朗な自信家で、ウィットに富み、笑顔がステキな」ひとか、もしくはそんな感じの魅力的なひとかどうか、です。
 つまりは火傷で傷を負ったのが皮膚なのか、あなたの人格そのものなのか、です。
 基本的に火傷はあなたの魅力に干渉しない。火傷はあなたの皮膚そして皮下にある諸組織を不可逆的に傷つけたけど、あなたの人格への侵襲は可塑性です。

 賢明なる読者諸氏はお気づきのはず。
 この陳腐な自己啓発セミナー、ぜんぶわたしが自分に言い聞かせて生きてきた内容なんです。

 妻を含む四人の方とお付き合いしました。
 うち、だれも事に至って「うげえ」とはなりませんでした。モテ自慢でもなんでもなく、だれも火傷は重要視していなかった。

 そう気づくのが遅かったのか、あるいは時宜とか潮時というものがあったのか、わたしが初めて女性をお誘いしたのは二十歳か二十一歳のころ。遅い方だとは思いますが、それまでなんら自信もなくうじうじとしていた。もう。

 伝聞ですが、夜の街で「お金出すから抱いて」と、自分の価値を確認された方もいるようです。分かってほしい、お願い、どうか分かって、っていうか分かれタコ。自分が物理的に通用しなくなるという不安が、どれほど怖いか。

 それは翻っていえば、火傷で自分の魅力が台無しにされた、と実はみんなが思ってることなんです。

 しかしながらも、出会いというものはなかなか訪れないもの。
 でも形成外科に入院中に喫煙所とかロビーとかで知り合ってもいい。同じ悩みもあるかもしれません。同窓会とか、以前の自分をしっかりと覚えてくれているひとは、意外と引かないのでこれもいいと思います。なにもリアルの線だけでもない。昔からのネットの仲間、とか、意外なところにあるんです、縁ってのは。
 だから集団の数が大きい「可能性的にイケそうな」ところに拘泥しなくてもいいのかな、と思います。
 ただ、危険を伴う出会い方はやめてね。STDや妊娠、拉致監禁etc……「自分の命なんかどうせ……」と思うのは自由。ああ自由だとも。でも実際問題、痛かったり血ィ出たり堕胎にお金かかったりするとき男は逃げてるから。

 ――で、脱いだ時は「腕を見てるから想像ついた」と何ともあっさりとした反応でした。ただ「向精神薬、とくに新しい世代の抗うつ薬はあまりにも下半身に響く」。なんということでしょう、精神科で出してもらっている薬が、その、あー、ねえ?
 
 そうこうしているうちにこの稿も終わりです。
 続きを書くべきかどうか。それから、書きたいこと、書かねばならないことの峻別作業もあります。ついでにこのエッセイの本義本来も見直しましょうか。

 では、みなさまの恋が実りますように。
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