これが神様に出会うってこと?

文字数 1,848文字

先程、咽喉元が詰まってしまったあの思い出に遡ります。
私はまだ、結婚もしていなくて実家いる時のことでした。朝の4時頃お金も持たずに近所のコンビニに行きました。厳密にいうと財布は持っていました。ですからクレジットカードや身分を証明する運転免許証は財布に入っていました。要するに現金がなかったのです。明け方のコンビニは11月という時期はまだ外は暗いです。実家の父が経営する店にお金を無心したり、宅急便を後払いでかなり遅く持ってくる近所の花屋のおばあさんがいたのですがコンビニで朝方品出しができた随分と豪勢な弁当を買っている姿を見てびっくりしました。父はこのおばあさんのことを「貧乏で気の毒だから仕方がない」と慈悲深く接していました。我が家もお金をチラつかせるような収入が特別あるわけでもないので父の人の良さにつけ込んだこの花屋のおばあさんがその時憎くも思えました。
そして、さて私は何を買おうかと思い、現金がないのでコンビニのATMの前に立って、この機械は果てさてどのように使うのだろうと思いました。コンビニのATMを使うのは初めてだったからです。そこで店員の若い男の子に聞いてみました。すぐに分かりやすく教えてもらえるだろうと思っていた私の大勘違い!!
店員も分からず…。
そして少し店員の若い男の子と立ち話をしていたら、かなり見た目から凄みのある茶髪と金髪の双子の女性たちが現れて、どうやら店員のお姉さんたちだったらしく、見た目から不良というのでしょうか、ヤンキー?といえばよいのでしょうか? そのお姉さんたちは私に向かってこう言い放ちました。
「仕事中の店員に話しかけていいのかよ!お前だな、万引きばかりしているピン人!!」
と思いがけぬ事を言われたのです。万引きしていないけど、“ピン人”という言葉には差別的でフィリピン人の人に失礼だろ、と正直思いました。そして身分証明書を見せろ、と言っています。そんなの納得いくかアホ!と思い一番重要なものだから普通は見ず知らずの人に提示を求められて見せるものではなく拒んでいると、携帯をそのヤンキー姉さんは取り出し、110番する、と言いました。
「じゃあ、すれば?」と生まれも育ちもヤンキーレベルになってしまったハレでした。

しばらくすると地元の警察署からパトカーがやってきました。なぜか私がパトカーに乗っている。う〜ん、この先どうなるんだろう?

地元の警察署に着くと、まだ分煙や喫煙禁止が浸透していない時代であったのでこの字型のカウンターの下にもぐってかがんで早朝勤務と夜勤からいるらしい警察官がもくもくとタバコを吸っていました。さすがに品行方正と中学生時代いわれ、多くの生徒のリーダーをやっていた私もなんだか理不尽な自分の状況に憤慨し、怒りを覚え、勢いよく、警察官たちに、
「警察官が勤務中にタバコを吸っていいのかよ!!」
と再び下町めいて叫んでしまいました。
ちょっと興奮した私を落ち着かせようとしたのかひとりの小太りの警察官が近付いてきました。
「まあまあ、落ち着いて。昨日免許の更新に来た子だよね?」
とやんわりと。そしてこう付け加えました。
「今、保護したからこれから自宅まで送るね。」


そう言われて、私は音のしないパトカーに再び乗って家の前に降りた。警察官は家の玄関まで行って、呼鈴を鳴らした。「ピンポーン」

朝、早起きの父が出ると、警察官は詳しく説明しないで、父に向かって言いました。

「保護しました!」

驚いた父と数時間後には精神病院にいた。父は何が何だか分からず、先ずは病院へと私を連れていったのです。
私には事の次第を説明する余地もございませんでした。

この頃は10年間くらい診てくれていた主治医が開業するため、病院を去った後だった。新しい主治医とのコミュニケーションもよくできていない中、私には何の自分を擁護する説明の権利もなくあっさりこの日に入院が決まってしまいました。

そして、この後数ヶ月間、私は自分の中で地獄にいる気分を味合うことになるのでした。人生最大の不幸の巻でした。

「神よ、たとえ死の陰の谷を歩んでも、私は禍いを恐れない。あなたが私と共におられ、あなたの鞭と杖は私を守る」

それでも、低い、低い、辛い、辛い、地獄のような生活から這い上がることができる根性を与えてくださり神様ありがとう!

私が経験した残酷物語は神様のご計画のうちにあったのでしょうか?
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登場人物紹介

ハレは30代の生まれた時から洗礼を授けられたクリスチャン。5歳年下の夫も結婚後しばらく経ってから受洗。ハレは子供が生まれたら司祭になったらいいな、と夢見ている。ところが実際にはそんな簡単に恵まれるわけでもなく教会コミュニティで奮闘するハレの姿を追っていく。

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