第2話(1)

エピソード文字数 1,685文字

「皆様、お待たせ致しました。これより面白昔話を始めます」

 時は午後1時、場所は和室にある特設ステージ。俺は異世界組が設置してくれた台に乗り、前に座っているユニ達4人にお辞儀をした。

「待ってましたミョン! 大爆笑させてくれミョーン!」
「ゆーせーくーんっ、しっかり空気を吸ったよー。いっぱい笑っても平気(へーき)でーすっ」
「勝先生、笑いは世界を救うぜよ! 師匠っ、お笑いの力を見せてや!」
「格好良くて優しいだけじゃなく、そういうセンスもあったなんてね。楽しみにしてるわよ」

 皆は手を叩き、(一名はキグルミのため不明だが)期待に満ちた眼差しを注いでくる。
 ほいほい。嫌という程、色紙優星の笑いを味わって頂きますよ。

「…………オッホン。それでは、はじまりはじまりー」

 俺は咳払いをして、ゆっくりと口を開く。

「むかしむかし。あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました」
「「「「…………」」」」(ワクワク)
「おじいさんは、山へ柴刈りに。おばあさんは、川へ洗濯に行きました」
「「「「…………」」」」(ワクワク)

 さて、ここからが第一の『笑いポイント』――相手を笑わせる部分だ。こちらにとってはジャブなのだが、みんなは注意しとけよ?

「おばあさんは右手に洗濯物を入れた洗濯カゴを持ち、スケートボードに乗って川に向かいます」
「「「「…………」」」」(ワクワク)
「途中でテンエイティーという空中で3回転するトリックを決め、颯爽と到着。エイトビートで洗濯を始めました」
「「「「…………」」」」(ワクワク)

 あ、あれれ? 第一の笑いポイント、終わったよ?
 ぇぇ? なんで笑わない? 俺、喋ってて噴き出しそうになったのに。なんで笑わないの?


 ――そ、そっか。今のは、高等すぎて分からなかったのか。


 でもでも安心安心で、第二の笑いポイントは結構シンプルだ。ここで笑いの渦に巻き込もう!

「それと、同時刻――。おじいさんは山で、熊と社交ダンスを踊っていました」
「「「「…………」」」」(ワクワク)
「熊が男、おじいさんが女となり、チークダンスに興じています。おっとこれはどうしたことか! おじいさんの腰つき、妙に色っぽいっ」
「「「「…………」」」」(ワクワク)
「女性より女性らしい、見事な動き。あまりの上手さについていけず、熊は『クマったな』と思います」
「「「「…………」」」」(???)

 どう、したんだ? 客の顔が、『コイツもしかして……』的なソレになったぞ。

「さて再び、おばあさん。エイトビートを刻んでいると、どんぶらこと桃が流れてきました」
「「「「…………」」」」(ワクワク)

 あ、ここからが本番なのね。って御顔になったのは、多分気のせいだ。

「大きな桃を見たおばあさんは、すかさずこう言います。『この季節に、あんな立派な桃は出回らない。あれは桃的な何かじゃ!』」
「「「「…………」」」」(ジトー)

 ぇ、ぇー? 今のトコは会心の出来なのに、『コイツもしかしなくても……』な表情になったぞ?
 うっそー、まだ高度すぎるの? し、仕方ない、少々アレンジするか。

「おばあさんはへそくりで始めた投資で大儲けをしており、非常に裕福でした。大きくみずみずしい桃に興味を示しません」
「「「「…………」」」」(……)
「しかーし、中の桃太郎は拾って貰わないといけない。そこで外に聞こえるよう、『オギャーオギャー』と泣きます。赤ん坊なら拾うだろう、彼はそう思ったのです」
「「「「…………」」」」(…………)
「そんな企みのある泣き声を聞いた、おばあさん。しかしおばあさんは、『最近は面倒事にかかわると、どえらい目に遭う。わたしは何も見とらんぞ』と言い洗濯を続けました!」
「「「「…………」」」」(………………)
「これはクマった桃太郎っ。焦りに焦った桃太郎は、最終手段に――」
「優星クン、もう限界ミョン……。聴くの、辛いミョン……っ」

 突如だ。ユニが諸手を上げ、参りましたのポーズを取った。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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