その7『星を継ぐもの』と巨人たち
文字数 2,904文字
『星を継ぐもの』ジェイムズ・P・ホーガン(お薦め度☆☆☆☆)
若いと言っても1941年生まれで、残念ながら10年前に69歳で他界してる。
この小説でデビューしたのは1977年だから36歳で、少し遅咲きだね。
その頃の彼は、DEC (Digital Equipment Corporation) というアメリカのコンピューターメーカーで働いていたエンジニアだったんだ。
当時DECのコンピューターはミニコンと呼ばれていて、今のインターネットやクラウド・コンピューティングの土台になったUNIXというOS(オペレーティングシステム)の開発環境として知られていた。
私も学生の頃に、このDECのVAXというシステム上でロボットの制御プログラムを書いたことがある。その後の吸収合併で今はなくなってしまった会社だけれど、名前を聞くと若い頃を思い出して懐かしくなるね
そうとも言えない。
我々が持っているスマホは、当時最速のスーパーコンピューターと呼ばれたCRAY-1の計算処理能力をとっくに超えているからね。技術革新は宇宙開発より、私たちの身近のところに浸透したんだと思うよ
我々が持っているスマホは、当時最速のスーパーコンピューターと呼ばれたCRAY-1の計算処理能力をとっくに超えているからね。技術革新は宇宙開発より、私たちの身近のところに浸透したんだと思うよ
私が言いたかったのは、今我々が目にしている現実は昔の人にとってSFそのものだってこと。
ただ、現実の未来は、当時描かれた未来とはちょっと違うので、今50年前に書かれたSFを読むと違和感を感じるかも知れない。それにノスタルジーを感じるか、古臭いと感じるかは、読み手次第かな?
ただ、現実の未来は、当時描かれた未来とはちょっと違うので、今50年前に書かれたSFを読むと違和感を感じるかも知れない。それにノスタルジーを感じるか、古臭いと感じるかは、読み手次第かな?
小説は月から始まるんだよ。
月面で深紅の宇宙服を着た宇宙飛行士の遺体が発見される。どこの国の人物かも判らず、文字も地球上のどの文明のものとも違う。
「ルナリアン」と名付けられたその人物は、科学的な調査の結果、有史以前の5万年前に亡くなっていたことが判明する。
生物学者は、彼が間違いなくヒトであることを証明する一方で、最先端の科学技術でも実現不可能な高度なエネルギー源や、食料の分子構造が地球に存在しない生物に由来していることから、ルナリアンがいったいどこから来たのか、どんどん謎は深まっていくんだ
月面で深紅の宇宙服を着た宇宙飛行士の遺体が発見される。どこの国の人物かも判らず、文字も地球上のどの文明のものとも違う。
「ルナリアン」と名付けられたその人物は、科学的な調査の結果、有史以前の5万年前に亡くなっていたことが判明する。
生物学者は、彼が間違いなくヒトであることを証明する一方で、最先端の科学技術でも実現不可能な高度なエネルギー源や、食料の分子構造が地球に存在しない生物に由来していることから、ルナリアンがいったいどこから来たのか、どんどん謎は深まっていくんだ
読んでも、期待を裏切らないと思うよ。
やがて「ルナリアン」が持っていた日記の文字が解読され、人類がそれまで知ることのなかった太陽系の謎や、ミッシングリンク——学術的には「未発見の中間型化石」と言われる生物の進化の過程で連続性に欠けている部分の秘密が解き明かされていくんだ
やがて「ルナリアン」が持っていた日記の文字が解読され、人類がそれまで知ることのなかった太陽系の謎や、ミッシングリンク——学術的には「未発見の中間型化石」と言われる生物の進化の過程で連続性に欠けている部分の秘密が解き明かされていくんだ
残念ながら映画化はされていないんだよ。
ただ、リドリー・スコットが監督した『エイリアン』や『プロメテウス』には影響を与えたんじゃないかと思っている。
『エイリアン』のアイディアは脚本家のダン・オバノンによるものだし、クリーチャーのデザインを担当したのは画家で造形作家のH・R・ギーガーだけれど、映画に登場する巨人の死体は、映画の制作が始まる直前に発表されたこの小説をヒントにしてるんじゃないかな? 『プロメテウス』で巨人はずいぶん小さくなっていたけど、ちょうどその大きさがガニメデの巨人くらいになってたしね。
そうそう。この小説で物語の重要な鍵になるのが、木星の衛星ガニメデで発見される巨人なんだ
ただ、リドリー・スコットが監督した『エイリアン』や『プロメテウス』には影響を与えたんじゃないかと思っている。
『エイリアン』のアイディアは脚本家のダン・オバノンによるものだし、クリーチャーのデザインを担当したのは画家で造形作家のH・R・ギーガーだけれど、映画に登場する巨人の死体は、映画の制作が始まる直前に発表されたこの小説をヒントにしてるんじゃないかな? 『プロメテウス』で巨人はずいぶん小さくなっていたけど、ちょうどその大きさがガニメデの巨人くらいになってたしね。
そうそう。この小説で物語の重要な鍵になるのが、木星の衛星ガニメデで発見される巨人なんだ
私はこの1冊だけで充分愉しめると思うよ。
むしろ、この作品に満足していたから、続編を読んでちょっと飛躍しすぎだと思った部分もある。
SFはミステリーと違って、謎を謎のままにしておいた方が面白いこともあるからね。
先ずこの作品を読んで、その先をもっと知りたいと思ったら、続編を読んでみたらどうだろう?
むしろ、この作品に満足していたから、続編を読んでちょっと飛躍しすぎだと思った部分もある。
SFはミステリーと違って、謎を謎のままにしておいた方が面白いこともあるからね。
先ずこの作品を読んで、その先をもっと知りたいと思ったら、続編を読んでみたらどうだろう?
さっき言ったことと重なるけれど……
一つ目は、SF小説らしいセンス・オブ・ワンダーの数々。
二つ目は、ミステリーとしての面白さも備える謎解きのわくわく感。
三つ目は、ハードSFと呼ぶにふさわしい説得力……と言っても今は8年後に木星旅行が実現するとは思えなくなってしまったけど、現代の科学では解き明かせない様々な謎に対する回答を、実際の仮説のように展開しているからね。
四つ目に、もう一つ挙げるとしたら、クラークやアシモフにも通じるポジティブな世界観というか空気感かな?
一つ目は、SF小説らしいセンス・オブ・ワンダーの数々。
二つ目は、ミステリーとしての面白さも備える謎解きのわくわく感。
三つ目は、ハードSFと呼ぶにふさわしい説得力……と言っても今は8年後に木星旅行が実現するとは思えなくなってしまったけど、現代の科学では解き明かせない様々な謎に対する回答を、実際の仮説のように展開しているからね。
四つ目に、もう一つ挙げるとしたら、クラークやアシモフにも通じるポジティブな世界観というか空気感かな?
20世紀末あたりからは、ネガティブなディストピアや、どちらかというと絶望的な空気感のほうがSFの主流になってしまったからね。
この小説はSF小説の「夢多き古き良き時代」を感じさせる最後の作品のように思うんだ