記念写真

文字数 7,263文字

 昭和五十年の夏。
 林雄吉(ゆうきち)は仕事を離れて三日ほどゆっくりしたいと考え、ガイドブックを見ながら温泉宿を探していた。ページをめくっているうちに、雄吉は一枚の写真に目を止めた。
――古びた建物だが、何故か魅力的な雰囲気を感じる。
 雄吉は、温泉宿の写真の下に記載された電話番号に電話をかけ、二泊分の予約をした。

 三日後、雄吉は緑に囲まれた山奥の小さな温泉宿を訪れた。観光シーズンであるが、客は雄吉一人しかいなかった。
 雄吉は、部屋に荷物を置いた後で、宿の庭を散策した。広い庭で手入れは行き届いている。
――少し寂しい所だが、落ち着いてゆっくり休めそうだ。
 そう考えながら、雄吉は大きく伸びをした。
 部屋に戻ってぼんやりとしていた雄吉に、部屋の外から声がかかった。
「お待たせしました。ご夕食の用意ができました」
 宿の女将が、夕食の膳を運んできた。
 女将の名前は、柳原彩佳(あやか)という。
「静かで良い所ですね」雄吉は彩佳に声をかけた。
「ありがとうございます。何もない所ですが、ごゆっくりとおくつろぎください」彩佳は優しい笑顔で答えた。
――三十前後だろうか……。
 雄吉は彼女の年齢を推測した。
 彩佳は、艶があり愛想も良く、雄吉はすぐに好意を持った。

 二日目の夜。
 雄吉は部屋で食事をしながら、親しくなった彩佳と二人で話をしていた。
 雄吉は、自分は全国を回って風景を撮影している写真家で、独身なので気が向くままに日本各地を回り、知られざる名所を探しながら写真を撮り続けている、という話をした。
「全国いろいろと自由に行けるなんて羨ましいわ」彩佳は雄吉に酒の酌をしながら言った。
「自由と言っても仕事だから……」雄吉は注がれた酒を一口飲んでから、彩佳に言った。「どうですか、一杯飲みませんか」
「あら、ありがとうございます」彩佳は嬉しそうに返杯を受けた。
「あなたのような生活を私もしてみたい……」彩佳は雄吉の顔をじっと見つめながらつぶやいた。
「この旅館は創業からどれくらい経っているのですか?」雄吉は、彩佳の熱い視線を感じながらも、あえて話題を変えた。
「祖父が五十年ほど前に始めました。その後、父が経営を引き継いだのですが、父は三年前に病気で亡くなり、私が引き継ぐことになりました」
「まだお若いのに大変ですね」
「当時は、私は東京で会社勤めをしていたのですが、母はすでに他界していて、年の離れた妹はまだ学生で、他に継ぐ人もいなかったんです。本当は廃業してしまいたかったのですが、借金もあったので、やむなく私が引き継ぐことにしたのです」
「そうですか……」
「昔は景気の良い時もあったようですが、この十年くらいは赤字続きで……借金の返済に目途が付けば、いつでも止めてしまいたのですけどね」
「やはり、東京暮らしがいいですか?」
「私もまだ三十代の初めですから……」彩佳は少し寂しそうにほほ笑んだ。
 その後二人は日本酒を飲みながら夜遅くまで語り合った。
 彩佳は、雄吉が語る全国各地の話を興味深そうに聞き、何度も「私も行ってみたい」と言いながら、雄吉を見つめた。
 雄吉は、彩佳の魅力的な笑顔と仕草に心を奪われかけていた。
――俺ももうすぐ四十だから、そろそろ……。
 雄吉は、そう考えかけたが、すぐに考え直した。
――いや、まだ三十歳代だ。納得がいく仕事ができるようになるまで、まだまだ頑張らなければならない。
 二人は話が進むにつれて、お互いに好意以上のものを持っていることを強く感じ始めていた。酒が進むにつれて、二人は徐々に寄り添い、やがて唇を合わせた。

 翌朝、雄吉は宿の部屋で目を覚まし、布団の中で大きな伸びをした。昨夜共に過ごした彩佳の姿はすでになかったが、その温もりと香りをわずかに感じていた。
 間もなくすると、部屋の外から声がかかった。
「ご朝食の用意ができました」
 彩佳は何事もなかったかのように、てきぱきと雄吉のために朝食の世話をしている。
 雄吉は、朝食を終え、身支度をしてから、彩佳に別れの挨拶をした。
「お世話になりました。また、いつか来ようと思います」雄吉は笑顔で言った。
「ありがとうございます」彩佳は笑顔で答えたが、すぐに寂しそうな顔になった。「私もここを出て、自由な暮らしをしてみたい……」
 雄吉は、自分の心の中の迷いを見せないよう表情を変えずに、無言で彩佳を見つめると、彩佳も真剣な表情で雄吉の目を見つめ返した。
 しばらくして彩佳は笑顔を取り戻してから、少し恥ずかしそうな表情で小さな声で言った。
「私の写真を撮っていただけませんか?」
「いいですよ。外で撮りましょう」
 雄吉は彩佳と一緒に外に出て、宿の正面を背景にして彩佳の姿を何枚か撮影した。
「いい写真が撮れました。現像したら送りますね」雄吉は笑顔で言った。
「ありがとうございます」彩佳は嬉しそうにほほ笑んだ。

 雄吉は、夕方遅く東京の自宅に戻り、自宅内にある暗室で写真を現像した。
――写真写りがとても良い。本当に綺麗だ……。
 雄吉は写真の中でほほ笑む彩佳の姿に見入った。雄吉の頭の中には、彩佳と過ごした熱い一夜の記憶が鮮明に蘇ってきた。
――この写真を明日にでも送ろう。
 雄吉は、その写真を自分の机の上の電気スタンドに立てかけて置き、その夜何度もじっと見つめた。
 雄吉は翌朝早く、電話のベルで目が覚めた。
「林さんの写真展を見た者ですが……」
 電話の相手は、ある雑誌の編集部の担当者だった。林の写真展の写真を見て、雑誌の企画で使いたいという申し出だった。
「それはありがとうございます。是非、お願いします」林は嬉しさを抑えながら答えた。
「そうですか。それでは急なご依頼で申し訳ありませんが、今日の午後二時に当社まで来ていただけませんか。企画会議があり、その場でご説明したいのです。ご都合はつきますか?」
「大丈夫です」
 電話を切ると、雄吉はつぶやいた。
「ようやく俺にも運が向いてきたのかもしれない」
 その日の午後、企画会議で話がまとまり、雄吉は翌日から各地へ写真撮影の旅にでることになった。
 その夜遅く自宅に戻って来た雄吉は、机の上に置いたままになっていた彩佳の写真に目を止めた。
――この写真は、撮影旅行から戻ってきてから送ることにしよう。
 翌朝早く、雄吉は自宅を出た。
 写真撮影の旅は、最初は一週間の予定であったが、その途中で新たな依頼が入り、結局雄吉が自宅に戻って来たのは、一か月後であった。
 雄吉は、自宅に戻り、机の上に置きっぱなしになっていた彩佳の写真に目を止めた。
――この写真は、落ち着いたら送ろう。
 すでに次の仕事の予定が入っていた雄吉は、翌日からの仕事の準備を始めた。

 翌年の初夏。
 雄吉は、届いたばかりの暑中見舞いの葉書を手にしていた。昨年泊った温泉宿の女将である彩佳からの葉書だ。
〈またのお越しを心よりお待ちしております〉
 女文字の手書きのコメントを読んで、雄吉は目をつぶった。
――そういえば、あの写真はどこにしまったかな……。
 雄吉は引出しの中をごそごそかき回して探したところ、引出しの奥から彩佳の写真が出てきた。
――あれ以来、急に忙しくなって送っていなかった……どうするか……。
 写真は少し折れ目が付いているので、そのまま送るわけにもいかない。
――ネガはどこかにあるはずだが……。
 雄吉は家の中を探し回ったが、どうしても見つけることはできなかった。
――近いうちに行くことができれば良いが、しばらく忙しいからなあ……。
 雄吉はそう考えながら、葉書を無造作に机の上に置いた。

 その後も、三年ほど続けて彩佳からの暑中見舞いの葉書が届いたが、写真家として仕事が忙しくなっていた雄吉は、手に取って眺めるだけだった――。


 昭和五十四年の晩秋。
「もうこれ以上は待てません」銀行の担当者は、厳しい目で冷静に言い放った。
「何とかあと一週間待っていただけませんか?」柳原彩佳は、銀行からの借入金の返済の督促に、猶予を求めて頭を下げた。
「一週間待って、返済の目途はあるのですか?」
「何とかしようと思います」
「同じセリフを三か月前から聞いています」
「何とかもう少し待ってください。従業員の給料もまだ払っていないので」
「では、あと三日待ちます。それで無理なら、破産手続きに入らせていただきます」
「分かりました」
 彩佳は、厳しい宿の経営と金繰りに疲れ果てていた。しかし、いくらかでも資金援助をお願いするために、父方の遠い親戚を頼って、その日の夜に東京に向かった。
 夜行列車で翌日の早朝に東京駅に着いた彩佳は、列車からホームに一歩踏み出した瞬間、意識を失ってその場で倒れた。


 昭和六十年の初夏。
 雄吉は、届いたばかりの暑中見舞いの葉書を手にしている。
〈またのお越しを心よりお待ちしております〉
――あれから十年か……久しぶりに行ってみるか……。
 雄吉は、温泉宿の女将である柳原彩佳から何年かぶりに届いた葉書に書かれた番号に電話をかけて、一泊の予約を入れた。

 雄吉は、温泉宿の最寄りにあるローカル線の小さな駅を降りた。駅を出ると目の前には久しぶりに見る風景が広がっている。
――昔の風景と比べて、あまり変わっていないな。
 雄吉はそう考えながら、バス乗り場を探した。
 しかし、昔はあったバス乗り場が見当たらない。
「バス乗り場はどこにありますか?」雄吉は駅に戻って駅員に尋ねた。
「バスはだいぶ前に廃止になっています。タクシー乗り場が駅の前にあります」駅員は事務的な口調で答えた。
 雄吉は再び駅舎から出てみると、あいにくとタクシー乗り場は空っぽだ。
 真夏の太陽の強烈な陽射しが顔に直撃するのを避けるため、雄吉は片腕を額の前にかざしながら周囲を見回した。すると、先ほどは見かけなかったはずのバスが一台近くの路上に止まっている。
 雄吉はバスに駆け寄り、中にいる運転手に尋ねた。
「このバスは運行していますか?」
 運転手が無言でうなずいたので、雄吉は乗り込んだ。
――夏だけの臨時便なのだろうが、駅員もそれくらい教えてくれてもいいだろうに……。
 そう考えながら雄吉が座席に座ると、バスはすぐに走り出した。
 夏の観光シーズンであるが、乗客は一人だけである。
――これじゃあ、臨時便もいずれ廃止されるかもしれないな。
 雄吉はそう思いながらぼんやりと窓の外の景色を眺めていたが、しばらくしてポケットから古い写真を取り出した。そして、写真の中の彩佳の姿を見ながら、十年前のことを思い出していた。

 山道に揺られながら三十分ほど走り、山奥のバス停の前でバスが止まった。雄吉は彩佳の写真をポケットにしまい、バスを降りた。
 バス停から五分ほど山道を登ると、目の前には十年前と同じ宿があった。
 雄吉が玄関から入ると、彩佳が待っていた。
「いらっしゃいませ」
 彩佳は嬉しそうにほほ笑んでいる。十年前と変わらぬ美しい艶やかな容姿だ。
「久しぶりですね」雄吉も笑顔で挨拶した。
「どうぞ、こちらです」
 雄吉は彩佳について廊下を歩いていくと、案内されたのは十年前に泊まったのと同じ部屋だ。
――同じ部屋にしてくれたのか。
「ごゆっくりおくつろぎください」彩佳はそう言うと、一礼をして去っていった。
 雄吉は、おぼろげな記憶を呼び起こしてみたが、部屋の雰囲気もほとんど変わっていないようだ。
――あの時は確かにこの部屋だった。
 雄吉は、彩佳との一夜限りの契りを思い出し、体が熱くなるのを感じた。
 雄吉は、部屋に荷物を置いた後で、玄関から外に出て、宿の庭を散策した。庭の雰囲気も変わっていない。
 庭には小さな池があり、雄吉は中を覗き込んでみた。
――何もいないか……。
 十年前は、池の中には何匹かの錦鯉がいたことを覚えているが、今は一匹も見当たらない。

 雄吉は部屋に戻り、ぼんやりと畳に寝転がっていると、徐々に近づいてくるかすかな足音が聞こえてきた。
「ご夕食の用意ができました」彩佳が夕食を雄吉の部屋に運んできて、膳を整えた。
 今回も客は他にはいないようで、彩佳は雄吉につきっきりで夕食の世話をしながら話をしている。
「宿の雰囲気は全然変わっていないね」
「はい」彩佳は静かにうなずいた。
 その夜、雄吉は十年前と同じように彩佳と二人きりで夜遅くまで酒を飲みながら語り合った。
――十年前に比べて容姿に衰えは全くないが、昔に比べると話し方には元気がないような気がする。
 雄吉は少し気になったが、彩佳と話をしているうちに、十年前と同じ感情と情欲が湧き上がってきた。
 雄吉は彩佳の手を握ると、抵抗することなく寄り添ってきた。そして、その夜、二人は十年前と同じように愛し合った。

 翌朝、雄吉は目を覚ますと、すでに彩佳は厨房で朝食の用意をしているようだった。
 雄吉は布団の中でぼんやりと考えていた。
――俺ももうすぐ五十だ。仕事もそれなりに納得がいくものになっている。いつまでも独身を続けているべきではないかもしれない……十年前は、借金を抱えていると言っていたが、今はどうなのだろう。多少の額なら、俺が支援できるかもしれない……。

 雄吉は朝食をとりながら、近くで世話をしている彩佳に尋ねた。
「この宿は、これからもずっと続けるつもりですか?」
 彩佳は驚いた様子で雄吉の顔を見て尋ね返した。「どうして?」彩佳はそう言うと、質問の意味を知りたいという表情で雄吉の顔をじっと見つめた。
「僕と一緒に全国を回るか?」雄吉は、彩佳の瞳に心を吸い寄せられるようにして言った。
「本当ですか?」彩佳は一瞬笑顔を見せたが、すぐに寂しそうな表情になった。「でも、それはできません……」
「そうか無理か……俺みたいな放浪の生活は……」雄吉は当てが外れがっかりした表情を見せた。
「私もここを出て、あなたと自由な暮らしをしてみたかった……」彩佳は寂しそうな表情で言った。
 彩佳が沈黙したので、雄吉は彩佳の次の言葉をじっと待った。
「十年前だったら……」彩佳はそう言って、再び沈黙した。
――どういう意味だろうか……。
 雄吉は無言で彩佳を見つめたが、彩佳は何も言わずに沈黙し続けている。
 しばらくして、彩佳は小さな声で言った。
「私の写真を撮っていただけませんか? 今日は二人で並んだ写真を……」彩佳は雄吉の顔をじっと見つめている「あなたと再び出会えたことの記念として……」
「もちろん良いですよ」
 雄吉は彩佳と並んで、宿の正面に立った。
 雄吉は彩佳の肩を強く抱き、彩佳は雄吉にぴったりと寄り添った。
 雄吉は、同じポーズで数枚の写真を撮影した。
「現像したら送ります」雄吉は、今回は必ず写真を送るつもりであった。
「ありがとうございます」彩佳は静かにほほ笑んだ。

 雄吉は彩佳に別れを告げて温泉宿を出た。少し道を下ったところで振り返った時、先ほどは見送ってくれていた彩佳の姿はすでになかった。
 雄吉は思いを断ち切るように足早に道を下っていった。

 雄吉が再び路線バスに乗り駅に戻ると、昨日の駅員を見かけたので、声をかけた。
「路線バスはあるじゃないか。臨時便なのだろうけれど」
 駅員は怪訝な顔をして無言で雄吉を見ている。
「バスに乗って、山間の温泉宿まで行ってきたよ」
 駅員は無言で首を傾げた。
 その時、駅舎内のベンチに腰かけていた女性が立ち上がって、雄吉に近づいて尋ねた。
「失礼ですが、どちらの温泉宿まで?」その女性は真剣な表情で雄吉を見ている。
「ここですよ」雄吉はポケットから取り出した十年前の彩佳の姿の映った写真を見せながら言った。
「この写真の女性は私の姉です――」女性はそう言って絶句した。
「え? そうですか……」雄吉は驚いた表情で女性を見た。
 女性は一瞬沈黙してから言った。
「姉は五年前に亡くなりました。今日が命日です――」
 雄吉は目を見開き女の顔を見ているが、頭の中が真っ白になっている。
「姉は、親から継いだ古い宿を苦労しながらも一人で切り盛りしていましたが、大きな借金を抱え、六年前の秋に過労で倒れました。その後入院治療を続けていたところ、癌が見つかり、五年前に亡くなったのです……」
 雄吉は沈黙し続けている。
「その温泉宿は、姉が倒れた直後に競売にかけられましたが、買い手は付かず、今は荒れた山野になっています」
「……」
「私は毎年命日にお墓参りに来ています。昨夜、姉の姿が夢の中に現れて、駅で旅の男性に出会ったらこれを渡してほしい、と頼まれたのです」
 そう言うと、女性は鞄から白い布に包まれたものを取り出した。
 布を広げると、お猪口が二つ入っている。
「あ、これは――」
 それは、雄吉が昨夜彩佳と共に酒を飲んだ時に使ったものと同じものだ。
「姉が亡くなる直前に、これだけは大切に持っていて、と言って私に渡したものです」
 雄吉は茫然とした表情で沈黙している。
――どういうことなんだ……俺は幽霊でも見ていたというのか……。
 雄吉の頭の中には、さきほど別れたばかりの彩佳の顔が生々しく浮かんだ。しかし、温泉宿に戻って確かめる、という気持ちは、雄吉には湧いてこなかった。

 雄吉は、激しく乱れた心のまま東京の自宅に戻り、机の上に置きっぱなしにしてあった暑中見舞いの葉書を手に取った。
「あっ、これは……」雄吉は短く声を上げた。
 葉書は長い時を経たような薄いセピア色に変化していた。
 雄吉は、葉書に書かれた電話番号をじっと見た。そして、電話機に手を伸ばし、受話器を持ち上げ、ゆっくりとダイヤルを回した。
 雄吉は受話器を耳に当てて、緊張しながら反応を待った。
「この番号は現在使われておりません……」
 雄吉は、録音された女性のオペレーターの声を聞き、すぐに受話器を置いた。
 雄吉は自宅にある写真現像用の暗室に入り、温泉宿の前で彩佳と二人で並んで撮影した写真を現像する作業に取り掛かった。

 しばらくして映像が浮かび上がってきた写真には、雄吉の横に彩佳の姿はなく、その代わりに墓石が一基写っている。
 そして、その墓石には、あのお猪口が二つ並んで供えられていた。

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