第72話 呪いのDVD その三

文字数 691文字

 買ってしまった、かーくん。
どうしよう……買っちゃったよ。兄ちゃん。怖いからいっしょに見てくれる?
うん。いいよ
僕もいっしょに見てあげます
ありがとう。蘭さん
  三十分経過。
ぎゃー! 怖いよ。心霊写真〜
あはは! ヤダ。笑えますね
あれは光線のかげんだよ。カメラは構造上、横線のところで画像が消えることがあるんだよ。デジタルの場合はデータの処理ミス
…………
  一時間経過。
わあっ。オーブがあんなにいっぱい! 怖いー
ちぇっ。オーブていどじゃ笑えないな
かーくん。知ってるか? オーブってのは空気中に舞ってる(ほこり)や水滴に光が反射して、あんなふうに見えるんだよ
…………
  二時間経過。
うぎゃーっ! あんなとこに人が立ってる! さっきまでいなかったのにぃー!
あはは。楽しい〜
かーくん。あれは、みんながグルなんだよ。カメラを動かして他の場所を撮ってる瞬間に、スタンバイしてたオバケ役が前に出てきたんだ
…………
  三時間経過。
あひゃーっ! 見た? 今のはカメラワークのせいじゃないよ!
あははははははー
どう見てもCGだろ
……もう! 兄ちゃんも蘭さんもジャマ! 出てってよ。一人で見るからー!
ああ、かーくん。いいところでヒドイですよ
ごめん。ごめん。悪かったって
いいって言うまで入ってこないで!
ああ……
かーくん……
さてと。ジャマな二人がいなくなったし、見ようかな
  十分後。
……怖い
  さらに二十分後。
む、ムリ。一人じゃ見れない! ああっ、でも入れると、うるさいのと興ざめなのが。ど、どうしよう。見たいけど、見れない。我慢して見るのやめるか。ジャマなのといっしょに見るか……ああっ! ジレンマの呪いが!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(かーくん)

京都五条の町屋で兄の猛と蘭さんといっしょに暮らしている。アパレルショップ店員。

東堂猛(兄)

顔も頭も運動神経もいいけど、ちょっと残念なほどのブラコン。

九重蘭

絶世の美貌の友人であり、同居人のミステリー作家。

男ですよ。

三村鮭児(みむらけいじ)

大阪の友達。ときどき遊びに来る。

ミャーコ

うちの愛猫。猛になつかない。蘭さんが大好き。三村くんを敵だと思っている。

真顔の蘭さん

得体の知れない何か

得体の知れない何か2

ちゃるちゃる

長年、愛されるおサルのぬいぐるみ

得体の知れない何か3

トラ

オウム

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色