まだ見ぬディテールを求めて(前編)

文字数 3,277文字

いよいよ風祭駅づくりである! なぜ風祭駅を作るに至ったかはバックナンバーを参照されたい。
おなじみの学校工作用紙ですね。
さふなり。今回、建物のデータ類がほとんど手に入らなかったために、かなりの数の現物合わせ工作が生じた。そういうときは方眼入り学校工作用紙が大変威力を発揮するのだ。暗算しながらサクサク短時間に作っていける。
コンパクトで良い駅ですね、ヒドイっ、って、ひどくないよね……。
自分でツッコむならその口癖やめればいいのに、ヒドイっ。え、あ! 私に伝染っちゃった!!
あとから「南口(かまぼこの里口)」という出口があることもわかった。なにしろワタクシが降りたことはなく、著者が唯一、ドアカット時代に降りただけであるからのう。
非実在女子高校生としてもちゃんと年代考証は合わせるんですね。
かといってワタクシが永遠の17歳(+n)という表記をするわけにはいかぬからのう。何らかの解決は著者が考えなくてはならぬであろう。すなわち「鉄研でいず!」シリーズはただ安逸にエタるわけには行かぬのだ。ワタクシの目が隠れオッドアイである限り斯様なことはやらせはせぬ。やらせはせぬのだ。
コンパクトで良い駅モジュールだなー。レールWS248の2本分で扱いも楽そうなのに。
サーフェイサーも吹いて順調に進んでますね。ヒドイっ。
それがなんでこうなっちゃうんですかー!! こんな拡大ひどいー!
これじゃ普通のコンペ用モジュールの大きさではありませんか?
はっ、まさか!!
さふなり。これはさるコンペに出ることを迫られために路線変更することとしたのだ。
コンペ!!
そんな。出展だけでも大変なのに二箇所に出展なんて、そんなお金ないのに!!
それが……。
ミエくん、言わずともよい。これもワタクシの過ちであったのだ。
そんな!! だってあれは無理に迫られたんじゃないですか!! しかも!!
いうでないというのに。迫られたとしても、それを収めようと思いながらも、作った手は、にもかかわらずワタクシ自身の手なのだ。ワタクシは「自分は裏切られただけ」ということを恥じる。そもそも裏切るような相手を信じたワタクシが馬鹿であったのだ。
そんな!! 裏切ったほうがヒドイに決まってるじゃないですか!!
というか、総裁騙されたんですね!! ヒドイっ!! ヒドスギル!!
気づいたときにはもうどうにもならなかったのだ。失意ではあるが、そもそも甘言に乗ったワタクシが悪い。ただ断ればよかったのだ。
だって3回も誘われ、最後は強制だったじゃないですか!!
にもかかわらず!! ワタクシはそこで甘い判断をしたのだ!! 甘い誘いに乗り、強制に屈し、その後の悲劇に怯えてしもうたのだ!! すべてはワタクシの判断ミスなり!!
総裁の思いの外の厳しい口調に、みな唖然としている。
この件でワタクシは被害者ヅラはしたくないのだ。そうすることで斯様に迫り誘い裏切ったものと同じ次元に落ちるぐらいなら、出展どころか鉄道模型もテツ道もやめてしまったほうが良い!! テツ道とは斯様なものではないっ!!
みんな、言葉を失っている。

こんな厳しい表情の総裁を、みんなはまだ見たことはなかったのだ。


それだけ総裁は怒っているのだ、とみんなは察した。

ワタクシは、甘い言葉に乗ってしまい、斯様な裏切り者を一度信じた自分を、深く恥じる。
総裁……そんな……でも……。
でももなにも、ねいのだ。
みんな、言葉が出ない、
総裁、でも誘われれば嬉しいし、迫られれば断りにくいし、強制されれば怯えるし、裏切られれば悲しいのは、みんな同じことです。無理しちゃダメですよ。
さふかもしれぬ。でもワタクシはワタクシも裏切り者も、ともに決して許しはしないのだ。そして斯様な弱い決心ではテツ道は成就せぬことも重々承知しておるのだ。
総裁……。
しかしにもかかわらず、作った模型そのものに罪はない。ワタクシはこの模型も愛して作るしかないのだ。そしてこのようにベースの骨格を作った。
このように誘われたコンペの規定の高さと、我が北急高架線規格の高さの両対応にするよう、アダプタを用意したのだ。


思えばこのときからその悲劇は予感しておったのだろう。ワタクシの甘さである。

そして地形の概略を検討したのだ。Google地図には3D機能がある。それで何度も検証したのだ。
しかしこの「かまぼこの里」がいまいちよくわからぬ。この建物の形状もわからぬし、この建物の下の半地下駐車場もわからぬ。そこで。
取材旅行に旅立ったのですわね。
それもこのころっていったら新型ロマンスカーGSE車がデビューして間もなくですね。ヒドイっ。
しかしビンボーなので行きは料金不要の快速急行であった。帰りこそGSEにしたのだが。
本厚木駅で駅撮りもしたんだねー。動画はYouTube用かなー。
うむ、模型用のサウンドの収録も兼ねたのだ。しかしなかなかうまくいい音は録れぬこともはっきりした。また本厚木駅は上りも下りも安全側線があることに気づいた。しかし、この安全側線、突っ込んだら高架から落ちてしまうぞよ。それはそれで大惨事である!!
まあ落ちないように車止めもあるんでしょうし、砂利を後ろに盛ったとしても砂利に乗り上げて本線側に倒れて多重事故になるか、高架からやっぱり落ちてしまいますね。安全のためにはやはり安全側線に突っ込まないように別の策を講じるのが現実的でしょうね、
うむ。さふであろうのう……。
伊勢原付近ではこんなものも見た。
あれ、架線修理用のハシゴかな。でも竹製とは色が違う。もしかして合成素材か、合成塗料を塗ってあるのかな。でもこれ、市販されてる鉄道模型用のアクセサリーのハシゴのディテールアップの良いヒントになりますね。
さふであろう! 実車に乗っての取材は早くも観察によって多くの模型のヒントを得られる実によいものなのだ。
第二菖蒲トンネルですね! これは新宿方、渋沢から小田原方、新松田に向かう方向、撮り鉄さんがあまり撮らない側のディテールですね。これは良い資料! ヒドイっ。
例のセンターポール状の架線柱も見えます! ほんとだ、そうなってる!!
すでに実にいい取材になっておるのだ。
小田原で4連の赤い1000形に乗り換え、出発である。
出発信号が青ですね。この青緑、最近チップLEDで発売されましたね。長い間青緑は赤と一緒のチップでしかなかったのに。
さふなり。信号機のこの青色を緑LEDではなく青緑でやろうとこだわってきたのであるが、我が「鉄研でいず!」の連載の間に時代がかわってしまったのである。
あ、この鉄橋、登山電車用のレールの跡がある! 枕木の左側があいてる!
今は登山電車がこの区間を走ることはないからのう。箱根湯本から小田原まではもう登山電車は営業運転しない。車両基地のある入生田までしか登山電車用のレールも残ってはおらぬ。
小田原までの営業運転「里運用」、もうないもんねー。
あれ、この「鉄研でいず!」の書籍版第一巻で今も小田原まで登山電車来るって思ってたの誰だっけ。
カオルちゃん、そうやっていじわるしないー。
この分岐器のカーブを超えれば、風祭駅が見えてきますわね。
おおー。風祭駅だ! シンプルで可愛い!!
ええっ、奥から出てきたのは! ヒドイっ!!
新型ロマンスカーGSE車だ!!
わ、ここで交換なんだ!! 写真写真!!
あわててもだめだよー。構内踏切で渡れないし乗ってきた普通列車に隠れて写真撮れないよー。
行っちゃった……。
またこの端正な後ろ姿が素敵ですわ。GSE車。
テールランプがめちゃめちゃ小さいのも独特だよね。
駅舎が小さくて可愛い。構内踏切も今じゃ首都圏では少ないから楽しい!!
この踏切遮断機も塗り分けが特徴的だなあ。
あとでうちから総裁に余っていた模型の駐車場用遮断機をこの塗り方で塗ってプレゼントしたんですよ。
ありがたかったのである!!
駅の観察も楽しいですね。ヒドイっ。
ツバメちゃん、ひどくないよー。
そして駅の中をあちこち見て回ったのである。
そして駅の観察を一区切りして、駅周辺の観察にうつる。

その観察の様子は次のエピソードで!!

つづきますー!!
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。


*総裁のびっくりヒミツ能力(順次公開)

・隠れオッドアイ。安いラノベのキャラだと思われたくないので視力は悪くないのにカラーコンタクトをはめて眼の色を合わせている。しかしこのオッドアイのその眼を見てしまうと自白させてしまう作用がある。あまりにも危険なのでそれを抑制するためにもカラーコンタクト。


 ほかにもまだまだあります。

葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。

武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。

芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。


中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。

田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

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