文字数 448文字

 そうこうしていると、高校生らしからぬ(あるいは逆に高校生だからの)酒の酔いによる幻覚としかおもえない悪い状況になった。しかし指の欠損部の痛みは徐々に緩和し、酒量は減らしていたのだから、あるいは夢なのか、もしくは実際にぼくの部屋に蛇のように身をくねらせて這って入った購買のお婆さんの眼窩のスズメ蜂、あの蠢く目による呪術なのか。
 とにかく夏休みもはじまったある日、学年はちがうが、おなじ高校の3人がぼくをたずねてきて「子供狩り」にでかけようという。(彼らもまたいずれかの指を欠損していた)
 「子供狩り」というのは、その言葉が喚起してみせるとおりに、陰惨残忍なものだった。それでもそれは、悪夢から自分でのがれることが不可能なように、ぼくたちの意思とは反対の方向に働く強力な力によって、ぼくたちを捉えてはなさないのだった。ぼくたちは恐怖と嫌悪に顔をひきつらせ歪めながら「それ」をしたのだった。そうした現実だか夢だか区別のつかない泥沼のような昏い日々、子供狩りを繰り返していたある日に、きみが現れたのだ。
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