第4話

文字数 1,091文字

梅雨明け宣言が出た。
今日はいよいよ公演初日だ。今日からの3日間、この劇場で僕らの公演が始まる。
初日は18:00開場、18:30開演予定だ。
僕と浩二は既に開場準備を整え、舞台転換及び使用する道具の最終確認をしている。
山本達は受付周りの準備に走り回っている。
山下さんやケイちゃん達の役者陣も、衣装に着替えメイクも終えている。
開場時間が迫り劇場前には人が集まりだしているようだ。
山下さんがスタッフの所にやって来た。劇場前が混みだしたので少し早めに開場しようと提案する。
受付の山本の所に行くと、外にはかなりの人が集まっている。
山下さんがやって来て皆に声を掛ける。「開場しまーす」
各スタッフは「了解」と返事をすると、開場が始まる。
受付からロビー、そして客席へと人が流れ込んで来る。
ロビーには知り合いの顔ぶれも何人かいる。
緊張が走る。
受付と誘導の係は、山本が後輩に応援をお願いして何人か来ているようだ。

スタッフ、キャストの全員が楽屋に集合して山下さんを囲む。
山下さんから皆に言葉が掛けられる。「全員で集まるタイミングは今しかないので、とりあえず集まって貰いました。あとはこれまで稽古をして来た通りに頑張りましょう。力まず、いつも通り行こう。
初日は、緊張もすると思いますが、その緊張感を集中力に変えて楽しんでもらえれば、客席も感動する良い芝居が出来ると思います。
さあ、行きましょう」
「はい‼」皆の声が揃う。
「それでは、それぞれの持ち場に付いて下さい」
「はい」
僕は楽屋を後にする時、ケイちゃんの方を振り返ると、彼女も僕の姿を追う視線があった。目が合うと無言でガッツポーズを送って来た。
僕もガッツポーズで返した。彼女の口元が無言で「がんばれ」と動くのがわかった。

舞台袖に戻ると、お客を客席に誘導する1ベルの時刻だ。
定刻通りに舞台袖にある開演ベルのスイッチを押す。
ブザーが鳴る。
ロビーに出ていたお客が客席に戻りだしている。今から5分後に開演の本ベルを鳴らす。
そのブザーが鳴り終るといよいよスタートする。この為に稽古を重ねて来たのだ…‥そう思うと緊張と感動が沸いてくる。
浩二に、照明、音響スタッフに最後の確認をして貰うよう頼む。
山本には役者に準備のスタンバイの確認に走って貰う。
その2分後、浩二、山本から全て「OK]ですと返事が返ってきた。
傍にいるスタッフに「じゃあ皆、宜しく頼むね」と小さな声で言うと、皆が頷き。浩二はウインクで返してきた。
開演ベルのスイッチに手を掛けた。
18時30分定刻、開演ブザーの音が場内に長く響き渡った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み