第6話 U2「WAR」

文字数 906文字

「たった4人で、こんな凄い音がつくれるのか!」と、驚いた。ボーノのボーカル、訴えるギター、乾いたドラム…
「ニュー・イヤーズ・デイ」、「ブラディ・サンデー」。名盤だと思う。
 U2にハマっていた頃、ぼくは定時制高校に通っていて、いわゆる「イジメ」を受けていた。クラスメイトが、やはり暴力を受け、どんどん辞めていったので、「絶対このクラスを、まともなクラスに変えてやるんだ」と、正義感に燃えていた時期だった。その燃焼は、あまり続かなかったけれど…

 バイト先のセブンイレブンから帰宅して、定時制高校へ向かう前、部屋でよく、このU2を聴いていた。アルバムの邦題「闘」そのままに、恐い現実の暴力と、暴力に恐がる自分と戦って、学校に行くのが「やっと」という感じだった。
 授業中に、後ろの方の席から、モノがぼくに向かって投げられ、授業が終わったら終わったで、ぼこぼこに殴られたりした。よく行ったと思う。

 しかし、そういった「イジメ」が、ぼくに、心の傷のようなものを、さほど残していない。タイムマシンで当時に戻ったとしても、自分が同じことを繰り返す自信があるからだと思う。正しいとか、間違っているとか、そんな意識は、あったけれど、それは後付けのバックボーンで、単純に「暴力を振るう人が残り、そうでない人が退学していく」現実を見ていて、我慢ができなかった。

 先日、YouTubeで、ボーノが何やら神格化(?)されてしまったような、平和主義的な歌ばかり歌っているようなのを見て、ちょっと、うーん、という感じがした。その主義というか、主張のようなもの、立派だけれど、何か「格化」されてしまうと、急に残念になる。

 Band Aidの「Do They Know It’s Christmas」でも、ボーノはやっぱり際立った声だった。ぼくにとっては「We Are The World」におけるスプリングスティーンのような存在だ。
 慈善的な音楽、みんなでワイワイやる音楽も、楽しそうで大好きだけれど、1ミュージシャン、1ニンゲンみたいなところに戻った「ソロ」の時は、「格化」されることを拒むようなボーノの姿、孤独の叫びを、この身に感じたかった。
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