第十三話 毒爪
文字数 770文字
老人は「フォフォフォ」と笑いながら髭を撫でている。こめかみに青筋が浮かぶのを必死に抑えながら、光陽は笑顔を貫く。今ここでこの御仁を怒らせればもらえる情報がもらえなくなる。今は非常時だ。そう自分に言い聞かせながら、握った拳をプルプルと震わせる。そんな光陽の様子を見た峰隆は、満足気に目を細める。そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「単刀直入に言おう。カマイタチの爪に白牙の毒、ドクウツギが使われておる」
「……それで、娘は無事なのですか?」
「そやつがすぐ儂を呼んだからの。処置は完璧じゃ。だが、もう少し遅ければあぶなかったじゃろうな。あれは致死率が高い」
平然と言ってのけられたその言葉に、血の気が引いていく。予感が現実になってしまった。試験 に不正解を記入した愛弟子に対し、師匠は厳しい視線を向ける。
「……さて、お前は本当にこんな所で待機しておってよいのか?」
「言われなくても分かっています。商人、邪魔をした。娘に何かあればまた知らせてくれ。追ってまた連絡する」
「こちらこそ、ありがとうございました。私共のことはいいので、早く行ってください」
商人に一礼した後、足早に部屋を出る。そのまま宮廷に戻ろうと屋敷を出た時、ちょうど部下達は戻ってきた。その顔色は、皆一様に暗い。
「娘達が……死んだんだな」
主の問いかけに、部下は短く「御意」と返すのみ――
これは全て、自分の責任だ。初動を間違えた。そこに尽きる。もうこれ以上は失敗できない。失敗しない。
「俺は宮廷に帰る。お前達はすぐ奴らの捜索に当たれ。絶対に捕まえるぞ」
部下はすぐに散っていった。空はもう明るくなってきている。これ以上時間を無駄には出来ない。光陽も宮廷へと走った。帝に全てを報告する為に……
「単刀直入に言おう。カマイタチの爪に白牙の毒、ドクウツギが使われておる」
「……それで、娘は無事なのですか?」
「そやつがすぐ儂を呼んだからの。処置は完璧じゃ。だが、もう少し遅ければあぶなかったじゃろうな。あれは致死率が高い」
平然と言ってのけられたその言葉に、血の気が引いていく。予感が現実になってしまった。
「……さて、お前は本当にこんな所で待機しておってよいのか?」
「言われなくても分かっています。商人、邪魔をした。娘に何かあればまた知らせてくれ。追ってまた連絡する」
「こちらこそ、ありがとうございました。私共のことはいいので、早く行ってください」
商人に一礼した後、足早に部屋を出る。そのまま宮廷に戻ろうと屋敷を出た時、ちょうど部下達は戻ってきた。その顔色は、皆一様に暗い。
「娘達が……死んだんだな」
主の問いかけに、部下は短く「御意」と返すのみ――
これは全て、自分の責任だ。初動を間違えた。そこに尽きる。もうこれ以上は失敗できない。失敗しない。
「俺は宮廷に帰る。お前達はすぐ奴らの捜索に当たれ。絶対に捕まえるぞ」
部下はすぐに散っていった。空はもう明るくなってきている。これ以上時間を無駄には出来ない。光陽も宮廷へと走った。帝に全てを報告する為に……