ハナビがぶり

文字数 1,833文字

 私の手を豪快に噛んだのは、ブチ猫のミッキーだけではない。
 実はあのハナビ君も、これまた豪快に私の手を噛んだ。
 それはハナビ君が腎不全になる、ずっと前の話。


 ハナビ君はうちへ来て、他の猫と折り合いが悪い話はしたし、それで猫部屋で猫缶を囲んでの猫懇親会の話もしました。
 そして猫懇親会後に、わ~~~~わ~~~~わ~~~~と…
 だけどそのような「集い」はもう一つあったのです。ペルシャ猫のぴゃーちゃんとの猫懇親会です。

 それはハナビ君がうちへきて9ヶ月ほど過ぎた頃。
 やっぱり個室は寂しいかなとか思い、時々は人間リビングで遊ばせようと思ったのです。

 実はその頃、ペルシャ猫のぴゃーちゃんは、すでに乳がんの療養中で、それで人間リビングで暮らしていました。
 療養中のぴゃーちゃんが、他の猫とのいざこざで、神経を使わないようにと考えたからです。
 そしてぴゃーちゃんとだったら一緒にいれるかな、なんて考えたのです。

 だけど今から考えてみると、どうしてぴゃーちゃんとハナビ君などという、水と油のようなペアでの猫懇親会なんて、バカげた催しを思い付いたのか、今ではさっぱり分かりません。
 ぴゃーちゃんとハナビ君なんて、うまく行きっこありません!
 自分でも、頭がイカれていたとしか考えられません。

 ともかくそれで、例の二階の西の部屋から、ハナビ君をキャリーに入れて連れて来て、そして猫缶を二匹分に分け、二匹とも楽しく食べたはずだったのですが、食べ終えるやぴゃーちゃんがハナビ君に、それはそれは、とても偉そうな雰囲気でしゃ~っと言ったのです。

 何たってぴゃーちゃんはペルシャ猫で、とても気位が高いのです!

 ところがそのしゃ~の言い方がよほどカンにさわったのでしょう。
 ハナビ君の一つの目が見る見る険しくなり、そして、ぴ~~~っ!!!と言い始めてしまいました。

 このぴ~~~!!!は、ハナビ君としては最高に怒ったときのぴ~~~でした。
 それでこれはとてもヤバイと思ったのですが、時すでに遅しでした。
 ハナビ君は猛然と、療養中のぴゃーちゃんに突進したのです。

 それで私はとっさにハナビ君を抱きかかえました。
 抱っこして、右目を見ながらなでなでして、落ち着いてもらおうと思ったのです。

 だけどハナビ君の右目は、もう怒りで燃えあがっていました。
 そしてあろうことか、抱っこしている私の右手に、それはもう、ものすごい力で噛みついたのです。

 がぶり!

 それで私はぎゃ~~~と言ってから、思わずハナビ君を床に下ろしました。
 だけどそうすると、今度はハナビ君は、猛然とぴゃーちゃんに襲いかかったのです。

 それで、わ~~~~~わ~~~~~わ~~~~~と大騒ぎになり、ぴゃーちゃんの長毛の毛が飛び散り、このままではぴゃーちゃんは殺されると思い、部屋にあったモップを手に取り、それをハナビ君とぴゃーちゃんの間に差し込み、そしてモップ本来の使い方みたいにして、ハナビ君をぴゃーちゃんから引き離しました。
 するとぴゃーちゃんは、そのまま速攻で階段を上り、二階へ脱出しました。

 それから私は、モップで掃くようにしてハナビ君をキャリーへ追い込み、これまた速攻でキャリーのふたを閉めました。
 その間わずか10秒ほど。

 だけどそれから、私が自分の手を見たら血の気が引きました。
 噛まれた私の手から、じゃーじゃーと豪快に血が出ていたのです。
 もちろんモップの柄も部屋も血だらけで、それからぴゃーちゃんの長毛の毛も大量に散っていました。

 それから急いでタオルを取り、それをぎりぎりと手に巻き、そして二階へ行き、娘に、
「お~い、ぴゃーちゃんはケガはないか?」と訊いたら、
「ぴゃーちゃんは毛があるだけだよ」といい、それで、
「血は出てないか?」とさらに訊いたら、
「毛が生えてるだけで血は出ていないよ」といい、ともかく一安心。

 ハナビ君にあれだけ豪快に攻撃されても、長毛だと毛が飛び散るだけで、全く無事だったのです。

 だけど私の手は全く無事ではなく、翌日はぱんぱんに腫れあがり、それでミッキーの話に出てくる病院の院長先生に大手術をしてもらい、破傷風の予防注射も受けました。

                   噛むよ♪



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