大決戦

文字数 1,358文字

頭の中でけたたましく鳴るベルの音。
それがふいに遠のいたかと思うと、内蔵がせり上がるような浮遊感に見舞われた。
体が勝手に水中を浮上し始める。
今までクリアして来た水域も後戻りして、私の体はそのまま水から飛び出した。
おおおおおお……
な、何あれ……。
水中から飛び出した私は、首都の湾岸部上空に浮かんでいた。
そしてその眼下には、巨大な生物が、首都を目指して海を突き進んでいたのだ。
きっとアレこそ深きもの!
アイツの上陸を許したら、首都が壊滅するぞ!
なんとしてもボクたちで止めるんだ!
と、止めるって言っても、あんな巨大なものをどうすれば……。
今この現実世界の位相は、キミの夢と融合している。
いや、アイツの夢とも言えるかもしれない。
ならば夢は夢で対抗するんだ。
キミの強い想いを武器に変えて、アイツを食い止めるぞ!
想いを武器に……。
それは今までダイブで経験して来たのと同じよね。
アイツを止める……。止めるわ。
首都に住む人たちを守るんだ!
うん?
も……ももも……ももももも
うぉぉ、ボクが、ボクが巨大化してゆく~!
行くわよ、ホールデン!
私たち二人の力で首都を、日本を、世界を守ってやるんだから!
そう意気込む私は、巨大化して深きものの前に立ちふさがったホールデンの、頭の上で腕を組んで仁王立ちをする。
さぁ、最終決戦よ!
もうこうなったらやるしかないか。
どんと来いやー!!

おろろろろろ~ん
ホールデ~ン!
パーンチ!!
フンガー!!
ホールデンのこぶしが深きものにヒットする。
よろめく深きもの。
私はたたみかけるように、ホールデンに攻撃をうながした。
ホールデンキーック!!
ぐぉるるるるる……
よしっ、イケてる!
押しているわよ!
と、確信したその時。
深きものの目が光ったかと思うと、閃光がホールデンの胸を貫いた。
がはぁっ!
ホールデン!?
しゃぁぁぁぁぁ!
くっ……、大丈夫。
まだイケるぞ!

だったらこっちも遠距離攻撃よ!
ホールデンビィィィムゥゥゥ!!
シュビビビビッ!!
ぐぉろろろろろ……
十字に構えたホールデンの腕からほとばしった光線は、深きものに直撃し、その巨体を海へと沈めた。
やった!
これで世界は救われ……。
うろろろろろ……
そんな……!
深きものは何事もなかったかのように起き上がると、また首都目指して動き始めた。
駄目なの……?
私たちじゃ止められないの?
あきらめるんじゃない!
キミの強さは想いの強さ!
弱気になったら勝てるものも勝てないぞ!

そうだね……。
弱気になったら駄目だよね。
……ありがとうホールデン。
いつもいつも的確なアドバイスと勇気をくれて。
私はホールデンが居てくれたからここまで来られた。
だから、私はホールデンの住む街を守りたい。
あなたを守りたい。
……?
きっと、ホールデンの中の人も素敵なんでしょうね。
格好良かったら、デートでもしたかったなぁ。
いったい何を言って……。
私はホールデンの頭から飛び立つと、深きものの近くまで飛んで行く。
そしてそのままのっぺりした頭に抱きついた。
まさか……。
止めろ……、止めるんだぁぁぁ!

私の体が深きものと一体化してゆくのを感じた。
この子を倒すのは無理だ。
なら、もう一度眠りに落ちて貰うしかない。
そう、私の夢ごと。
私と一緒に眠りにつこうね……。
止めろ……。
止めるんだ、七海ぃぃぃ!!

To be continued
次回が最終回です。
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登場人物紹介

深層意識の水底を目指して潜り続ける主人公
未殺人囚No.808

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