第1話

文字数 2,678文字

ある日、電車の中でオナラの臭いがする。満員のなか、揺れ馴染んだ鉄の箱の中でふとだれかの声がした。
「誰がこいたんだ。お前か!」
私に指差していったその男から腐臭がする。
「こいつ酔ってるな---。」
だがそれ以上にくさいにおいが酒臭いその男の鼻を思わず塞がせた。
「なんつう臭いだ。だれか漏らしたんじゃないか?」
つぎの駅で車両から人が臭いからか、やたら少なくなった。どうやら、わたしと酔ったおっさんと少年と犬だけになったようだ。そのオナラの人が降りたかもしれないのに、犬を疑ったおっさんは、犬に近寄り、少年を怒鳴る。
「コラ、犬はケージに入れろ!」
少年は凛々しく答えた。
「盲導犬です。そしてこの臭いはジョンのものではありません。」そう言って少年はすぐ降りた。
しばらくして-------
わたしは電車のドアがしまっているのに出発しないことに首をかしげる。
「出発しないよね。駅員は何をしているんだ。」
すぐに駅員に確かめにいって。隣の車両を開けるとそこも臭く、二両編成で駅員のもとにすぐたどり着いた。そこでさっきの少年と揉めている。すると駅員が慌てて電車を出発させようと躍起になっていた。駅員:「サリンだ!」そう言って外を指差す。そこには地下鉄のホームに人々が倒れこみ、あたふたしている。
「これがサリンなら全員死んでます。落ち着いて。他の駅員を呼んで。」
駅員:「他の駅員はサリンであると先に認識していたようで連絡がつかないんです。」
少年が慌てて駅員に出発するよう頼み込んだ。「サリンで死ぬなんてやだ。出発させて!」そのとき、外に出たときに付いたのだろうか?少年から血の匂いがした。

「あなたは私が守ります大丈夫よ。」
「なんで?」
「あなたが未来ある子供だから。」
少年:「---!」
その時、酔ったおっさんがドアを無理矢理開けようとしている。
「何してるんですか?」
「アイツ血を流している!助けなきゃ!」
そこには滅多刺しのメガネをかけた人が死んでいた。
そして扉が開くとわたしたちもねむりにおちた。

だがしばらくしてわたしはジョンに顔を舐められ起きた。
「やあねえさん。」
少年は無気力にこっちをみている。その後ろに血のついたナイフを持った同じ顔の少年が厚着をして眠っている。
「?双子だったの。というか、わたしを殺す気なの?」
「察しがいいね、でも不正解。
俺らのターゲットはさっきのメガネの人とその周辺のサリンの記憶さ-----あんたじゃない。依頼者はサリンの事件を彷彿させたいんだと。」
「さっきのゲップの話は覚えてる?」
そう少年に問いかけると---
「ああ覚えてるぜ。だれがゲップしたんだろうな?ところであんたを助けるなら一つ条件がある。」
「どうせあなたを殺してくれないかとでも言うんでしょ?」
「なぜそうなる?」
「アレ違った?だってあなたさっきの少年じゃないでしょ?」
「!」顔を曇らせる。
「図星ね。わたしたちはオナラで揉めていたの。ゲップじゃないよ。」
「なぜ俺が死ななきゃいけないんだ?」
その子はわたしにそう聞くと、わたしはまくし立てた。
「本当にメガネだけを殺すつもりなら、こんな大掛かりな手口を使うはずがない。おそらくさっきのガスは笑気ガス。そんなものを使うだけじゃなく、あなたはオナラを撒いた。おそらく便失禁!」
「いや便失禁はしていないぞ。」
「-----------そこもガスを使ったのでしょう。とりあえず、あなたはくさい!」
「-----------。」
「冗談はさておき、二両編成の車両をガスで一気に人を降ろし、あなたたちはメガネをその人混みに乗じて殺した。そしてそれはそこに寝ている少年の犯行だった。そうしてそこから電車に乗ってアリバイを作るはずだった。そして双子とバレないよう、おそらく手を汚していないあなたが取り調べを受けることも考え、電車から降りた。」
「なぜわかった?」
「あなたと2回目に会った時、血の匂いがした。あなたは付着した匂いが服についたまま、本当はその時初めてわたしと会った。そしてドアが開き、あなたは笑気ガスで眠った---。入れ替わらなければ血がつく筈はない。服装はどうにでもできる。」
「それならそこで眠っているのは俺の筈だ。電車は出発せずに笑気ガスを吸い込んだんだから。」
「いーや、わたしが起きているということは、この子は寝たふりをしている----かもしれない---でしょ?笑気ガスはハンカチをすれば多少は防げる。そうして先に起きて、わたしをだしに使おうとしている。そこであなたは考えた。眠ったふりのこの子を殺させ、警察の目をわたしに向けさせようという腹づもりで、今その条件を提示しようとしている。
でしょ?その眠っている子の厚着のなかに何が入っているの?血糊?わたしに殺すフリをさせどうする気だったの?」
「はははははははは」
少年が笑う。
「----あんたバカだな、大人しく犯人のふりしてくれりゃよかったのに、わざわざナイフに指紋まで付着させて準備してたのに、ベラベラベラベラ--あんたも殺してやろうか?」
「---------------。」
しばらく沈黙が続いたその中、そこに眠るふりの少年が凛々しく話しかけてくる。
「本当はパンツうんちまみれなんだ。」

「やっぱり便失禁だったんだ。電車の中でウンチだしたんだ!」
「-----------それはさておき
-ぼくらはもうひとつ君を犯人する手段が残っている。あなたの指紋のついたこのメガネを殺した凶器を残し、さっきの酔ったおっさんたちを殺して俺らが逃げ切ればいい。もちろんお前も殺してな。これは俺らの優しさなんだぜ。」
そんなことできるはずがない!
その時酔ったおっさんが暴れて騒ぎ出している。
「やべ!そのおっさん殺せ!」
「殺されるか!うんこたれ!」
おっさんは本気で殴った。
「!ガキお前らだったのかオナラ騒動!うわっうんこ臭!---------それと警察は電車のなかですでに呼んである!ここで逃げても後がない。大人をからかうな。馬鹿野朗!」
「助かった〜。」
わたしはおっさんが案外大人であることに気付かなかったのであった。二人は殺し屋だと言うことは知らなくても解決したのだった。
「ところでなんでわたしたちをすぐに処分しなかったの?そんなに簡単に人を殺せるなら他にも方法があったでしょ?」
わたしがそう少年に聞くと
「助けてくれるって初めて言われたから。」と皮肉な笑顔で答えた。









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