GOD Bless You!

文字数 3,494文字

-201X年、クリスマス。
俺、山田太郎は、クラス一の美少女・河合桃子ちゃんに、呼び出された。
俺は、高校二年生の、身長・体重・成績すべてフツーの冴えない男。
趣味は天体観察・・・というのは嘘で、天文学部にいる、桃子ちゃんとお近づきになるためだけに、天体望遠鏡を親にねだった黒歴史をもつ。
しかし、その黒歴史も今日で終わりを告げる。

もっ、ももこちゃんに、よびだされた・・・・・!
それも、『校舎の裏の』木の下に・・・・!

・・・・あの、いっておくけど、かわいいやつだからね?
・・・ラブレターで、
『今日、天文学部の大掃除のあと、校舎の裏に、きてください。』
って、書いてあったから!
ちゃんと、筆跡鑑定しておいたから!
「ちょっと、お前、校舎の裏こいや」っていう、怖いやつじゃないから!
ああ、ほんと、今日、冬休み初日の部活、
『クリスマスはくるしみます★年度最期の大掃除★』に来てよかったー!
先輩たちをはじめ、恋人がいるカップルは欠席を許可される、
まさに、『しんぐる・ベル』大掃除★デー
いままで、こんな部の規定をつくった歴代の先輩方をはじめ、
ニヤニヤと大掃除を押し付けていった部長カップルの皆さん、
呪っていてごめんなさい・・・!
そして、はじめまして★カップルズのみなさん!!!!!
これからは、俺も、いえ、俺たちも、仲間にいれてくださいね!!
   
-そわそわしながら、校舎の木の下にむかった。
あのね、この木ね、有名なやつなのね?
この木の下で告白して結ばれたカップルは、永遠に幸せになれる、的な!
    あれ?
    この木だっけ?
    もしかしたら、あっちの木?
    まぁいいや!
真実の愛は、どんな試練も乗り越えることができるものだからさ・・!

あ!桃子ちゃんは、もう、先にきていた!
さっ、さっと、みだれてもいない、髪の毛を整えた。
あ、あらためて近づくと、緊張するな・・・

俺の足音に、ハッ、と桃子ちゃんが顔をあげた。
そして、うれしそうに、俺にほほえみかけた。

かーわーいーい!!!!!!
髪の毛がサラサラとしていて、陽の光をあびて、キラキラとかがやいて、
まるで、天使のようだ・・・!
「よかった、来てくれて。」
声もね!鈴を鳴らすよう、っていうの?
かーわーいーい!
   
「ごめん、またせちゃった?」
「ううん、いま来たところ。」
ヤダ、皆さん、どうする?もうすでに恋人同士みたいな会話ですよ?!

・・・桃子ちゃんが、あのね、と切り出す。
    
「す、好きなの・・・・・・よかったら、私と、つきあってください・・・・・」

きたーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
    
かっ、神様仏様ももこさまー!!!!!
お、おれ、本当に、いきててよかった・・・!
思えば、昔から不運な男でした。いままで、ろくなことがなかったけど、
その全ての不運の帳尻は、ここで清算された・・・!
    
あまりの感動に、涙ぐみながら、顔をあげた。
お、おれも、ずっと、好きでした!
よろこんでおつきあいさせていただきます・・・!
と、いおうとして、
あれ?
桃子ちゃん?


おーい。
も、ももこちゃん?

今まで、桃子ちゃんが、いたであろうところには、
“何もなかった” 
正確には、桃子ちゃんがいままで着ていた、服、だけが残されていた。
   
ほぇええええええええ?
も、ももこちゃん?
ももこちゃんって、変態さん???

動転して、桃子ちゃんの服をかきあつめて、
スーハ―。
に、匂いをかいだりしていないぞ!!
ち、ちょっと、動転してたから、深呼吸してみただけで!

まわりを見渡してみたけど、心配はいらなかった。
だれひとりー
桃子ちゃんは、影もかたちも、みあたらなかったのだから・・
 2.    
呆然として、教室にもどると、
親友の  大友 ゆうや がまちかまえてた。
・・・ニヤニヤしながら。
「よー、モテ男の、太郎くぅーん。
 桃子ちゃんとの、逢瀬はどうだったんやー?」
こいつは、いつもエセな関西弁をつかう。
「・・・・・・・」
だまっていると、怪訝な顔をしてこちらをうかがった。
「どした?まさか、よびだし、あっちのよびだしだった?」
 そういって、シュッ、シュ、とシャドーボクシングの真似をする。
「・・・・いや、桃子ちゃん、どこかにいっちゃった・・」
「は?」
「目の前で消えたというか・・・?」
「は?」
ドロン?桃子ちゃん、忍者?と、アホなことをいう。

とにかく、ショックで、もう家に帰ろう、としたとき、
「お、おい、やべーよ!!!!!
 お前ら、ワンセグつけてみろよ!!!!」
隣のクラスの生徒が、走りこんできた。
んん?

「とにかく、やべーんだよ!
 補習さぼってテレビ見てたら、世界中の人が消えたって・・・」
あわてて、ワンセグをのぞきこむと、
大パニックの、ニュースがうつっていた・・・・
 
『信じられませんが、これは合成ではありません!!!』
 クリスマスの聖歌隊が、一瞬で全員が消えたところ。
 家族のビデオ撮影で、急に家族の姿が消えたところ。
 有名な大統領が、クリスマスの演説中に消えたところ。
 海外のライブ会場で、一瞬のうちに、会場の3分の1の人数がいなくなって、
 すごいパンクロッカーが、観客を残して消えて、、、、、
ニュースは、そこで、専門家?をうつしだしたが、専門家も、困り果てた顔をしていた。
『とにかくー、これは、前代未聞のことでー、
 宇宙人の襲来の前触れとも、大規模な人類の滅亡の始まりとも―』
      
・・・・なんか、やばいことがおこったことだけは、 理解できたけど。
      
  
そ、それで、おれの桃子ちゃんは、
一体、どこにいったんだよぉおおおおおお!!!!!


3.   
 次の日も、『いなくなった人々』がもどってくることはなかった。
テレビでは、ずーっとこのニュースをやっていたけど、
人々が消えるシーンと、怪しい専門家ばかりがでてきて、
不安ばかりがつのる。
 
次に消えるのは自分の番じゃないだろうか・・・
そんな、不安をみんながかかえてて、
せっかくの冬休み、年末だというのに雰囲気が暗い。
 
勿論、家のかぞくも・・・・・

「おにいちゃん、すごいの!ゆきのクラスメイト、10人がいなくなってたの!」
いや、例外もいた。
「・・・お前、なんでそんなに明るいんだよ・・・クラスメイトが、行方不明なんだぞ!」
「えー、だって、みんな、同じ時間に、いきなり、
 消えちゃうとか、ありえないというか、びっくりというか・・・」
そのうちもどってくるんじゃない?と、
小学6年生の妹・ゆきは楽観的だ。

「じゃあ、お母さんはでかけるけど、・・・・あんたたち、勝手にどこにもいかないでよ?」
母は、かなり憔悴していた。
というのも、母の職業は保育士で、0さい~1さいを受け持っている。
その、クラスの赤ちゃんも全員・・いなくなった、らしい。
昨日仕事が休みだった母のところにもじゃんじゃん電話がかかってきていた。
家族、全員がいなくなった家もあって、他の保護者が、『誘拐犯だ!』とさけんでいて・・・
と、とんでもないことになっているらしい。

父も、朝早くから会社にすっとんでいった。
父は、海外との取引も多い会社づとめで、
取引先が全滅?したところもあるらしい・・・!

俺も、なにもしてなかったわけじゃない。

昨日、は3回も桃子ちゃんの家に確認しにいった。
(なんで、桃子ちゃんの家をしっているのか、などという質問は、
 かような緊急事態の折には深く掘り下げている場合ではない)

たとえば、桃子ちゃんの母上、おかあさんに会ったら、なんていったら、いいのか?
「こんにちは!桃子ちゃん、ぼくに告ったあと、いなくなったんですけど、
 お家にかえってきてますか?・・・・・・すっぱで。」

・・・・いや、それはダメだろ。
じゃあ、
「こんにちは!桃子ちゃん、学校に忘れ物ですよ!・・・・・・・・服一式。」
・・・これもアウトだ。

えーと・・・・・・・

なんて、かんがえても意味はなかった。
だって、

ももこちゃんの家の電気は、一度も、つかなかった。
だれも、かえってこなかったのか、
だれも、もどってこなかったのか。

桃子ちゃんの家の玄関には、素敵な、木でできた、プレートがかけてあった。
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