第9話 友達第二号一緒に探そうよ

文字数 2,319文字

図書室についた俺は扉を開ける。誰も居ない…


(あれ?冬月さん今日委員会だって言ってなかったっけ?)

中に入り歩くと、本棚と本棚の間で返却された本を片付ける冬月さんがいた、
冬月さん、一人で仕事してるの?
突然話しかけたからか、冬月さんは少しビクって驚いた…
なんだ。龍一か。知らねーやつだったらめんどいなとか思ったけど、よかった。


一人だよ。

先週も一人でダンボール往復してたよね?
そうだね…てか、何で知ってんの?


ストーカー?(笑)

違うよ。先週は美化委員でゴミを拾っている時に冬月さんだけがダンボール運ぶの往復してるから、おかしいなと思ったんだけど、今週も今、こうして一人なんておかしいだろ。


他の図書委員は?

わかんねー。みんな来ない…


でも、いいんじゃね?私一人でも時間かかっけど終わんだから。


龍一は今日はもう帰れんだろ?


Uチューブ寝っ転がってみるのが日課なんだろ?


早く帰んねーと、見る時間なくなっけど。

俺はヘタレだし、誰かが困ってても助けるとか出来なくて、ただ見てるだけの傍観者タイプだけど、なんか、仕事を一人で淡々とこなす冬月さんを見ていると、他の奴らに怒りがこみ上げてきた…
Uチューブなんかいいよ。冬月さん帰りが遅くなったら、周り暗くなって危ないだろ。


手伝うよ。

お姫様じゃねーんだから、帰りは一人でも帰れるだろ。


龍一は美化委員だろ。いいよ。一人でやるから。

大変そうだったら、助けるのが友達だよね?


こんなたくさんの返却一人で整理整頓してたら、外は暗くなるよ。


冬月さん、夕飯自炊してる?それともコンビニとかスーパーとかで弁当かなんか買って食べてるの?


自炊でもそうじゃなくても、お風呂入る時間とか洗濯の時間とか、明日だって学校だよね。


そんなんじゃ身体持たないよ。

じゃあ、龍一の好きにしろよ。


私が頼んだわけじゃねーからな。

じゃあ、好きにさせてもらうよ。


別に冬月さんに頼まれたわけじゃないよ。


図書委員じゃない部外者の俺が勝手に手伝ってるだけ。

俺は勝手に本を返却する作業を手伝い出した。
二人でやると作業は比較的早く終わった。
少し薄暗くなってきたけど、真っ暗なる前には終われたし、帰ろう。
ありがとう龍一、
いや、全然いいよ。転校してきて友達いないんだろ?


俺友達第一号だから、これからも美化委員なければ手伝うからさ。

無理はすんなよ。
大丈夫。これでも昔は柔道に空手も習ってたんだから、体だけは強いんだよ(笑)
帰り道二人で歩いていると、冬月さんが東京でのことを話し始めた。
私が誰にも頼らねーのは、友達がこっちにいないからだけじゃねーんだ。
何かあるの?
転校してくる前の話だけど、向こうの高校入ったばっかの頃、私に話しかけてくるやつは多かった。


友達だと思ってた奴に、私の使ってた化粧品とか、くしとか、私物みたいなのちょうだいって言われたからあげた。


そしたら、白石 千春の使用品ってベルカリで出品されてた…

(なるほど…だからか…)
冬月さんは続けた。
だから、朝もごめん。私が使用したグラスベルカリで出品されたらとか思って、最初飲まなかった…


龍一はそんなことしないやつなのに疑って悪かった…

謝ることないよ。そんなことがあったら、信じれないよね。


冬月さんは人間不信になってしまっていたんだね。


大丈夫。こっちでの友達第一号はそんなことしないよ。


多分、愛とか明とかもそういうことする人じゃないから。


まぁ愛と冬月さんはちょっとキャラが違うから、わかり合えるかはわかんないけどさ(笑)


でも、友達第二号もほしいでしょ?俺は男だから、冬月さんの力になれないこともあると思うんだ。


だから、友達第二号は同性がいいと思うんだけど?

まぁ…龍一だから、言うからな…私は同性からめちゃくちゃ嫌われていたみたい…


記憶無くしてからだけどさ、スマホみたら、マネージャーと、両親と数名しか登録されてなかったから。


だから多分、昔から同性に好かれないんじゃないかな?


今も私クラスで浮いてるだろ?

俺はそうは思わないよ。きっと冬月さんの良いところを見てくれる人が東京の学校にはいなかったんだね。


今日だって冬月さんは投げ出さないで、一人だけ委員会の仕事を頑張ってた。


中には冬月さんのことを悪く言う人もいるかもしれないけど、良く思ってくれる人に出会えるといいね。


浮くというか、正直言うと言い方がきつく感じる時はあるよ?


俺に言うみたいに素直にありがとうって言えたら、きっと周りの人の味方も変わるよ。


友達第二号俺も一緒に探すから。頑張ろう。

わかったよ。んじゃ言い方どうすりゃいいんだよ?
明日の朝、また愛と会うよね?お前とか、じゃねーのとか、だよとかをやめてみてもいいんじゃないかな?


例えば、だよね、うん、なになにさんとかちゃんとかで呼んでみるとか?


朝に愛を相手に練習してみるといいよ。

うん♪♪



こんな感じか?

さ、さすが元スーパーアイドルだね…


そんな感じ。あんまり無理してブリブリする必要はないと思うけど(笑)

その後も色々話しながら帰ると冬月さんは自分のアパートの前で部屋に入る前に俺に言った。
あがってく?親が帰ってきてないんじゃない?龍一の家明かりついてないよ。


夕飯私作るよ?

(え?言い方気をつけて言ってるのか、口調がきつくないな…いや…確かに家の親両方とも最近朝早くて帰りも遅いんだよな…)
流石に高校生の一人暮らしの女子の家に上がり込むのは、いかがなものなのだろうと悩む…
今日、図書委員手伝ってくれたから、お礼だから。


夕飯一緒に食べよう?


カップラーメンとかばっかり食べてたら身体によくないよ?

はい…では、お言葉に甘えて…お邪魔します。
言葉遣いを気をつけて話すと、冬月さんは、とても女性らしい…


愛以外の女性の部屋に俺は初めて入った…

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登場人物紹介

上田 龍一(うえだ りゅういち)

城西高等学校2年生

成績、スポーツ、容姿全てが平均的男子。同級生で同じ高校で同じクラスの坂木 愛(さかき あい)に恋をしている。

冬月 千春(ふゆつき ちはる)龍一のクラスへの転校生。

両親離婚前は白石 千春(しらいし ちはる)

元アイドル。そして記憶を失くしている。

坂木 愛(さかき あい)城西高等学校2年生。龍一と同じクラス。


目立つタイプではなく、あんまり人の輪に入ることが得意ではないが、容姿が良いため男子から密かに人気がある。

酒井 真美(さかい まみ)。龍一のクラスメイトで、愛の親友。

佐藤 明(さとう あきら)。龍一のクラスメイトで親友。

神谷 俊(かみや しゅん)。龍一と同じクラスで学年一のモテ男。性格もイケメン。

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