第2話 リマ(2)

文字数 1,325文字

 二人が付き合ったことは特に二人が言いふらしたわけではないがすぐに学校中に広まった。智晴においてはいつ付き合ったのか、キスはしたかなどいろいろと詰問してきた。いちいち答えるのは面倒だったが根も葉もない噂をされる方が不愉快なのですべての質問に正直に答えた。その中には二人で大阪へデートをしに行くこともあった。
 学校では優人と麗華はできるだけ話さないようにしていた。茶化されるのが目に見えていたからだ。とはいえ同じ部活の部長と副部長なので全く会話しないというわけにもいかなかった。二人の接触をできるだけ避けていたこともあり二人が付き合ったというニュースはすぐに教室の中から消え去った。
 優人は家に帰ると毎日、麗華に電話をした。今度のデートのこと、好きな事の話、学校のこと、話題は尽きることがなかった。優人は麗華のことを知るたびに嬉しくなり充実感に満たされていた。
 デートのことで問題になったのは互いの親になんと話すかだった。さすがに男女二人で大阪まで行くというのを許さないだろうということになった。そこで智晴と夏帆に協力してもらうことにした。二人は快く承諾した。優人は智晴と、麗華は夏帆と共に遊びに行くことにした。また智晴と夏帆が家にいられると何かの拍子にばれてしまいそうだったので実際に智晴と夏帆で遊びに行ってもらうことになった。
 旅行の二日前、優人が自分の部屋で明日の学校の用意をしていると母から電話が来た。
「あのね、おじいちゃんが車いすからこけちゃって足を骨折しちゃったのよ」
「おじいちゃん大丈夫なの?病院行ける?」
「おばあちゃんが救急車呼んでくれたみたいで今病院なの」
「よかった、何日か入院?」
「いやそれがね、今は骨折ぐらいじゃ入院はさせれないってお医者さんから言われちゃって。だから今車いすごと乗れる専用のタクシーでおばあちゃんちまで向かってるんだけど、このままお母さん、少し実家でおじいちゃんのお世話しようと思うんだけどいい?少し家開けちゃうんだけど」
「いいよ、そんなの。俺に手伝えることあったらまた言って。大体どれくらいまでいるつもり?」
「はっきりとは言えないけど、月曜日にもう一回病院連れてくみたいだからそれまではいようと思ってる。ほんとごめんね」
「わかった。申し訳ないんだけど俺は、前言ってた智晴との旅行いい?」
「もちろんよ、楽しんできてね」
優人は電話を切ると一階のリビングへ向かいテレビの前のソファに腰かけた。
「自由だ―」
 優人は大きな声で叫んだ。忠博は昨日から東京へ出張に行っており日曜日の夜まで帰ってこないのだ。優人は解放感に満ち溢れ何をやっても自分の思い通りになるような気がした。
 優人は次の日の夜、出前でピザを注文しリビングでそれを平らげたあと、スマホのカラオケアプリで熱唱した。
 目が覚めると優人はリビングのソファの上で寝ていた。テレビには映画のエンドロールが静止された状態で写っていた。どうやら優人は昨日映画を見ながら寝落ちしてしまったらしい。時計を見ると家を出発する三〇分前だった。無論、今日は麗華とのデートの日である。
 優人は急いで準備をすますと、ピザの容器やその時使ったジュースなどを片付けることなく家を飛び出した。
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