『エピローグ』

文字数 997文字

『エピローグ』/ 円城塔

物語は西暦2014年のある日に終わる。

これはそのエピローグ。


ヒトがヒトであることをヒト(他人)に対して証明するための手続き=チューリングテストを、ヒトでない何か(例えばコンピュータ)がクリアしてしまう時、ヒトはヒトであることが不可能になる。(証明できなくなる)

そんな、チューリングテストを突破する「何か」すなわちオーバー・チューリング・クリーチャー=OTCが、宇宙・概念・法則、そして物語をヒトには理解できない形に随時書き換えてしまい、人類は生まれ故郷と既知の概念宇宙からの撤退を余儀なくされる。物理空間宇宙からも情報空間宇宙からも撤退につぐ撤退、退転につぐ退転をくりかえし、命からがら、宇宙そのものから逃げ延びていく人類。

そんな幾多の負け戦さの中で、なんとかOTCの残骸を手にした人類は、OTCに一矢を報いるため、人類の理解を超越したそのかけらをかき集め、動作原理も理解できないまま、とにかく有効な対OTC兵器をつくりだし、そしてついに宇宙奪還艦隊を建造するに至る。

全ての概念や法則が刹那刹那に書き換わり、文字や情報の意味すら目まぐるしく変転し、パラレルにシリアルにマクロにメタに時間と空間がねじ曲がり、宇宙がつながり、食い違い、変更される、そんな、やすやすと人知を超えた世界でヒトは物語を進行させることができるのか?


この、なんとまあ正直言ってめちゃくちゃな設定をがっつり描いてしまっているモノスゴイ小説(?)です。

真剣に理解しようとすると脳みそが沸騰しそう。でもこれがまた快感なのですw


物語や宇宙や人間の意味論すらもぐちゃぐちゃになっていく世界、そこで描かれる、ある(あった? あるはず?)連続(非連続)殺人(非殺人)事件と、宇宙奪還艦隊戦と、超越戦闘ロボと女子高生と、概念的なラブストーリー体質(?)な主人公のドラマが幾重にも絡み合い、まるで万華鏡のよう。

円城塔の真髄ここにあり。めくるめく知的トリップ体験をしたい方にはすーぱー絶対超おすすめ、他にはない稀有な本です。(ですが、そうでない方はちょっとというかかなりつらいかもしれません><)

(おまけのひとこと)

あ、言い忘れてましたが、このお話、ラブストーリーなんですよ。ほんとにw

冒頭から最後まで、ちゃんとラブストーリーになっているのです。萌えます。いや、ほんとにw

Original Post:2017/02/19


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登場人物紹介

神楽坂らせん

読書の合間に本を読み、たまにご飯してお茶して、気が付けば寝ている人です。一度おやすみしてしまうと、たいていお昼ぐらいまで起きてきません。

愛読書は『バーナード嬢曰く。』

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