アオイが廊下に出ようとドアノブに手をかけた時、ドアの外から「警察です。開けてください」という男性の声が聞こえた。
アオイがドアのピープホールをのぞと、制服警官が立っている。アオイは振り向き、慧子の顔を見た。
慧子はアオイに身振りで待てと伝え、声を潜めて和倉に話しかける。
バスルームに身を隠してください。ここは、私たちが何とかします。
コータローがやってきて、和倉をバスルームに連れて行く。
世津奈は上着の下のヒップホルスターに手を回し、拳銃の感触を確かめた。
(心の中で)これが必要になるかも。装填してあるのは非殺傷性のプラスチック弾だから、あまり心配せずに使える。
アオイがドアを開けると、男性の制服警官が4人、なだれ込んできた。
徒歩でパトロール中に、気球がこの部屋を機銃掃射するのを見ました。ケガ人はいませんか?
警官の一人がバスルームに向かう。世津奈がヒップホルスタ―から銃を抜いて上着の下に隠し、警官の後ろから声をかける。
お持ちの拳銃はグロック17ですよね。警視庁は、いつから制服警官にグロック17の支給を始めたのですか?
世津奈と向き合っている警官がホルスターに手を伸ばした。
世津奈が警官の急所にプラスチック弾を浴びせた。警官は股間を抱えて転がる。
残りの3人の警官が一斉に銃を抜く。
慧子が世津奈を撃とうとした警官の頭部にプラスチック弾を2発浴びせた。
アオイの身体から青白い電光が奔り、2人の警官をなぎ倒した。
それは、ちょうど、コータローが銃を手にバスルームから飛び出してきたところだった。
宝生さん、今の見ました? 稲妻ですよ。今度こそ、あのアオイって子から稲妻が奔って警官を倒すところをこの目で見ました。
えっ、だって銃声がしたから、ボク、宝生さんのことが心配で。
コー君、私のことを心配してくれて、ありがとう。嬉しいわ。
でも、それは、プロの仕事の仕方ではない。あなたの仕事は、バスルームで和倉さんを守る最後の砦になることだった。今度同じ状況になったら、プロの仕事をすると約束してちょうだい。
わかってくれたら、いいの。
じゃ、こいつらをチャッ、チャッと、縛っちゃいましょう。
世津奈が上着のポケットから電気工事で使う結束バンドを取り出して、コータローに投げた。
二人は、警官たちを後ろ手で縛り上げ始める。
この世津奈って人、凄い勢いで、あった事をなかった事にしちゃったんだけど……
警官たちを縛り終えた世津奈が慧子に話しかけてきた。
お二人のおかげで命拾いしました。ありがとうございます。私たちは、これから意識のあるニセ警官を取り調べます。お二人は、どうされますか?
私たちも、彼らの正体を、クライエントに伝える必要があります。
ここに長居は無用です。地下の駐車場に私たちのクルマを停めてあります。それに乗って、一緒に取り調べの出来る場所に移動しましょう。