バッパイ

文字数 403文字


 (ひぐま)たちに盃を持たされ、酒を注がれる。時間内に詩を作れなかったので、罰杯として呑まされるのである。これまでに何杯を呑み干したことだろう。これが旨い酒ならよいが、ひたすら苦いだけのもの。意を決して盃をあおると、顔がゆがんでしかめっ面になり、舌が口の外に長く出てはがれかけのお(ふだ)のようにびらびらと揺れる。どうしてこの汁を酒と呼ぶのか。周囲ではすでに羆たちが、次の題で詩を作ることに取りかかっている。だがわたしはやはりとまどうばかり。彼らの言う詩がわからない。酒と同様、人間の呼ぶ詩とは別のものらしいのだ。その場で学ぼうにも、わたしには羆たちが寄り集まって吠えたり体臭を嗅ぎあったり、軽く噛んだりしているようにしか思えない。詩を披露する順番が迫るが、もちろん何もできていない。またわたしが罰杯を引き受けるのだ。体が苦い汁で満たされ動けなくなり、次の詩会に別の人間が招かれる際にはわたしが酒になっていることだろう。


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