神に成り代わる者

文字数 828文字



 「我は風の神。全ての力を運ぶことができる。そなたが止めよ、我の血を受け継いだ者よ。」

 神々の中心オルセイディウスは、そう彼に言い聞かせた。遠い昔に。野望と狂気が渦巻く時代に。武器と精霊を操り戦う下界の者たちが、未曾有(みぞう)の大災害を引き起こした、あの最中(さなか)

 そもそも全能な神々は予見していた。

 そこで神々は、希望の光を(とう)の魂へ。
 また、一人にしか託せない力は、全ての精霊を運ぶことができる風の神、風神オルセイディウスの血を受け継ぐ者に。

 全ては、神のみぞ知る終焉(しゅうえん)を回避するため、

られた。

 そうして猛威をふるう精霊たちを神のごとく導いた彼と、それまで彼を支えてきた彼らのことは、神が創造し、名付けたこの大陸と同じ名で語り継がれた。

 それから世界は大きく変わった。

 術使いの系統、そして、ある呪術が一つ消された。それは邪術として、大陸中で禁じられた。そうして人々を最も震え上がらせた生き物たちはいなくなった。人間が、

過ちを繰り返さぬように。

 しかし、この新たな時代に、少年は言った。

 再び大陸の終焉が近づいていると・・・。

 その大陸とは、神と人間が共存していた大陸アルタクティス。彼らが今歩いている、この大地のことだ。

 少年が、その仲間たちを次々と旅の道連れにしていったのには、もちろん理由がある。

 彼らはみな〝アルタクティス〟の生まれ変わりだということ。  

 アルタクティス・・・つまりそれは、大陸を危急存亡の(とき)から救い出した英雄たちを称した言葉でもある。

 ところが・・・。

 少年から、「あなたはこの時代の救世主です。再び大陸を救うべく、その日に備えて僕と共に旅をしてください。」と唐突に告げられた誰もが、正直それを真に受けていない。

 ただ・・・この精霊使いの少年と関わってからというもの、彼らは度々、摩訶不思議で奇奇怪怪な出来事に遭遇するようになった。

 そして、また・・・。

 これは、そんな自覚無き英雄たちが成り行きのままに導かれゆく〝運命〟の物語。





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